"「ただの用務員でしょ?」卒業式で笑われた72歳――アルバムを開いた生徒たちが泣き、校長は壇上を降りた" 第5話
がをげた相
がづくにつれ、佐藤は作業を胸のに持ち直した。
自分がへる面ではないとい、壁際をれようとする。だがは、その退をふさぐように歩で止まった。
そして、180の卒業と保護者が見つめる、腰を折ってくをげた。
「佐藤さん。30、本の徒を支えてくださり、本当にありがとうございました」
静まり返った体育館に、カメラのシャッター音が1度だけ響いた。
佐藤は慌てての腕へを添えた。
「やめてください、先。私は料をいただいて、決められた仕事をしてきただけです」
「いいえ。だから、私がをげるのです」
佐藤は事に、このを設けないでほしいと3度断っていた。自分が目てば、本来祝われるべき卒業のを奪うとったからだ。それでもアルバム委員の徒たちは譲らなかった。「佐藤さんを載せることも、自分たちが卒業までに選んだことです」とへ伝えていた。
も、そのを尊した。これは職員が用した余興ではない。卒業する徒たちが、自分たちの3に欠かせなかったを選び、その理由を自分の言葉で残すだった。
は顔をげ、教からマイクを受け取った。壇には戻らず、佐藤の隣にったまま会を見渡す。
広告
「佐藤さんの仕事は、舎の清掃、設備の点検、備品の修理、の閉です。皆さんが毎全に過ごすために、どれも欠かせません。ただ、学はい、それ以の働きを正式な言葉にしてきませんでした」
のに濡れたを最初に拭くから、取りのおかしい徒に気づく。壊れた机を直すため教へ入るから、誰の机だけが繰り返し傷つけられているか分かる。毎朝同じ刻にをけるから、昨まで笑っていた徒が急にを向いた変化を見落とさない。
教師は授業をし、成績をつける。保護者は活を支え、将来を案じる。そのどちらにも言えないことを、肩も評価権も持たない佐藤になら話せる徒がいた。
「しかし佐藤さんは、聞いた話を自分の柄にはしませんでした。必なだけ教職員へつなぎ、そのは何もらない顔で、また翌朝のをけていたのです」
青蓮は唇をかみ、岸真帆は膝ののアルバムを握り直した。何もの徒が、同じような朝をいしていた。
佐藤はへ声で言った。
「そんな派なことじゃありません。顔を覚えていただけです」
その言葉をマイクが拾った。
は、かすかに笑った。
「全徒の顔を覚え、昨との違いに気づく。それを30続けられるを、私はにりません」
保護者席で、佳代は背筋を伸ばしたままかなかった。
広告
朝、自分が「結局は用務員」とにした、佐藤は反論しなかった。反論できなかったのではなく、誰かを助けた事実を並べて自分をきく見せようとしなかったのだ。
隣のPTA役員が、膝のでアルバムを閉じた。朝は佳代にわせて笑っていた女性だったが、今は佐藤のほうを直できずにいる。佳代だけが姿勢を崩さなかったものの、組んだ指にはく力が入っていた。
スクリーンの写真が消え、黒い画面にい数字が浮かんだ。
「127」
徒たちが顔をげる。
教は壇脇に置かれた古い箱を運び、ふたをけた。にはしいものから黄ばんだものまで、代の違う封筒がぎっしり詰まっている。
は、そのうちの1通を両で持った。
「これは件数でも、徒指導の記録でもありません。30に卒業から届いた、127通のです」
広告
おすすめ作品
-
完結第20話
借金3億の旅館を継いだ私を捨てた夫の誤算
父の急逝により、43歳の真帆が引き継ぐことになったのは、信州の古びた温泉旅館と約3億円の借金だった。夫の拓也は「貧乏になる前に離婚してくれ」と冷たく言い放ち、ただ一人、17歳の息子・勇気だけが母について行くと決める。 亡き父の宿を守ろうとする真帆だったが、遺された宿日誌から夫の恐ろしい裏切りが発覚。さらに離婚協議では、16年間つけ続けた家計簿が思わぬ反撃の切り札となる。 夫に見捨てられた母と息子は、3億円の借金を抱えた旅館で新たな人生を切り開けるのか――。人生逆転|真実|孤獨|親子関係2.4万字5 62 -
完結第16話
庭付き新居に押しかける長男夫婦、引越し当日に絶句
夫を亡くした62歳の田所美津子は、長年暮らした家を売り、菜園付きの一軒家で新生活を始めようとしていた。 ところが長男の琢磨と嫁の真理亜は、相談もなく同居を宣言。「断るなら一生介護しない」と脅しまでかけてくる。 夫の葬儀で遺産を要求された美津子は、もう息子に振り回されないと決意していた。 長女の美香と密かに進めていたのは、誰にも知らせていないもう一つの引っ越し計画。 何台ものトラックを連ね、当然のように新居へ乗り込んだ長男夫婦。だが引っ越し当日、二人は思いもよらない事実を知ることになる――。人生逆転|祖父母と孫|嫁姑|親子関係|介護2.4万字5 71 -
完結第20話
「嫁には1円もやらない」義母へ、家族3人の決断
義父の死後、義母との同居を始めて十年。40歳の香織は仕事と育児を両立しながら、家事も義母の世話も一人で担ってきた。 しかし義父の法事の日、義母は親族の前で「遺産は全部娘に渡す。嫁には一円もやらない」と笑いながら宣言する。 限界を迎えた香織が「では出ていきます」と告げると、夫も五歳の息子も一緒に家を出ることを決意。 三人が去った途端、義母の生活は崩れ始める。さらに、香織が十年間隠し持っていた亡き義父のノートには、誰も知らない前田家の秘密が記されていた――。人生逆転|嫁姑|介護|金銭問題2.4万字5 545 -
