"旅行代を全額68万円出したのに現地で「年寄りはすぐ疲れて足手まとい」と別行動された" 第11話
失ったのは母ではない
毎25、私の座から直へ送られていた25万円は、そのからかなかった。
送の3、直が私の自宅を訪ねてきた。には菓子折りももなく、代わりに宅ローンの返済予定表と、会社から届いた286万円の返還通を持っていた。
「このままだと活が回らない」
居へ通すなり、直は類を座卓へ広げた。
「今はカードの引き落としもある。のリースを解約して、保険も見直した。それでも美咲が実へ戻って活費を入れなくなったから、りないんだ」
私は直に、毎の取りと支をへかせた。管理職当を失ったあとの取りは約42万円。宅ローン、管理費、、保険、カード払いをわせた支は約67万円だった。差額は25万円。私が毎送っていた額と、ほとんど同じだった。
「最初から、私の送がなければ成りたない活だったのね」
数字を自分でいた直は、初めて黙ってそれを見た。私が援助を止めたから赤字になったのではない。8、赤字を見えなくしていただけだった。
庭では、夫が植えた犀の葉がに揺れていた。直が子どものころ、転んで泣くたびに駆け込んできただ。私は今も息子を憎んではいない。けれど、かわいそうだとうたびにをせば、また同じ所へ戻る。
「マンションを売るか、もっとさなまいへ移ればいいでしょう」
広告
「3000万円もを入れたのに、放せと言うのか」
「その3000万円をしたのは私です。あなたが守りたいのはではなく、援助が続く提で選んだ暮らしでしょう」
直は唇をかみ、次の類を取りした。公証役へ相談するために用したという、相続財産の概算表だった。私の自宅、預、そしてホスピタリティの株式まで、すでに自分の取り分のように記されている。
「先に相続分の部を渡してくれないか。いずれ俺が受け取るものなら、今使っても同じだろう」
相続財産の概算表には、私の齢まで記されていた。72歳という数字の横に平均余命の資料が添えられ、株式評価額と自宅の査定額がされている。息子が私の暮らしを配して作った類ではない。私がいなくなったあとの額を、先に受け取るための表だった。
指先がたくなったが、私はを破らなかった。そこにかれた数字こそ、直が今の私をどう見ているかを、何より正確に示していた。
「同じではありません」
私は概算表を閉じた。
「私がきている、これは私が管理し、責任を持って使う財産です。あなたが役員になれるかどうかも、株をどうするかも、自に決まることではありません」
「美咲もていった。役員候補からもされた。母さんまでを止めたら、俺には何も残らない」
広告
その言葉を聞いたとき、ホテルのロビーからりった黒いをいした。あの、置いていかれた私に、直は振り返りもしなかった。自分が1になって初めて、残される側の痛みをにしている。
「あなたは母親を失っていません。毎25万円を受け取る権利と、嘘で得る役職を失っただけです」
「同じことだろう」
「それを同じだとっているは、何を渡してもりません」
直はく黙ったあと、概算表を鞄へ戻した。帰り際、玄関に置いた私の古いバッグへ目をやる。
「そんな物を、まだ使うのか」
以と同じ言葉なのに、声から嘲りは消えていた。
「これは、何もなかったころに、お父さんが働いて買ってくれた物です。あなたにも、まだ自分で働ける体とが残っているでしょう」
直は俯いたまま靴を履き、今度は何も求めずに玄関をた。
広告
おすすめ作品
-
完結第17話
共通テストで950点を取った私より、880点だった妹だけを家族は祝った
共通テストで1000点満点中950点を取った美空。しかし家族が祝ったのは、880点だった双子の妹・梨奈だけだった。「今夜の主役は梨奈だ」。父は美空の採点表を床へ落とし、家族3人で妹の東京進学を祝う。模試で上位に入っても、参考書代を自分で稼いでも、美空の努力が認められることはなかった。その夜、美空は踏まれた採点表を拾い、自室に隠していた1通の封筒を取り出す。そこには、すでに合格していた防衛大学校からの通知が入っていた。美空は家族に何も告げず、入校を決める。そして4月1日、父の会社へ一本の電話が入った瞬間、家族が当然だと思っていた“美空の将来”が、すでに自分たちの手を離れていたことが明らかになる。親子関係2.4万字5 55 -
完結第15話
博士になった息子を「返せ」と言われた夜
春樹が博士号を取得した夜、母・ひよりは二十三年間の苦労が報われたように感じていた。 赤ん坊の頃から育て、病気の夜も、受験の日も、留学の朝も、ずっとそばで支えてきた大切な息子。けれど祝賀会の席で、夫は一人の女性を連れて現れ、残酷な真実を告げる。 「春樹は、俺と愛人との子だ」 さらに夫は離婚届を突きつけ、ひよりを家から追い出そうとする。だがその場で、春樹が静かに口を開いた。 そして明かされたのは、夫と愛人だけが隠していたはずの過去ではなかった。 二十三年前、赤ん坊だった春樹に何が起きたのか。血のつながりを超えて、最後に息子が選んだ“本当の母親”とは――。夫婦|親不孝|絶縁|親子関係2.3万字5 279 -
完結第10話
鍵をかけられた妊婦
