"出産予定日2日前、家を追い出された" 第12話
健は、私が何もらずに泣いて戻るとっていたのだろう。制度や記録の話をするたび、彼の声だけがきくなり、言葉はくなっていった。
藤原は、病院の予約を取り消そうとした通話、私の回線止、保険変更申請、620万円の送、偽造された婚届と2500万円の融資申込を順に読みげた。健の顔からりが消え、代わりに汗が浮かぶ。
「あれは全部、族のためにやったんだ。会社の4800万円もに借りただけで、返すつもりだった」
自分で「借りた」とにした瞬、藤原の線が鋭くなった。健も失言に気づいたらしく、唇を結ぶ。胸元の録音には、刻とともに声が残っている。
佳代は今度は父へ向き直った。
「親なら夫婦を仲直りさせるべきでしょう。由美さんが戻れば、全部丸く収まるんです」
父は杖を膝のへ置き、い声で答えた。
「あなた方がへ捨てたのは、都よくをす嫁ではない。私の娘と、まれる直の孫だ。仲直りという言葉で、犯罪の疑いまで消せるとわないでいただきたい」
佳代は顔を赤くしたが、もう言い返せなかった。
私は2をまっすぐ見る。
「連絡は今すべて藤原先を通してください。は通どおり14以内にけ渡すこと。実印、共タブレット、母の契約には触れないで。娘の報を探ろうとしたは、その記録も提します」
広告
「由美、本気で俺を捨てるのか」
健の声が急にくなった。その顔に、度はしたの面がなる。けれど私は、娘の首に巻かれたさなバンドをいした。
「俺だって追い詰められていたんだ。4800万円を戻せば、また3でやり直せる。美とはもう終わった」
美と別れたから私へ戻る。その順序をにしても、おかしいとはじていないらしい。私が欲しかったのは選ばれることではなく、最初からとして尊されることだった。
「最初に捨てたのは、あなたよ」
面談を終え、警備員が2をへ誘導する。廊へたところで、紺の着を着た男性2が待っていた。都設が提した資料を担当する捜査員だった。
「本健さん。4800万円の資移と類について、お話を伺いたい」
健が振り返ったとき、面談のドアは静かに閉まった。
第14話 8目の朝
部監査が始まってから8目の朝、玄関の防犯カメラが542分に反応した。
退院して父のへを寄せていた私は、授乳を終えたばかりの娘をベビーベッドへ戻し、端末の通をく。まだ暗い画面ので、健が型バッグ2つをへ運んでいた。佳代は玄関先からを見回し、くしろとを振っている。
事聴取では「経理処理を部に任せていた」と否認したのに、その、健は保データへ繰り返しアクセスしようとしていた。
広告
会社は権限を止していたが、自宅の共タブレットには古い認証報が残っている。逃げるに証拠を持ちすつもりなのかもしれない。
警察は数から、28件の請求原本との送記録を照していた。健が「部の入力」と説した伝票には、彼の承認IDだけでなく、同じ端末から作成された子署名が残っている。婚届と融資申込についても、私の本来の署名との違いが確認され、裁判所へ令状が請求されていた。
私は映像を保し、黒川と藤原へ同に送った。父ののカーテン越しに、夜けの空が青く変わり始めている。娘は何もらず、両を頬の横へげて眠っていた。
551分、のへ捜査両が止まった。令状を持った捜査員が健へづき、のトランクを閉めようとしたを止める。
「本健さんですね。業務横領と印私文偽造などの容疑で逮捕します」
健は歩ずさりし、のへ戻ろうとした。だが玄関側からも別の捜査員が現れ、逃げをふさぐ。
「返すつもりだった! はまだ母さんの座にある。由美の父親が俺を潰すために仕組んだんだ!」
叫び声は静かな宅に響き、向かいののカーテンがいた。予定2の夜、5台の黒いをのぞいていた窓と同じ窓だった。
