"旅行代を全額68万円出したのに現地で「年寄りはすぐ疲れて足手まとい」と別行動された" 第4話
28舗の株主
美咲は私と本を交互に見たあと、困ったように笑った。
「お義母さん、支配さんに何を言ったんですか。族のちょっとしたき違いで、ホテルに迷惑をかけないでください」
直は笑わなかった。テーブルのの黒いカードを見つけた瞬から、顔を失っていた。
本がい声で告げた。
「迷惑をおかけしているのは、こちらです。澄子様は、当グループ創業者・隆の奥様であり、現もホスピタリティの株式を34%保する株主です」
「……株主?」
美咲の唇が、言葉だけをなぞるようにいた。
「ホスピタリティって、このホテルだけじゃありませんよね」
「国内28施設を運営しております」
本が答えると、美咲は子の背にをついた。昨まで私の古いバッグを恥ずかしいと言い、チェックインの続きさえ任せられない老のように扱っていた。その私が、彼女の自していたホテルグループの最株主だとり、表から血の気が引いていく。
「そんな話、私は聞いていません」
美咲は直を振り返った。
「あなたのお父さんが昔ホテルの仕事をしていたとは聞いた。でも、くなるに会社は放したって言ったでしょう。お義母さんには名誉会員の資格が残っているだけだって」
結婚式の席でも、直は父のことを「方で宿泊業をしていた」
広告
としか紹介しなかった。美咲は、現の暮らしはすべて直の料と能力で成りっていると信じている。そのい込みを訂正しなかっただけではない。直は、自分が母親を支えているように話していたのだ。
直は黙ったまま、濡れた着の袖を握っている。
「直さんは、ごじのはずです」
本の調は静かだった。
「毎の株主説会にも席されていますし、本社の管理職として、主株主の覧が付いた資料も受け取っています」
逃げを失った直は、ようやくさく頷いた。
「っていた」
美咲が息をのむ。
「じゃあ、どうして私に隠していたの? それに、さっき私がお義母さんをホテルへ残したときも、何も言わなかったじゃない」
「母さんは、会社で特別扱いされるのが嫌いなんだ。俺が勝に話すことじゃない」
もっともらしい答えだった。しかし、秘密を守ることと、妻が母親をまといと呼ぶのを黙って見ていることは違う。
本は私のを確認してから、部のへた。親子の問題に従業員を巻き込まないための配慮だった。扉が閉まると、が窓を打つ音だけが残り、族3で向きうはずだった旅が、初めて本当の話をするへ変わった。
美咲は急に私のへ歩み寄った。
「お義母さん、誤解なんです。体調を配しただけで、置いていくつもりでは……。
広告
LINEも友との冗談を違えて送っただけです」
私はスマートフォンをき、保した画面をテーブルへ置いた。続いて、68万円の利用細と、直が昨夜変更した観の履歴を並べる。
「冗談かどうかは、これを読めば分かります。私が体調良だと、ホテルへ連絡したのは直でしょう」
美咲の顔から作り笑いが消えた。
私は息子へ向き直った。腹たしさより、胸にあったのはたい失望だった。妻に真実を話さなかったことではない。私が費用を払い、楽しみにしていた旅からされても、彼が守ろうとしたのは自分の庭の嫌だけだった。
「直。あなたは美咲さんに、この68万円を誰が払ったと説したの?」
直は答えなかった。
代わりに美咲が、震える声で言った。
「旅代は、直が会社からもらった特別当で払ったんじゃないんですか?」
その言で、息子が隠していたものは、株主の名だけではないと分かった。
広告
おすすめ作品
-
完結第17話
共通テストで950点を取った私より、880点だった妹だけを家族は祝った
共通テストで1000点満点中950点を取った美空。しかし家族が祝ったのは、880点だった双子の妹・梨奈だけだった。「今夜の主役は梨奈だ」。父は美空の採点表を床へ落とし、家族3人で妹の東京進学を祝う。模試で上位に入っても、参考書代を自分で稼いでも、美空の努力が認められることはなかった。その夜、美空は踏まれた採点表を拾い、自室に隠していた1通の封筒を取り出す。そこには、すでに合格していた防衛大学校からの通知が入っていた。美空は家族に何も告げず、入校を決める。そして4月1日、父の会社へ一本の電話が入った瞬間、家族が当然だと思っていた“美空の将来”が、すでに自分たちの手を離れていたことが明らかになる。親子関係2.4万字5 55 -
完結第15話
博士になった息子を「返せ」と言われた夜
春樹が博士号を取得した夜、母・ひよりは二十三年間の苦労が報われたように感じていた。 赤ん坊の頃から育て、病気の夜も、受験の日も、留学の朝も、ずっとそばで支えてきた大切な息子。けれど祝賀会の席で、夫は一人の女性を連れて現れ、残酷な真実を告げる。 「春樹は、俺と愛人との子だ」 さらに夫は離婚届を突きつけ、ひよりを家から追い出そうとする。だがその場で、春樹が静かに口を開いた。 そして明かされたのは、夫と愛人だけが隠していたはずの過去ではなかった。 二十三年前、赤ん坊だった春樹に何が起きたのか。血のつながりを超えて、最後に息子が選んだ“本当の母親”とは――。夫婦|親不孝|絶縁|親子関係2.3万字5 279 -
完結第10話
鍵をかけられた妊婦