妊娠七か月の美緒は、漏水工事のため、夫の実家で三週間だけ暮らすことになった。 最初は親切だった義母。けれど数日後から、漬物店の手伝いは少しずつ増え、母子手帳や保険証まで勝手に管理されるようになる。 医師から無理な立ち仕事を避けるよう言われても、義母は「妊婦は病人じゃない」と聞き入れない。夫に訴えても返ってきたのは、「母さんは心配しているだけ」という言葉だった。 そしてある朝、美緒が家を出ようとすると、靴は消え、玄関には外から鍵が掛けられていた。 閉じ込められた家の中で、突然お腹に強い張りが走る。 その時、美緒はようやく気づく。守らなければならないのは、家族の顔色ではなく、自分とお腹の子の命だった――。嫁姑|真実|親子関係1.6万字5 710 -
完結第10話
「洗剤を入れた嫁」にされた私
45歳の私は、助産師として夜勤をこなしながら、夫と2人で静かに暮らしていた。 そんなある日、夫から義父の認知症を理由に、義両親との同居を頼まれる。家族のためならと受け入れた私だったが、同居が始まってから、義母の態度は少しずつ変わっていった。 夜勤明けに責められ、家事を押しつけられ、身に覚えのない悪口まで夫に吹き込まれる日々。それでも夫は、いつも義母の言葉だけを信じた。 やがて私は、義父の“認知症”にある違和感を覚える。 そしてある夜、義母はついに言い放った。 「食事に洗剤を入れたでしょう!」 その嘘を信じた夫は、私に「出ていけ」と告げる。 1か月後、私は離婚届を持って、もう一度あの家の玄関に立った。 その時、義家族が本当に恐れていたものが、ようやく明らかになる――。嫁姑|夫婦|裡の顔|真相1.5万字5 185 -
完結第10話
20年後、坊ちゃんは帰ってきた
財閥家の御曹司・優人は、母を亡くした直後、新しく屋敷に入ってきた女によって濡れ衣を着せられ、わずか8歳でアメリカ留学へ追いやられる。 実の父にまで見捨てられた優人のそばに残ったのは、亡き母から「この子を守って」と託された家政婦・白石千鶴子だけだった。 行き先も学校も用意されないまま、異国の地へ捨てられた二人。千鶴子は皿洗いをしながら優人を育て、優人もまた、悔しさを胸に必死で学び続ける。 そして11年後、母が残した一冊の日記から、隠されていた資産と最後の願いが見つかる。 それからさらに時が流れ、20年後。 日本の大和グループが経営危機に陥った時、正体不明の投資家「黒札」に救いを求めることになる。 しかし彼らはまだ知らなかった。 その「黒札」こそ、かつて屋敷から追い出した少年だったことを――。人生逆転|裡切られた|真相|親子関係1.4万字5 199 -
完結第16話
出産予定日2日前、家を追い出された
出産予定日まであと2日。臨月の由美は、姑から突然「その荷物ごと出ていきなさい」と家を追い出される。助けを求めても、夫・健一はスマホを見たまま「母さんに逆らうな」と言うだけだった。11月の冷たい夜、入院バッグ1つを抱えて外へ出た由美は、3年間連絡を絶っていた父へ電話する。「お父さん……家を追い出されたの」。父は理由も聞かず、「そこを動くな」とだけ答えた。そして10分後、住宅街に黒塗りの車が5台到着する。先頭から降りた男は由美の前で深く頭を下げた。「お迎えに上がりました、由美様」。しかしその夜、病院で調べると、夫が由美の入院予約や保険、さらに出産後の生活資金まで密かに動かしていたことが判明する――嫁姑|熟年離婚2.5万字5 340 -
完結第9話
財産は長男へ――8年間介護した次男に残されたのは、古びた倉庫一軒だけだった
父・正一を8年間介護した次男の浩司。しかし遺言で、兄の裕二には家、田畑、預金、車が渡され、浩司に残されたのは荒れ果てた倉庫と、4時20分で止まった腕時計だけだった。兄夫婦に家を追い出され、娘の大学入学金82万円さえ用意できない浩司。四十九日にも仏壇へ入れてもらえず、家族で倉庫に父を供養した時、作業台の奥にある西壁から不自然な音が響く。壁の中から現れた鉄扉と巨大な金庫。父が時計に隠した暗号を解いた時、兄が見下した遺産の本当の価値と、20年前から封じられていた家族の秘密が動き始める。親子関係1.4万字5 318 -
完結第7話
義母に「車が狭いから、あなたは留守番ね」と置いていかれた私
父が遺した築43年の家で、夫・浩司と義母・和子に尽くしてきた52歳の由美子。和子の喜寿を祝う2泊3日の温泉旅行を予約し、32万円を用意したのも彼女だった。ところが出発直前、「車が狭いから留守番ね」と置き去りにされる。後部座席の見知らぬ鞄、妊婦向けプランに変えられた予約、消えた実印。夫と義母は、妊娠した若い愛人を迎え、由美子の父の家まで奪おうとしていた。しかし2人を笑顔で見送った由美子は、すでに登記事項証明書と偽造書類を揃え、静かな反撃を始めていた。嫁姑|熟年離婚1.0万字5 532 -
完結第10話
預けた通帳が消えた日
六十七歳の山田静は、膝の手術費を用意するため、息子夫婦に預けていた通帳を返してほしいと頼んだ。 しかし嫁の美香は、薄く笑ってこう言った。 「お母さん、私たちにお金なんて預けましたっけ?」 夫と二人で魚屋を営み、三十年かけて貯めた老後の資金。息子を信じて渡した通帳も印鑑も、いつの間にか静の手元から消えていた。さらに息子の健一まで、母をかばうどころか「知らない」と目をそらす。 不安を抱えた静が耳にしたのは、預金を使い切ったあと、彼女を認知症扱いして施設へ入れようとする恐ろしい計画だった。 家族を信じ続けた母が、ようやく気づいた真実。 奪われたのはお金だけではなかった。 自分の人生そのものを取り戻すため、静は亡き夫との思い出が残る藤沢へ向かい、静かな反撃を始める――。怒り|親不孝|親子関係|介護|金銭問題1.5万字5 435