"「姉は他人」と治療費を拒んだ夫――姑の救急搬送で800万円を求められた私は、通帳を閉じた" 第2話
4500万円の居
翌朝、浩司を送りすと、私はまず直子の入院する医療センターへ向かった。
病の直子は、点滴につながれたまま眠っていた。頬は青く、布団のにたは以より細く見える。そのの甲には、とスーパーを掛け持ちしていた頃にできたさな傷跡が残っていた。
私が学だった頃、毎朝弁当を作り、夜遅く帰ってから制のほつれまで縫ってくれただ。
しばらくすると、直子がく目をけた。
「由美……仕事は?」
「今は休んだの。おのことは配しないで。術も、そのの活も、私が何とかするから」
「浩司さんたちに迷惑をかけちゃ駄目よ」
自分が術を控えているのに、姉はまた私の庭を配していた。
私は笑ってうなずき、えた指を両で包んだ。浩司が姉をと呼んだことは、どうしても言えなかった。
病院をた私は、駅のへ向かった。問題の座は私名義だ。本確認を済ませ、500万円の送記録を確認すると、振込先は通帳に印字されていた通り、青葉産という会社だった。
残は300万円。
窓をれるに、過の取引細を申し込み、ネットバンキングのパスワードと登録先メールアドレスを変更した。さらに、審な送があったことを伝え、当面は追加の額送ができないよう続きを取った。
広告
自分の名をき終えた、ようやく浅く息を吐くことができた。
500万円は奪われた。しかし、残る300万円は守った。
へ戻ると、なぜか義母の子がリビングに座っていた。鍵を使って勝に入ったらしく、テーブルには級の袋としい革のバッグが置かれている。
「遅いわね。昼からどこを歩いていたの?」
「姉の病院です」
「あら、まだ助かるつもりなの」
子は元だけで笑った。
「浩司におをさせないでね。あの子の稼ぎは、これから私たち族のために必なんだから。独のまま倒れたに使う余裕なんてないわよ」
私は、真しいバッグを見た。
「素敵ですね。最買われたんですか」
子の目がわずかに揺れた。
「息子が買ってくれたのよ。母親孝の何が悪いの」
「浩司さんは、もう仕送りをしていないと言っていましたけど」
子は急にちがった。
「細かい女ね。だから浩司にも嫌われるのよ」
バッグをつかみ、逃げるように玄関へ向かう。その、ソファの脇に2つ折りのが落ちた。
子が帰ったでくと、築マンションのパンフレットだった。販売価格は4500万円。取り図の余には、浩司の字で3のメモがある。
〈彩佳 主寝〉
〈母さん 向きの〉
〈由美 来までに婚〉
指先から血の気が引いた。
私は全ページを撮し、夜まで待った。浩司が呂に入った隙に、斎の机を確かめる。
掃除のたびに目にしていた予備の鍵を使うと、最段の引きしがいた。
には青葉産との申込と、500万円の支払控えが入っていた。購入予定者は浩司。同居予定者の欄には子と鈴彩佳の名が並んでいる。
そのに、緑の用があった。
婚届だった。
浩司の署名と押印だけではない。妻の欄には、私の字を真似て「佐藤由美」とかれていた。
押されているのは、数から見つからなくなっていた私の古い印鑑だった。
浩司は私と話しうつもりなどない。
私のを使い、私の名まで盗み、ある突然、私をから消すつもりだったのだ。
広告
おすすめ作品
-
完結第18話
離婚した5日後、私が92億円の都心ビルを相続したと知った夫
父の葬儀が終わった直後、由美は夫・浩司から離婚届を突きつけられた。「介護にかまけて、社長の妻として何もしてこなかった」。さらに夫のそばには、会社の広報を担当する若い女性の姿。28年間の結婚生活を否定されても、由美は泣かなかった。父が亡くなる3日前、病室で託された銀色の鍵と、「浩司君が何を選ぶか黙って見ていなさい」という言葉があったからだ。由美が迷わず離婚届に判を押すと、夫は勝ち誇ったように去っていく。その直後、父の顧問弁護士が現れ、銀色の鍵で小さな金属箱を開こうとする。そこには、父が娘にだけ残した“最後の意思”が隠されていた――。夫婦|金銭問題2.3万字5 2693 -
完結第15話
博士になった息子を「返せ」と言われた夜
