"財産は長男へ――8年間介護した次男に残されたのは、古びた倉庫一軒だけだった" 第6話
「が100億円もあったって本当なの? 倉庫をもらっただけなのに、まで独り占めする気?」
叔母の写真だけでは分からない額まで、すでに漏れていた。だが、浩司は保管所も確認方法もにしなかった。
「遺言には、倉庫内の産切といてある」
「あとからきしたんじゃないでしょうね」
そこへ野が到着し、公正証の原本は公証役に保管されているため、きしなど能だと説した。裕は弁護士まで弟と組んでいたのかと鳴り、古い鍵を錠へ差し込もうとしたが、警備員にをふさがれた。
「俺の親父の倉庫だ!」
「現の所者は武田浩司様です。警察へも連絡済みです」
ほどなくパトカーが到着した。警察官は遺言の写しと登記事項証を確認し、所者が拒否する建物へ無理に入れば、族の民事問題では済まなくなると裕へ警告した。事をらされていなかった鍵業者は顔を変え、警察官へ名刺を渡して帰っていった。
「族の話に警察を呼ぶのか」
「呼んだのは警備会社だ。それに俺は昨夜、来ても鍵は渡さないと言った」
浩司は裕のに残った古い鍵を見た。それは現の所者へ返されるべき、倉庫の鍵だった。
「今度は俺が言う。鍵をせ」
裕の顔から、わずかに血の気が引いた。弟へ命令するために持ってきた鍵を、今度は自分が返せと言われている。
広告
面へ投げようとしたものの、防犯カメラに気づいてを止め、結局は野が差しした証拠品袋へ入れた。
美咲はい子をくかぶり、周囲の線から顔を隠した。
「100億円を1で取れるとわないことね。遺言ごと無効にしてやるわ」
「俺は父さんの遺言に従っているだけだ。争うなら、記録の残る所で争えばいい」
裕夫婦がタクシーでったあと、浩司は鍵の入った袋と、防犯カメラの録画刻を確認へ記した。鳴り声ではなく、所権と記録によって兄を倉庫から退かせたのは、これが初めてだった。
だが翌の午、野の事務所へ内容証郵便が届いた。差は、裕が依頼した京の弁護士。
父の全財産を約103億円と評価したうえで、浩司に支払いを求める請求額は――25億円だった。
第9話 25億円を請求した兄
「25億円を支払えば、それ以は求めない」
5、野の事務所で向かいうなり、裕は自分が譲歩しているかのように言った。隣には妻の美咲と、京の法律事務所から来た塚本弁護士が座っている。
裕側の計算では、父・正の財産はを含めて約103億円。配偶者はすでにく、相続は息子2なので、男の遺留分は全体の4分の1になる。、田畑、預、の評価額を差し引いても、なくとも25億円がしているという主張だった。
広告
さらに、公正証遺言を作ったの正は病気で判断能力がし、介護していた浩司に誘導された疑いがあるとかれていた。
「族として穏便に済ませたいんです」
美咲は柔らかい声を作った。
「25億円を払ったあとでも、千恵ちゃんを学へかせるおは分残るでしょう?」
しまで、の丈にった学をしろと言っていたの言葉だった。浩司は答えず、野へ任せた。
「塚本先は、9の続について裕さんから説を受けていますか」
野が尋ねると、塚本は眉を寄せた。裕は線をそらしたまま、何も言わない。
赤い封筒から取りされたのは、庭裁判所の審判だった。
〈申・武田裕。遺留分の放棄を許する〉
塚本は1ページ目を読み、裕自が署名した申、当の代理による説確認へんだ。読む速度が次第に遅くなる。
「武田さん。これはご本が申してたものですか」
「昔のことだから、よく覚えていない」
「実印があり、庭裁判所への照会回答も残っています。2億円の贈与を受ける条件として、効果を理解したとかれていますが」
美咲が夫を振り返った。
「2億円って何?」
「会社が苦しいに、親父からに借りただけだ」
野は贈与契約との振込記録、贈与税の申告を並べた。借入ではなく贈与であり、用途は裕の会社の債務理と宅購入資。
本の受領までそろっている。
広告
おすすめ作品
-
完結第13話
俺を睨む「氷の女」が、双子の前で笑った日
妹を事故で亡くし、遺された六歳の双子を男手一つで育てる伊吹公平。仕事と育児に追われる毎日の中、彼が最も苦手としていたのは、職場で「氷の女」と恐れられる経理主任・桐谷エリカだった。ところがある日、保育園へ迎えに行った公平は、娘たちに囲まれて優しく微笑むエリカの姿を目撃する。しかも、誰にも甘えようとしなかった内気な妹・りこが、彼女の服を握って離さない。冷たい視線の裏に隠されていた意外な素顔。そして、少しずつ変わり始める三人の暮らし。孤独を抱えた大人たちと、小さな双子が紡ぐ、温かな家族の物語。人生逆転|兄弟姉妹|裡の顔|親子関係|金銭問題1.9万字5 460 -
完結第18話
離婚翌日に6億円当選、実家で弟に「居場所はない」と拒絶された私
十五年間の結婚生活を終え、四十二歳で一人になった沙耶。途方に暮れていた彼女に、突然、六億円を超える宝くじの当選という奇跡が訪れる。両親を助け、人生をやり直そうと実家へ帰った沙耶だったが、弟の健太は「この家に姉ちゃんの居場所はない」と冷たく言い放った。理由も分からず傷つく沙耶。しかし、弟夫婦が十二年間背負ってきた現実を知り、彼女の考えは大きく揺らぎ始める。さらに当選を打ち明けた夜、健太が突きつけた一言が、家族の隠してきた本音を浮かび上がらせる。六億円があっても取り戻せないものとは――。人生逆転|兄弟姉妹|親子関係|金銭問題1.8万字5 867 -