健はバッグを盾にするように抱え、「会社へ説にくところだった」
と言い換えた。しかしのカーナビには県のビジネスホテルが登録され、財布にはまとまった現が入っていた。
広告
おすすめ作品
-
完結第14話
デブでダサいと捨てられた妻
「家で鏡くらい見ろよ」「太ってるし、服もダサい」。長年連れ添った夫から外見を馬鹿にされ、最後には別の女性を選ばれた妻は、何も言い返さず離婚届に判を押した。夫は、自分に捨てられた妻がこれからも地味で冴えない人生を送ると思っていた。しかし1年後、同窓会の会場で偶然再会した元妻を見た瞬間、その余裕は消える。髪型も服装も、立ち居振る舞いも以前とはまるで違う。だが、本当に夫を青ざめさせたのは“痩せて綺麗になったこと”ではなかった。離婚後の1年間で、彼女が取り戻していたものを知った時、元夫は初めて、自分が何を捨てたのか思い知らされる夫婦|熟年離婚2.0万字5 5 -
完結第15話
3日だけ帰るはずだった妻
「お盆は3日だけ実家に帰るね」。そう告げた恵子に、夫は「せいせいする」、20歳の息子まで「そのまま帰ってこなくていい」と笑った。だが2人は知らなかった。恵子は半年かけて必要な荷物を実家へ移し、離婚届にもすでに署名していたことを。翌朝8時30分、28年間の結婚生活を終わらせた恵子は、そのまま実家へ向かう。一方、妻がいなくなった家には夫の愛人が大きなキャリーケースを持って現れ、3人で新生活を始めようとしていた。ところが翌朝、ガス、電気、水道が次々と止まり、さらにリフォーム会社から告げられた一言で夫の顔色が変わる。「この土地と建物の所有者は、佐藤恵子様です」――。夫婦|熟年離婚2.3万字5 0 -
完結第10話
「洗剤を入れた嫁」にされた私
45歳の私は、助産師として夜勤をこなしながら、夫と2人で静かに暮らしていた。 そんなある日、夫から義父の認知症を理由に、義両親との同居を頼まれる。家族のためならと受け入れた私だったが、同居が始まってから、義母の態度は少しずつ変わっていった。 夜勤明けに責められ、家事を押しつけられ、身に覚えのない悪口まで夫に吹き込まれる日々。それでも夫は、いつも義母の言葉だけを信じた。 やがて私は、義父の“認知症”にある違和感を覚える。 そしてある夜、義母はついに言い放った。 「食事に洗剤を入れたでしょう!」 その嘘を信じた夫は、私に「出ていけ」と告げる。 1か月後、私は離婚届を持って、もう一度あの家の玄関に立った。 その時、義家族が本当に恐れていたものが、ようやく明らかになる――。嫁姑|夫婦|裡の顔|真相1.5万字5 62 -
完結第10話
臨月の妻に親族30人分の法事料理を作らせていた母
臨月を迎えた妻を家に残し、出張へ出ていた夫。ところが予定より3日早く帰宅すると、台所には親族30人分の料理が並び、その横で妻が床に倒れていた。事情を聞けば、母は翌日の法事のために「嫁なんだから当然」と、身重の妻へ朝から料理を作らせ続けていたという。怒鳴りつけてもおかしくない状況だった。それでも夫は母を責めなかった。ただ妻を抱き上げ、病院へ向かう前に静かに告げる。「法事は予定通りやっていい」。母が安心した次の瞬間、夫は続けた。「ただし明日は、俺たち夫婦は一切参加しない」。その一言を境に、母が長年“家族のため”と押しつけてきたものが、次々と返され始める。嫁姑|親子関係1.5万字5 2637 -
完結第12話
留守番を命じられた妻
