"同じ部署の社員が月30万〜50万円もらう中、私の月給だけは18万円だった" 第3話
報告から消された名
私はすぐには返信せず、作業管理画面の番号と次報告を照した。73件のうち、夜対応は21件、休対応は9件。顧客側の記録には始刻、作業者ID、復旧確認をした川の承認までそろっている。
事実だけを伝えればいい。そう分かっていても、送信ボタンので指が止まった。
これまで田の指示に異議を唱えた社員は、評価をげられるか、担当からされてきた。私も2、報告に自分の名を残してほしいと頼んだ翌、契約更をちらつかされて黙った。顧客を守るためだとい込もうとしたが、本当は仕事を失うのが怖かったのだ。
私はく息を吸い、《73件はすべて野美咲が対応しました。各記録は作業管理画面で確認できます》と返信した。会社への満も、菱田への批判もかなかった。
1分、川から会議用のURLが届いた。空いている個へ入り接続すると、画面には川だけでなく、青葉通信のIT戦略担当取締役、黒田誠がいた。
3用の狭い部には換気扇のい音が響き、曇ったガラスの向こうを同僚たちのがき交っていた。私は会社のにいながら、初めて会社の許を待たず、自分がった仕事を自分の言葉で説しようとしていた。
「急に呼びして申し訳ありません。確認したいのは、野さんの会社への満ではなく、当社へ提された報告の正確性です」
広告
黒田は、都システム発から受け取った6か分の報告を画面へ表示した。73件の障害対応だけでなく、データベースの再設計、処理速度の改善、来の更計画まで、責任者欄はすべて菱田になっている。
「この設計図をいたのも野さんですか」
「はい。ただし会社の業務として作成したものですので、権利は会社と契約に従います」
私が答えると、黒田はさくうなずいた。成果を自分の物だと主張するのではなく、誰が実際に作業したのかだけを確かめているらしい。
川は、青葉通信側に残る更履歴も表示した。設計変更は142件あり、そのうち137件が私のID、残る5件は自処理だった。菱田のIDによる変更は0件。それでも都システム発の報告では、彼が全程を統括したことになっている。
「3週にお渡しした採用条件について、結論はましたか」
机ので、鞄の具に触れた。には青葉通信から届いた正式な採用通がある。3週、夜213分に起きた障害を私が40分で復旧したあと、黒田は初めて直接会いたいと言った。その、2度の面談と社内審査を経て、契約満の入社を打診されていた。
私は更条件を最まで確認してから答えたいと頼み、今まで署名を待ってもらっていた。だが、都システム発が示したのは、4と1円も変わらない18万円だった。
「お受けします。来週から、青葉通信で働かせてください」
声は震えなかった。その言葉をにした瞬、会社に残るかどうかをに決めさせていた4が、静かに終わった。
黒田は採用続きをめると答えたあと、表を引き締めた。
「もう1つ、お伝えしておきます。虚偽の疑いがある報告は、これだけではありません。当社は午、正式な監査担当者をそちらへ送ります」
「午4から、私の最終面談があります」
「承しています」
黒田は画面越しに、まっすぐ私を見た。
「その回答を聞く席に、私たちも同席します」
広告
おすすめ作品
-
完結第12話
靴磨きの少年と会長の時計
有楽町の高架下で靴を磨く18歳の佐藤蓮には、他人には聞こえない微かな機械音を聞き分ける力があった。ある日、常連客である東都ホールディングス会長・田中健三の腕時計から、機械式時計には存在しない電子音を聞き取る。留め具から現れたのは、米粒ほどの盗聴器だった。会長に請われて本社へ入った蓮は、次々と情報漏洩を防ぐが、やがて産業スパイに仕立て上げられる。300万円の入金、深夜の入館記録、捏造写真。会社だけでなく帰る場所まで奪われた少年は、古い靴箱に残した証拠を抱え、会長を追い落とそうとする陰謀に立ち向かう。職場逆転|人生逆転1.7万字5 599 -
完結第13話
「異物が入ってる!」老舗そば屋を潰した“32秒の嘘”
東京・深川で「柚香庵」を30年間守ってきた72歳の高瀬澄子。ある日、5人組の客から「そばに異物が入っている」と怒鳴られるが、正体は自家製の柚子薬味に残った種だった。ところが、男たちの目的は食事ではない。1億2000万円相当の土地を1800万円で奪うため、1分41秒の映像を32秒に切り、店主が異物混入を笑ってごまかしたように拡散したのだ。店の評価はわずか2時間で4.7から2.1へ。さらに保健所へ金属片の写真が届き、午前2時17分、閉店後の裏口に人影が現れる。30年分の信用を奪われかけた澄子は、孫とともに記録を残し始めた。職場逆転|金銭問題1.8万字5 1 -
完結第6話
会長、腕時計に盗聴器があります!
有楽町の高架下で靴を磨く18歳の佐藤蓮には、他人には聞こえない微かな機械音を聞き分ける力があった。ある日、常連客である東都ホールディングス会長・田中健三の腕時計から、機械式時計には存在しない電子音を聞き取る。留め具から現れたのは、米粒ほどの盗聴器だった。会長に請われて本社へ入った蓮は、次々と情報漏洩を防ぐが、やがて産業スパイに仕立て上げられる。300万円の入金、深夜の入館記録、捏造写真。会社だけでなく帰る場所まで奪われた少年は、古い靴箱に残した証拠を抱え、会長を追い落とそうとする陰謀に立ち向かう。職場逆転9.0千字5 176 -
完結第5話
「中卒は留守番してろ」と空港に置き去りにされた私
中卒ながら独学で資格を取り、旅行会社に中途入社した22歳の天野澪。現場経験を生かして難航していた企画を救っても、学歴を嘲る竹内部長に成果を奪われ続けていた。やがて澪は、予約困難な老舗旅館・天祥館の視察枠を獲得する。ところが出発前夜、竹内は部下を脅し、澪の航空券だけを密かに取り消した。羽田空港に1人残された澪へ届いたのは、「中卒は留守番してろ」というLINE。事情を知らず天祥館へ着いた同僚たちを待っていたのは、チェックインを認めない女将だった。なぜ女将は、不在の新人を待つのか。そして澪が保存した操作履歴と録音は、竹内の嘘をどこまで暴くのか。職場逆転8.1千字5 616