"同じ部署の社員が月30万〜50万円もらう中、私の月給だけは18万円だった" 第9話
18万円を決めた3通のメール
佐藤は、画面に映った自分の承認印を見ても、すぐにはをかなかった。会議の空調だけがく鳴り、机のでは署名されなかった18万円の更が、黒田の持参した6億4000万円の契約終通と並んでいる。
「私は、事として部からがってきた査定を承認しただけです。技術者の実績まで判断できません」
ようやくた声は震えていたが、佐藤は田を見なかった。自分は類を通しただけで、内容を作ったのは現だと言いたいらしい。
川は事査定原案の変更履歴をいた。2、報管理責任者が入力した私の評価には、《基幹保守を単独遂》《正社員基準への正をする》と記され、額30万円への変更案が添えられていた。
その3、額は18万円へ戻され、評価文も《定型な補助作業》へき換えられている。変更者は佐藤、最終承認者は田だった。
変更の資料には、に私が復旧を平均38分縮し、青葉通信から名指しで謝を受けたこともかれていた。ところが変更は、その2だけが消されている。成果を否定する根拠が加えられたのではない。与をげる理由だけが、きれいに削られていた。
「も同じです」
川が次の履歴を表示した。今度は32万円への正案が削除されていた。佐藤は唇を結んだまま、画面の自分の社員番号を見つめている。
広告
だが、額の変更だけではなかった。事共フォルダには、田と佐藤が交わした3通のメールが残っていた。
1通目には、《青葉通信には野を級技術者として配置した形で報告する》とある。顧客との員表で、私は90万円の級技術者枠に入れられていた。
2通目には、《社内では補助員のままにする。正社員扱いへ直す必はない》。送信者は佐藤だった。
佐藤は「員単価と本の与は別の話です」とで言った。もちろん、その差だけで正とは限らない。しかし顧客には級技術者として私の経験を売り、社内では経験のない補助員として評価する。そのい違いを説する資料は、どこにもなかった。
そして3通目は、今回の更面談を決めた5に送られている。
《野は顧客に迷惑をかけられない。契約を切ると匂わせれば、18万円でも更する》
読み終えた瞬、4胸の奥へ押し込めてきたものが、痛みではなく輪郭を持った。能力を見落とされていたのではない。仕事ができるとったうえで、責任まで値段をげる具にされていたのだ。
机ので指先がたくなった。鳴り返したいとはわなかった。ただ、夜の着信にび起きた回数も、技術を買うために夕を削ったも、最初から数字として利用されていたことが悔しかった。
「佐藤さん。これは部の指示に従っただけですか」
私が尋ねると、佐藤は初めて田を見た。
「田部が、菱田君を次の課候補にすると……。実績が必だから、会社のためだと言われたのよ」
「俺だけのせいにするな。与を決めるのは事だろう!」
2の声がなり、菱田は子をしずつろへ引いた。先ほどまで私を無職になると笑っていた3は、今は互いの名をにして責任を押しつけっている。
午57分、佐藤のスマートフォンが鳴った。表示された《相馬社》の文字を見て、彼女の指が止まる。
佐藤が恐る恐る通話をスピーカーへ切り替えると、相馬正志社のい声が響いた。
「田、佐藤、菱田の3名は、そのをくな。午530分から、緊急取締役会をく」
広告
おすすめ作品
-
完結第12話
靴磨きの少年と会長の時計
有楽町の高架下で靴を磨く18歳の佐藤蓮には、他人には聞こえない微かな機械音を聞き分ける力があった。ある日、常連客である東都ホールディングス会長・田中健三の腕時計から、機械式時計には存在しない電子音を聞き取る。留め具から現れたのは、米粒ほどの盗聴器だった。会長に請われて本社へ入った蓮は、次々と情報漏洩を防ぐが、やがて産業スパイに仕立て上げられる。300万円の入金、深夜の入館記録、捏造写真。会社だけでなく帰る場所まで奪われた少年は、古い靴箱に残した証拠を抱え、会長を追い落とそうとする陰謀に立ち向かう。職場逆転|人生逆転1.7万字5 599 -
完結第13話
「異物が入ってる!」老舗そば屋を潰した“32秒の嘘”
東京・深川で「柚香庵」を30年間守ってきた72歳の高瀬澄子。ある日、5人組の客から「そばに異物が入っている」と怒鳴られるが、正体は自家製の柚子薬味に残った種だった。ところが、男たちの目的は食事ではない。1億2000万円相当の土地を1800万円で奪うため、1分41秒の映像を32秒に切り、店主が異物混入を笑ってごまかしたように拡散したのだ。店の評価はわずか2時間で4.7から2.1へ。さらに保健所へ金属片の写真が届き、午前2時17分、閉店後の裏口に人影が現れる。30年分の信用を奪われかけた澄子は、孫とともに記録を残し始めた。職場逆転|金銭問題1.8万字5 1 -
完結第6話
会長、腕時計に盗聴器があります!
有楽町の高架下で靴を磨く18歳の佐藤蓮には、他人には聞こえない微かな機械音を聞き分ける力があった。ある日、常連客である東都ホールディングス会長・田中健三の腕時計から、機械式時計には存在しない電子音を聞き取る。留め具から現れたのは、米粒ほどの盗聴器だった。会長に請われて本社へ入った蓮は、次々と情報漏洩を防ぐが、やがて産業スパイに仕立て上げられる。300万円の入金、深夜の入館記録、捏造写真。会社だけでなく帰る場所まで奪われた少年は、古い靴箱に残した証拠を抱え、会長を追い落とそうとする陰謀に立ち向かう。職場逆転9.0千字5 176 -
完結第5話
「中卒は留守番してろ」と空港に置き去りにされた私
中卒ながら独学で資格を取り、旅行会社に中途入社した22歳の天野澪。現場経験を生かして難航していた企画を救っても、学歴を嘲る竹内部長に成果を奪われ続けていた。やがて澪は、予約困難な老舗旅館・天祥館の視察枠を獲得する。ところが出発前夜、竹内は部下を脅し、澪の航空券だけを密かに取り消した。羽田空港に1人残された澪へ届いたのは、「中卒は留守番してろ」というLINE。事情を知らず天祥館へ着いた同僚たちを待っていたのは、チェックインを認めない女将だった。なぜ女将は、不在の新人を待つのか。そして澪が保存した操作履歴と録音は、竹内の嘘をどこまで暴くのか。職場逆転8.1千字5 616