春樹が博士号を取得した夜、母・ひよりは二十三年間の苦労が報われたように感じていた。 赤ん坊の頃から育て、病気の夜も、受験の日も、留学の朝も、ずっとそばで支えてきた大切な息子。けれど祝賀会の席で、夫は一人の女性を連れて現れ、残酷な真実を告げる。 「春樹は、俺と愛人との子だ」 さらに夫は離婚届を突きつけ、ひよりを家から追い出そうとする。だがその場で、春樹が静かに口を開いた。 そして明かされたのは、夫と愛人だけが隠していたはずの過去ではなかった。 二十三年前、赤ん坊だった春樹に何が起きたのか。血のつながりを超えて、最後に息子が選んだ“本当の母親”とは――。夫婦|親不孝|絶縁|親子関係2.3万字5 569 -
完結第11話
質屋で知った夫の嘘
離婚の日、元夫・慎介は私の手に結婚指輪を握らせ、冷たく言い放った。 「売って生活しろ」 その一言を憎みながら、私は3年間、貧しい暮らしの中でも指輪だけは手放せずにいた。けれど貯金が尽き、ついに古い質屋へ持ち込んだ日、店主は指輪の内側を見て顔色を変える。 「奥様、お待ちしておりました」 そこには、私の知らない小さな印が刻まれていた。 なぜ元夫は、離婚前にこの質屋を訪れていたのか。なぜ私を突き放しながら、指輪だけを持たせたのか。 憎しみ続けた別れの言葉の裏に、3年間隠されていた真実が少しずつ明らかになっていく――。夫婦|真実|第二の人生|金銭問題1.7万字5 337 -
完結第17話
7年間介護した私を捨てた夫――愛人を連れて帰宅すると、寝たきりの母も介護ベッドも消えていた
52歳の高瀬由美は、26年間連れ添った夫・健二から離婚を切り出される。愛人と再婚するという健二は、由美に「離婚後も母の介護は続けろ」と言い放った。半年だけという約束で始めた介護は、すでに7年。毎晩2時13分に起き、仕事も人生も手放した由美を、健二は無料の介護要員としか見ていなかった。だが、認知機能の明瞭な義母・住江は、自ら施設へ移ることを決断する。離婚から3日後、愛人を連れて帰宅した健二が見たのは、介護ベッドの消えた部屋と、約2200万円について記された母の手紙だった。嫁姑|夫婦|熟年離婚2.3万字5 2 -
完結第13話
「異物が入ってる!」老舗そば屋を潰した“32秒の嘘”
東京・深川で「柚香庵」を30年間守ってきた72歳の高瀬澄子。ある日、5人組の客から「そばに異物が入っている」と怒鳴られるが、正体は自家製の柚子薬味に残った種だった。ところが、男たちの目的は食事ではない。1億2000万円相当の土地を1800万円で奪うため、1分41秒の映像を32秒に切り、店主が異物混入を笑ってごまかしたように拡散したのだ。店の評価はわずか2時間で4.7から2.1へ。さらに保健所へ金属片の写真が届き、午前2時17分、閉店後の裏口に人影が現れる。30年分の信用を奪われかけた澄子は、孫とともに記録を残し始めた。職場逆転|金銭問題1.8万字5 1 -
完結第16話
午前2時、義母に追いやられた離れ
水野由香は、脳梗塞で倒れた義父・正一を3年間支え、死後も遺品と会社書類の整理を続けていた。夫が出張へ出た夜、義母から庭の古い離れで寝るよう命じられる。午前2時、家政婦の富子が「今すぐ逃げて」と駆け込み、直後に3人の男が窓を破った。狙いは由香の実印と遺贈辞退書。逃走中に残した26秒の録音が義母の嘘を崩し、亡き義父の遺言から25%の株式と黒い手帳が現れる。そこには18件、合計3,240万円へ続く赤い線が残されていた――。夫婦|親子関係2.2万字5 24 -
完結第11話
夫から届いた23年分の請求書
23年ぶりに働き始めた51歳の晴美は、初めての給料日を少し誇らしい気持ちで迎えていた。 しかし夫の隆司が食卓に並べたのは、祝福の言葉ではなく、12枚の「生活費精算案」だった。結婚してから自分が支払ってきた生活費の半額、合計1140万円を、これから返してほしいというのだ。 家事も育児も、義母の通院も、家族の予定管理も、すべて「養われていた時間」として扱われるのか。 納得できない晴美は、自分がこの家でしてきたことを記録し始める。すると押し入れの奥から、夫が密かに動かしていた800万円の明細が見つかった。 夫が本当に隠していたものは何だったのか。 そして、23年間の夫婦生活は「借金」だったのか。 一枚の請求書をきっかけに、家族の中で見えないまま積み重なっていた不公平が、静かに崩れ始める――。夫婦|第二の人生|金銭問題1.6万字5 431