完結第20話
「息子が高熱なのに来い!」夫一家に185万円の請求書を押しつけられた私の正体
夫と義家族から「何もできない専業主婦」と見下され、金銭まで搾り取られてきた松岡美央。しかし彼女には、世界的なホテルグループの最高責任者という、誰にも明かしていない秘密があった。ある夜、高熱を出した息子を看病していると、義母から三十件以上の着信が届く。「緊急事態だから今すぐ来なさい!」慌ててホテルへ駆けつけた美央を待っていたのは、豪華な食事を楽しむ夫一家と、185万円もの請求書だった。裡切られた|怒り|嫁姑|夫婦|親子関係|修羅場2.6万字5 1804 -
完結第18話
「片親の貧乏人」と息子を叩いた社長、母の正体を知って絶句
結婚の挨拶から帰宅した息子・祥太の頬には、くっきりと平手打ちの跡が残っていた。婚約者の父親から「片親の貧乏人」と罵られ、結婚まで白紙にされたという。二十五年間、女手一つで息子を育ててきた桃江は、静かに電話をかけた。実は彼女は、父の急逝を受けて大企業の社長に就任したばかり。しかも相手の食品会社は、長年その企業との取引に支えられていた。桃江の正体を知り、突然態度を変える婚約者一家。しかし、亡き父が残した調査記録には、結婚騒動をはるかに超える重大な秘密が隠されていた。因果応報|親子関係|修羅場2.6万字5 4003 -
完結第20話
高熱の娘を置き去りにした姉は、私の夫と不倫旅行中だった
結婚五年目の美和は、実の姉・麻里奈から生後十一か月の姪を十日間預けられる。ところが、姉が海外旅行へ出発した直後、幼い心ちゃんの容態が急変。必死に救急搬送する美和だったが、姉にも出張中の夫にも連絡がつかない。不審に思って姉のSNSを調べると、南国の写真に写り込んでいたのは、見覚えのある夫の腕時計だった。怒り|夫婦|親子関係|不倫1.8万字5 2054 -
完結第12話
大家だった姑の逆転
夫を亡くしてから、息子を育てながら八世帯のアパートを守ってきた私。四十歳の息子が迎えた若い嫁は、「お母さんを支えたい」と同居を望んだ。ところが結婚後、私は台所にも立てず、夕食は寝室で一人。ついには「年金暮らしの無職は邪魔。出て行って」と言い放たれる。嫁が信じていたのは、息子がアパートの大家だという嘘だった。本当の所有者が私だと知っても、息子夫婦は名義を譲るよう要求してくる。私は静かに承諾した。しかし、二人が欲しがったアパートには、まだ知らない重大な問題が隠されていた。親不孝|裡の顔|絶縁|親子関係|退職金|金銭問題1.6万字5 751 -
完結第14話
夫のいない四日間
人気ミステリー作家の安田里美は、無職の夫・博之と七歳の娘を養いながら、仕事も家事も一人でこなしていた。ある深夜、夫のスマートフォンに届いたメッセージから、博之が高校時代からの親友・裕子と不倫していることを知る。しかも二人の豪遊費は、里美の書斎から盗まれたクレジットカードで支払われていた。娘を思って離婚をためらう里美だったが、七歳の美香が口にした言葉で決意を固める。そして夫が裕子と沖縄へ旅立った朝、里美はカード会社と引っ越し業者に電話をかけた。さらに、夫の荷物には思いがけない届け先が指定されていた――。夫婦|親子関係|不倫2.0万字5 2503 -
完結第20話
消された十六番目の席
六十二歳の高田かず子は、亡き夫と二人で建てた家で、息子夫婦と暮らしていた。家事も生活費も負担し、家の中で自分の居場所を失いながらも、家族のために我慢を重ねてきた。ところが正月、十五人の親戚をもてなした末に、息子から「母さんの席はないから留守番で」と告げられる。嫁には「身内だけで楽しみたい」と笑われ、帰宅後の布団の準備まで押し付けられた。そんなかず子に、老舗寿司屋の大将から一本の電話が入る。因果応報|人生逆転|裡切られた|夫婦|親不孝|親子関係|修羅場2.6万字5 1338 -
完結第10話
機内で私を叩いた息子の愛人、空港で知った私の正体
新氏グループの会長・玉金は、息子への株式譲渡を決意し、予定を早めて帰国する。ところが機内で、息子の婚約者を名乗る若い女に席を譲れと迫られ、頬を叩かれてしまう。しかも女の腕には、かつて玉金が息子の正妻・寄舟に贈った家宝の翡翠があった。息子に電話をかけても、返ってきたのは母を侮辱する言葉ばかり。怒りを抑えて空港に降り立った玉金を待っていたのは、愛人が用意した警備員たちだった。しかし、そこへ現れた寄舟の一言が事態を一変させる。裡切られた|嫁姑|第二の人生|親子関係|修羅場1.4万字5 752 -
完結第13話
濁流の中のSOS
夫と十三歳の娘・凛と買い物へ出かけた私。ところが夫は突然、増水した川へ車を走らせ、帰ろうとした私たちを激流へ突き落とした。必死にもがく私の手をつかみ、「お母さん、もがかないで!」と叫んだ凛。その言葉に従い、二人は奇跡的に生き延びる。だが、夫は救助もせず姿を消していた。裡切られた|夫婦|裡の顔|真相|親子関係1.9万字5 584