"出産予定日2日前、家を追い出された" 第3話
黒川が調べた結果、族契約の代表者である健が、夕方に私の回線だけを止していた。病院からの確認を受けさせず、助けを呼ぶ段まで奪うためだったのだろう。
父はい声で「許さん」と言ったが、私は首を横に振った。
「お父さん、鳴り込むのはまだ待って。あのたちが何をしたのか、全部、記録に残したい」
自分でも驚くほど静かな声だった。恐怖が消えたわけではない。ただ、黄いおくるみ、キャンセルの通話記録、保留になった変更申請、そして玄関での録音。点だったものが線になり始めると、泣いているだけでは赤ん坊を守れないと分かった。
黒川は刻が分かる形で画面を保し、病院にも通話記録の保全を依頼した。私は玄関先の録音をイヤホンで聞き直す。佳代の「今すぐていきなさい」と健の「さっさとけ」という声の直に、自分の荒い呼吸が入っていた。聞くのはつらかったが、途で止めず、元のデータをクラウドへ送った。
翌朝、担当医は診察結果を見ながら、で移する程度なら問題ないと判断した。張りがくなればすぐ戻ることを条件に、私は父と黒川に付き添われて役所へ向かった。
の空の、窓フロアには番号を呼ぶ子音が淡々と響いている。私は職員から説を受け、自分のに反する婚届がされても受理されないよう、婚届受理申の用へ署名した。
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記入台では腹がつかえて屈みになれず、職員が子とい机を用してくれた。用に旧姓の「」をきかけてが止まる。私はゆっくり線を引き、今の戸籍の姓である「本由美」とき直した。健と別れる決と、勝な婚届を許さないことは矛盾しない。終わらせ方まで、もうには決めさせない。
「ご本確認ができました。本から申は効です」
受理印が押される音はさかったが、6閉じ込められていた扉に、初めて鍵を掛け返したようにじた。
病院へ戻る途、黒川がしいSIMの入った端末を渡してくれた。源を入れると、止に届かなかった通が順に同期されていく。健からの謝罪は1件もなく、「勝なことをするな」「母さんに話しろ」といういメッセージだけが並んだ。
そのに、アプリからの通があった。
《額振込のおらせ》
送信刻は、私がを追いされる約1。胸騒ぎを覚え、ログインする。産と当面の活のために用していた座には、620万円あるはずだった。
画面が切り替わり、残が表示された。
860円。
何度更しても、桁は増えない。
そして振込先の欄には、私のらない女の名が記されていた。
坂本美——620万円。
第4話 残860円
病院へ戻るに、私たちはの支へ向かった。窓奥の応接はが効いていたが、私は指先のたさを拭えないまま、通帳と本確認類をテーブルに置いた。
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「この振込に、私は同していません」
員は画面と私の顔を見比べ、すぐに責任者を呼んだ。620万円はの1812分、インターネットバンキングから括で送されていた。接続元は自宅の通信回線で、端末報はリビングに置いていた共タブレットと致する。
座は私の名義だった。結婚に貯めた480万円へ、産の活費として6積みてた140万円を加えたものだ。健は「族のおだ」と言っていたが、賃も費も健診費用も、ほとんど私がそこから払ってきた。それでも赤ん坊のための620万円だけは守っているつもりだった。
「送の認証メールは、登録されているアドレスへ送られています」
責任者に言われ、私はメールの履歴を確認した。受信箱には残っていない。しかし削除済みフォルダをくと、振込の認証番号をらせるメールが見つかった。刻は1810分。その、私は台所で夕を作り、スマートフォンは充のため寝に置いていた。
2分あれば、番号を盗み見て送することはできる。
さらに3、健が「古いタブレットを初期化する」と言って、私にロック番号を尋ねていた。保険証券と印鑑を探していた夜と同じだ。何げない会話だとって答えた自分の声まで、今は証拠の隙に見えた。
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