妊娠七か月の美緒は、漏水工事のため、夫の実家で三週間だけ暮らすことになった。 最初は親切だった義母。けれど数日後から、漬物店の手伝いは少しずつ増え、母子手帳や保険証まで勝手に管理されるようになる。 医師から無理な立ち仕事を避けるよう言われても、義母は「妊婦は病人じゃない」と聞き入れない。夫に訴えても返ってきたのは、「母さんは心配しているだけ」という言葉だった。 そしてある朝、美緒が家を出ようとすると、靴は消え、玄関には外から鍵が掛けられていた。 閉じ込められた家の中で、突然お腹に強い張りが走る。 その時、美緒はようやく気づく。守らなければならないのは、家族の顔色ではなく、自分とお腹の子の命だった――。嫁姑|真実|親子関係1.6万字5 710 -
完結第10話
「洗剤を入れた嫁」にされた私
45歳の私は、助産師として夜勤をこなしながら、夫と2人で静かに暮らしていた。 そんなある日、夫から義父の認知症を理由に、義両親との同居を頼まれる。家族のためならと受け入れた私だったが、同居が始まってから、義母の態度は少しずつ変わっていった。 夜勤明けに責められ、家事を押しつけられ、身に覚えのない悪口まで夫に吹き込まれる日々。それでも夫は、いつも義母の言葉だけを信じた。 やがて私は、義父の“認知症”にある違和感を覚える。 そしてある夜、義母はついに言い放った。 「食事に洗剤を入れたでしょう!」 その嘘を信じた夫は、私に「出ていけ」と告げる。 1か月後、私は離婚届を持って、もう一度あの家の玄関に立った。 その時、義家族が本当に恐れていたものが、ようやく明らかになる――。嫁姑|夫婦|裡の顔|真相1.5万字5 185 -
完結第10話
20年後、坊ちゃんは帰ってきた
財閥家の御曹司・優人は、母を亡くした直後、新しく屋敷に入ってきた女によって濡れ衣を着せられ、わずか8歳でアメリカ留学へ追いやられる。 実の父にまで見捨てられた優人のそばに残ったのは、亡き母から「この子を守って」と託された家政婦・白石千鶴子だけだった。 行き先も学校も用意されないまま、異国の地へ捨てられた二人。千鶴子は皿洗いをしながら優人を育て、優人もまた、悔しさを胸に必死で学び続ける。 そして11年後、母が残した一冊の日記から、隠されていた資産と最後の願いが見つかる。 それからさらに時が流れ、20年後。 日本の大和グループが経営危機に陥った時、正体不明の投資家「黒札」に救いを求めることになる。 しかし彼らはまだ知らなかった。 その「黒札」こそ、かつて屋敷から追い出した少年だったことを――。人生逆転|裡切られた|真相|親子関係1.4万字5 199 -
完結第16話
出産予定日2日前、家を追い出された
出産予定日まであと2日。臨月の由美は、姑から突然「その荷物ごと出ていきなさい」と家を追い出される。助けを求めても、夫・健一はスマホを見たまま「母さんに逆らうな」と言うだけだった。11月の冷たい夜、入院バッグ1つを抱えて外へ出た由美は、3年間連絡を絶っていた父へ電話する。「お父さん……家を追い出されたの」。父は理由も聞かず、「そこを動くな」とだけ答えた。そして10分後、住宅街に黒塗りの車が5台到着する。先頭から降りた男は由美の前で深く頭を下げた。「お迎えに上がりました、由美様」。しかしその夜、病院で調べると、夫が由美の入院予約や保険、さらに出産後の生活資金まで密かに動かしていたことが判明する――嫁姑|熟年離婚2.5万字5 340 -
完結第9話
財産は長男へ――8年間介護した次男に残されたのは、古びた倉庫一軒だけだった
父・正一を8年間介護した次男の浩司。しかし遺言で、兄の裕二には家、田畑、預金、車が渡され、浩司に残されたのは荒れ果てた倉庫と、4時20分で止まった腕時計だけだった。兄夫婦に家を追い出され、娘の大学入学金82万円さえ用意できない浩司。四十九日にも仏壇へ入れてもらえず、家族で倉庫に父を供養した時、作業台の奥にある西壁から不自然な音が響く。壁の中から現れた鉄扉と巨大な金庫。父が時計に隠した暗号を解いた時、兄が見下した遺産の本当の価値と、20年前から封じられていた家族の秘密が動き始める。親子関係1.4万字5 318 -
完結第7話
義母に「車が狭いから、あなたは留守番ね」と置いていかれた私
父が遺した築43年の家で、夫・浩司と義母・和子に尽くしてきた52歳の由美子。和子の喜寿を祝う2泊3日の温泉旅行を予約し、32万円を用意したのも彼女だった。ところが出発直前、「車が狭いから留守番ね」と置き去りにされる。後部座席の見知らぬ鞄、妊婦向けプランに変えられた予約、消えた実印。夫と義母は、妊娠した若い愛人を迎え、由美子の父の家まで奪おうとしていた。しかし2人を笑顔で見送った由美子は、すでに登記事項証明書と偽造書類を揃え、静かな反撃を始めていた。嫁姑|熟年離婚1.0万字5 532 -
完結第10話
預けた通帳が消えた日
六十七歳の山田静は、膝の手術費を用意するため、息子夫婦に預けていた通帳を返してほしいと頼んだ。 しかし嫁の美香は、薄く笑ってこう言った。 「お母さん、私たちにお金なんて預けましたっけ?」 夫と二人で魚屋を営み、三十年かけて貯めた老後の資金。息子を信じて渡した通帳も印鑑も、いつの間にか静の手元から消えていた。さらに息子の健一まで、母をかばうどころか「知らない」と目をそらす。 不安を抱えた静が耳にしたのは、預金を使い切ったあと、彼女を認知症扱いして施設へ入れようとする恐ろしい計画だった。 家族を信じ続けた母が、ようやく気づいた真実。 奪われたのはお金だけではなかった。 自分の人生そのものを取り戻すため、静は亡き夫との思い出が残る藤沢へ向かい、静かな反撃を始める――。怒り|親不孝|親子関係|介護|金銭問題1.5万字5 435