"旅行代を全額68万円出したのに現地で「年寄りはすぐ疲れて足手まとい」と別行動された" 第2話
68万円を払った
メッセージは数秒に削除された。
けれど、そのに私は画面を保していた。指先が震えなかったことに、自分でも驚いた。以なら、違えて送ったのだろうと見なかったことにし、直が困らないよう自分から話題を変えていたはずだ。
美咲と直が結婚して3になる。最初のうち、美咲は私を「気取らなくて素敵なお義母さん」と褒めていた。それがいつからか「もう齢なんですから」「私たちのやり方にをさないでください」に変わった。直はそのたび、悪気はない、言葉がはっきりしているだけだと笑って済ませた。
夫をくしてから、私は族の揉め事を避けることばかり考えていた。息子が再婚し、ようやく落ち着いた庭を持てたのだから、母親が波をててはいけない。そうって事の誘いを断られても、約束を直に変えられても、笑って引きがった。だが、私が守っていたのは族の平穏ではなく、直が何も決めずに済む環境だったのかもしれない。
今回も同じだった。
の待ちわせでは、美咲は私の紺のカーディガンを見るなり、「その格好で来たんですか」と眉を寄せた。チェックインの際には、「続きは私たちがしますから、座っていてください」と私から予約確認を取りげた。夕では料理をわう私に、「べるのが遅いと次の予約ににいません」
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と急かした。
そのたびに直は、聞こえないふりをしてスマートフォンを触っていた。
私は保した画像を閉じ、フロントへ向かった。磨かれたのに杖の先を打つ宿泊客の音が響き、窓際では若い夫婦が子どもに着を着せている。置きりにされたことを声で訴えれば、周囲の同は得られたかもしれない。しかし、欲しかったのは同ではなかった。
「すみません。予約内容と支払いの内訳を確認できますか」
若い女性スタッフが、私の名と本確認類を確かめて端末をいた。予約は2泊3、3分。客と夕、送迎、今の貸切観をわせて68万円。申込者も決済名義も、すべて澄子だった。
それは紛れもなく、私自のおだった。
ところが、今の観の利用者欄だけは、昨夜遅くに3から2へ変更されていた。
「変更の連絡は、どなたからですか」
スタッフは履歴を確認し、申し訳なさそうに答えた。
「直様からです。澄子様は体調良のためホテルに残る、と伺っております」
体調を尋ねる話も、相談もなかった。直は最初から、私を置いていくつもりで数を変えていたのだ。
スタッフは子を勧め、体調に問題がないか本気で配してくれた。私は背筋を伸ばし、「元気です」と答えた。その声を自分ので聞いたとき、議なほどが定まった。
齢を理由に私のまで奪ったのは美咲だが、それをホテルへ事実として伝えたのは息子だった。
胸の奥に残っていた最の言い訳が、静かに崩れた。
私は印刷してもらった利用細と変更履歴を受け取り、古いバッグへ収めた。内側の革ポケットに触れると、いカードの角が指に当たる。
夫の、必がない限り使わないと決め、6しまったままにしていた黒いカードだった。
表にはで、ホスピタリティの社章が刻まれている。
「支配の本さんは、今いらっしゃいますか」
スタッフが顔をげた。
私は黒いカードを、カウンターのへ静かに置いた。
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