"出産予定日2日前、家を追い出された" 第16話
3の指が触れっても、誰かが誰かを縛る必はない。れたくなればれ、困ったときには戻れる関係を、これから作ればいい。
便箋の最には、もう1つだけ言葉があった。
《由美。選び直すことは、負けではありません。自分と子どもが笑えるほうへ、何度でも歩いてください》
私はをしい透ケースへ入れ、婚届の受理証とは別に、母の箱へ戻した。1つは終わった関係の記録で、もう1つはこれからきるための言葉だった。
その夜、藤原から連絡が入った。健の刑事事件で起訴の続きがみ、佳代の座に残っていた資も保全されたという。
「すべてが確定するには、まだが必です。ただ、4800万円の流れを否定するのは難しい状況です」
私は結の寝顔を見ながら答えた。
健の処分がいか軽いかだけを待つにはしたくなかった。裁判と回収は専に任せ、そのにも結は成する。初めて笑うも、寝返りを打つも、相へのりだけで見失いたくない。
「急がなくて丈夫です。私たちは、もう全な所にいますから」
第18話 3かの玄関
3か、犀の枝にはさな芽がついていた。
傷の残っていた赤ん坊の部は、淡い緑のカーテンと製のベビーベッドを入れ直し、朝のが入る部になった。結は2980グラムだったの倍くまで育ち、最は声を掛けると目を細めて笑う。
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退院したばかりの頃は、夜に玄関付で音がすると、佳代が戻ってきたのではないかと目を覚ました。防犯カメラとしい鍵を確認し、結の胸がするのを見て、ようやく眠り直す。そんな夜はしずつ減り、今では朝、台所で湯を沸かす音を自分のの音だとえるようになった。
私は育児休業を続けながら、復職に向けて週1回、元の職とオンラインで面談していた。父からホールディングスへ戻るよう勧められたが、今すぐ答えはさない。助けてもらうことと、自分のを預けることは別だと、父も理解してくれている。
健は、業務横領や偽造類に関する事件で起訴され、裁判を待っていた。都設は佳代の座に残っていたと押収された財産から回収をめ、残額についても民事続きを続けている。
佳代は妹のへ移り、2200万円の受領経緯について調べを受けた。最初はすべて健のせいにしていたが、業務端末に残った音声と12回の入記録をに、らなかったという説を維持できなくなったらしい。
坂本美は620万円を全額返し、父親の3000万円を受け取ることも、健と入籍することもなかった。提した34枚の写真と録音は捜査資料になったが、彼女自が疑いを持ちながら送を受けた事実についても確認が続いている。
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彼女から謝罪のが1度届いたものの、私は藤原へ保管を頼み、返事はさなかった。
許すかどうかを急いで決める必はない。相の悔を受け止める役目まで、私が背負うことはないからだ。
昼、玄関のチャイムが鳴った。防犯カメラには、袋を2つげた父が映っている。しい鍵を渡してあるのに、父は必ずチャイムを鳴らし、私がけるまでで待つようになった。
「入っていいか」
「どうぞ。結、今は起きてるよ」
父は靴をそろえてがり、袋から野菜のスープとさな絵本をした。以なら価な贈り物を選んだはずだが、今は私に必なものを先に尋ねる。結を抱くときも、「今、抱いていいか」と私へ確認した。
私はスープを温め、父はリビングのラグに座って絵本を読んだ。結にはまだ物語のは分からない。それでもい声を聞くとをかし、ページがめくられるたび目で追った。特別な祝いではない昼のが、黒い5台よりも確かな救いにじられた。
昼、結をベビーカーへ乗せ、3で所を歩くことにした。玄関で靴を履いていると、郵便受けに健の弁護からの封筒が届いているのが見えた。には、健がいた謝罪文が入っているという。
私は封を切らず、斎の証拠箱へ収めた。読むかどうかは、いつか自分で決めればいい。
謝罪が届いたからといって、傷つけられた側がすぐに答えを返す義務はない。
箱の隣には、母のを入れた箱がある。同じ斎に置いても、2つはまったく違う。証拠箱は過に名を付けるためのもの、母の箱はこれから迷ったときにくためのものだった。
ベビーカーを押してをると、の名残を含んだが頬をなでた。予定2の夜に浴びたと同じ季節のたさなのに、もう怖くはなかった。背にはかいがあり、隣には父がいて、目のには自分で選べるが続いている。
「由美、寒くないか」
「丈夫。結の毛布も持ったから」
ベビーカーには、あのたい玄関へ落ちた淡い緑の産着と、母から受け継いだのスプーンを入れていた。黄いおくるみも、偽の類も、もう私たちの未来を決めるものではない。
私はしくなった鍵でを閉め、結の顔をのぞき込む。娘はので目をけ、さく笑った。
あの夜、父は話の向こうで「くな」と言った。
けれど今、私は自分ので歩きす。
帰る所を持ちながら、どこへむかは自分で決めるために。
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