完結第22話
離婚裁判で7歳の娘が見せた秘密の映像
夫の健太郎から突然離婚を突きつけられた詩音。七歳の娘・柚月の親権も、自分が貯金を出した家も奪われようとしていた。 夫が提出したのは、詩音を「母親失格」に仕立てる写真と専門家の意見書。しかし、資料の矛盾や消えた預金を調べるうちに、夫の隠された計画が浮かび上がる。 そんな中、柚月は画面の割れた古いタブレットを頑なに手放そうとしなかった。 そして裁判の日、娘が口にした思いがけない言葉。 「裁判長、ママも知らないもの、見せていい?」 七歳の娘が守り続けていた秘密とは――。人生逆転|夫婦|裡の顔|親子関係3.1万字5 273 -
完結第20話
7年伸ばした髪を妹に切られた日、婚約者まで笑った
七年間大切に伸ばしてきた髪を、妹の美緒に突然切り落とされた凛。ところが両親も婚約者の修も、泣きそうな彼女を見て笑うばかり。それどころか、凛が泣き出すまでの時間を賭けていた。 長年、家族のために自分の希望を諦めてきた凛は、ついに婚約を破棄し、遠く福岡への転勤を決意する。 だが、彼女が去ったあと、家族が遊び半分で撮影していた動画から、思いがけない事実が明らかになっていく。 失った七年間を取り戻すように、新しい人生を歩み始めた凛。彼女を笑い続けた人々を待ち受ける結末とは――。因果応報|人生逆転|嫁姑|夫婦|真相|第二の人生2.9万字5 535 -
完結第20話
夫の愛人を家に招いた義母、3日後の悲鳴
外資系製薬会社で働く藤堂桜は、夫の赤字会社と義母の贅沢な暮らしを、長年自分の収入で支えてきた。 ある日、予定より早く帰宅すると、義母が夫の愛人を自宅に招き、高級料理やワインでもてなしていた。しかも愛人の腕には、桜が夫に贈った高級時計が。 「妻の座を譲って出ていきなさい!」 そう言い放つ義母に、桜は一言も反論せず、荷物をまとめて家を出た。 しかし、彼女たちは知らなかった。豪華なタワーマンションも、贅沢な生活も、すべて桜の資金によって支えられていたことを。静かに始まった反撃が、家族の運命を大きく変えていく。人生逆転|怒り|兄弟姉妹|嫁姑|不倫2.7万字5 584 -
完結第20話
四十九日の絶縁
夫を突然亡くした三十七歳の裕子。悲しみに暮れる間もなく迎えた四十九日法要の日、帰宅した彼女を待っていたのは、ゴミ捨て場に放り出された自分の荷物だった。「息子が死んだら嫁は赤の他人よ!」そう言い放つ姑は、さらに幼い二人の子供まで裕子から引き離そうとする。だが、姑が三歳の息子だけを異常に可愛がる裏には、恐ろしい計画が隠されていた。子供たちを守るため、裕子は静かに反撃の準備を始める。そして数か月後、助けを求めて電話してきた姑に、裕子が告げた言葉とは――。人生逆転|裡切られた|嫁姑|夫婦|相続|裡の顔|介護2.3万字5 1782 -
完結第13話
俺を睨む「氷の女」が、双子の前で笑った日
妹を事故で亡くし、遺された六歳の双子を男手一つで育てる伊吹公平。仕事と育児に追われる毎日の中、彼が最も苦手としていたのは、職場で「氷の女」と恐れられる経理主任・桐谷エリカだった。ところがある日、保育園へ迎えに行った公平は、娘たちに囲まれて優しく微笑むエリカの姿を目撃する。しかも、誰にも甘えようとしなかった内気な妹・りこが、彼女の服を握って離さない。冷たい視線の裏に隠されていた意外な素顔。そして、少しずつ変わり始める三人の暮らし。孤独を抱えた大人たちと、小さな双子が紡ぐ、温かな家族の物語。人生逆転|兄弟姉妹|裡の顔|親子関係|金銭問題1.9万字5 539 -
完結第18話
離婚翌日に6億円当選、実家で弟に「居場所はない」と拒絶された私
十五年間の結婚生活を終え、四十二歳で一人になった沙耶。途方に暮れていた彼女に、突然、六億円を超える宝くじの当選という奇跡が訪れる。両親を助け、人生をやり直そうと実家へ帰った沙耶だったが、弟の健太は「この家に姉ちゃんの居場所はない」と冷たく言い放った。理由も分からず傷つく沙耶。しかし、弟夫婦が十二年間背負ってきた現実を知り、彼女の考えは大きく揺らぎ始める。さらに当選を打ち明けた夜、健太が突きつけた一言が、家族の隠してきた本音を浮かび上がらせる。六億円があっても取り戻せないものとは――。人生逆転|兄弟姉妹|親子関係|金銭問題1.8万字5 945 -
完結第10話
泥の作業着と誇り
高校卒業から十七年ぶりの同窓会。咲は、夫が農家だと話した途端、華やかな暮らしを自慢する同級生のレナから大勢の前で笑いものにされてしまう。「泥だらけの旦那なんて恥ずかしくないの?」心ない言葉に傷つきながらも、咲は「世界一自慢の夫よ」と言い返した。やがて、仕事帰りの夫・大地が泥のついた作業着で迎えに現れると、再び嘲笑が巻き起こる。しかし次の瞬間、幹事の西村が顔色を変え、夫に向かって深々と頭を下げた。誰も知らなかった大地の本当の姿が、少しずつ明らかになっていく。人生逆転|夫婦|真相|第二の人生|修羅場1.7万字5 865