父が遺した築43年の家で、夫・浩司と義母・和子に尽くしてきた52歳の由美子。和子の喜寿を祝う2泊3日の温泉旅行を予約し、32万円を用意したのも彼女だった。ところが出発直前、「車が狭いから留守番ね」と置き去りにされる。後部座席の見知らぬ鞄、妊婦向けプランに変えられた予約、消えた実印。夫と義母は、妊娠した若い愛人を迎え、由美子の父の家まで奪おうとしていた。しかし2人を笑顔で見送った由美子は、すでに登記事項証明書と偽造書類を揃え、静かな反撃を始めていた。人生逆転|嫁姑|不倫1.8万字5 877 -
完結第11話
消えた指輪と義父の手帳
結婚2年目の美咲は、義母・富美子から突然、亡き義父が贈った大切な指輪を盗んだと疑われる。 防犯カメラには、夜中に美咲が仏間へ入る姿が映っていた。だが美咲は、ただ窓を閉めただけ。身に覚えのない疑いをかけられたうえ、夫の亮介までもが「バッグを見せれば終わる」と言ったことで、美咲は家を出る決意をする。 しかしその後、義姉から告げられたのは、7年前にも同じような“盗難騒ぎ”があったという事実だった。 さらに、亡き義父の手帳には、富美子が隠し続けてきた家族の秘密が残されていた。 消えた指輪は、誰が持ち出したのか。 そして義母はなぜ、真実を知りながら美咲を疑い続けたのか――。嫁姑|真実|親子関係1.6万字5 728 -
完結第7話
義母に「車が狭いから、あなたは留守番ね」と置いていかれた私
父が遺した築43年の家で、夫・浩司と義母・和子に尽くしてきた52歳の由美子。和子の喜寿を祝う2泊3日の温泉旅行を予約し、32万円を用意したのも彼女だった。ところが出発直前、「車が狭いから留守番ね」と置き去りにされる。後部座席の見知らぬ鞄、妊婦向けプランに変えられた予約、消えた実印。夫と義母は、妊娠した若い愛人を迎え、由美子の父の家まで奪おうとしていた。しかし2人を笑顔で見送った由美子は、すでに登記事項証明書と偽造書類を揃え、静かな反撃を始めていた。嫁姑|熟年離婚1.0万字5 7 -
完結第10話
帰る家は、ちゃんとあった
ある日突然、夫の順一は要介護の義母を家へ連れてきた。 何の相談もなく同居介護を押しつけられた霞。これまでも義母の世話を続けてきたが、感謝されるどころか暴言を浴び、夫からも在宅の仕事を見下され続けていた。 そして夫は笑いながら言い放つ。 「同居介護が嫌なら出ていけよ。親なし女に帰る家があるならな」 幼い頃に両親を亡くした霞には、逃げ場などない。夫も義母もそう信じていた。 しかし霞は静かに答える。 「なら離婚で。実家に帰ります」 夫が知らなかっただけで、霞にはずっと守られてきた家があった。そして彼女の背後には、幼い頃から霞を支え続けた兄の存在があった。 妻を追い詰めた夫が、後日ようやく知ることになる。自分が馬鹿にしていた妻の仕事も、母を入れようとした介護施設も、すべて思いもよらない場所につながっていた――。嫁姑|介護1.4万字5 964 -
完結第10話
米寿の席で外された嫁
米寿祝いの席で、義母は親族の前で突然言った。 「秋子さんには、明日から店へ来てもらわなくて結構です」 33年間、朝早くから和菓子店《松月堂》を支えてきた秋子。餡を練り、注文を管理し、繁忙期には夜まで働いてきた日々は、義母の一言で“家族の手伝い”として片づけられた。 しかも店から外された秋子に、今度は義母の通院や世話を任せるつもりだった。 何も言わず席を立ったその夜、秋子は古い段ボール箱の中から、亡き義父が残した一通の封筒を見つける。 そこに入っていたのは、秋子を守るための遺言ではなかった。 店の帳簿に隠されていた不自然な金の流れ、説明されていない借金、そして義父が最後まで言えなかった家族の秘密。 「家族だから」という言葉の下で、誰が何を背負わされていたのか。 33年間奪われてきた時間と仕事の価値を、秋子が静かに取り戻していく物語。人生逆転|嫁姑|親子関係1.5万字5 1933