"家族席から外された弟" 第8話
でもはお義父さんの物でしょう。類へお義父さんの印が必です」
「それをなぜ私に言う」
「また、お義母さんに頼もうとしているからです」
恵理は承諾への署名をまねた責任を認めたも、兄と事業を続けていた。反省して別になったわけではない。自分の活とを守るため、次の正に巻き込まれたくないだけだった。
私は彼女の報だけで兄を問い詰めなかった。父へ連絡し、司法士へ確認するよう勧めた。父はの権利証と実印を貸庫へ移し、契約は必ず専を通すと兄へ通した。
兄から話が来た。「恵理をそそのかしたな。を壊して満か」
「壊れた原因を、らせたのせいにするな」
「おまえは自分だけ正しい顔をしている。でも父さんが倒れた、俺だって会社を辞めた。借の交渉も税の続きも、おまえは何もらなかっただろ」
その言葉は事実だった。私は厨の苦労だけを数え、兄がや取引先ので背負ったものを見ようとしなかった。だが、苦労したことはの署名を使う理由にはならない。
「兄さんがを支えた部分は否定しない。だからといって、私の名まで兄さんの物にはならない」
話の向こうで、兄はく黙った。「おまえが戻らなければ、は縮する」
「それを決めるのが経営者の仕事だ」
広告
初めて私は、兄のを理解しながら、助けに戻らなかった。
、兄は凍弁当事業から撤退した。借入が消えたわけではなく、広告会社への支払いと庫処分費が残った。《よし》本も、昼の販売をやめ、法向け配達だけに縮すると発表した。
兄はいたパート従業員のうちに、契約更をしないと告げた。久美子もそのだった。歳で、く働いた経験はあるが、しい仕事を探すのは簡単ではない。
彼女から相談された私は、すぐ雇うとは言えなかった。《さな晩ごはん》の売では、定した与を分増やす余裕がない。で約束し、仕事が減ったら切るのは兄と同じになる。
「週、ならかの期契約でお願いできる。売を緒に確認して、そのを決めたい。りないなら、ほかの仕事も探してほしい」
久美子は寂しそうに笑った。「章平さんまで、ずいぶん経営者らしい言い方をするのね」
私は胸が痛んだが、条件を面にした。久美子は持ち帰り、族と相談してから署名した。
残るにも声をかけてほしいと頼まれたが、私は断った。仕事のないを全員引き受ければ美しい話にはなるが、かに与を払えなくなる。代わりに、の就労相談と会社社の募集を調べ、本が希望しただけ紹介状をいた。
広告
は学へ移り、は介護のため求職を見送り、からは返事がなかった。助けを差ししても、相がこちらを選ぶとは限らない。その距まで尊することも、以の私にはできなかった。
彼女が加わると、製造数は増えただけでなく、私が休めるができた。私は曜の朝、澪とに乗り、妻の墓参りへった。澪はで吹奏楽を続けるか迷っていると話した。音楽できていけるわけではないと、親戚に言われたらしい。
「きていく方法は、つの仕事だけじゃない。続けるかどうかは、稼げるかだけで決めなくてもいい」
澪は笑った。「お父さん、なら『を伝え』って言った?」
「も言わないつもりだった。でも、のどこかでは期待したかもしれない」
自分がいられた役割を、善の形で娘へ渡すことは簡単だ。私は澪に、を継がなくていいと確に伝えた。伝いたいは、齢に応じたと報酬を決めるとも言った。
、労働問題の交渉がまとまった。会社は未払い分として、直の記録から算定した百万円を支払う。私が主張した全額ではなく、宅での献作成や父の通院などは対象かられた。支払いは会社の資繰りを考慮して、部を先払いし、残りを回に分けるになった。
署名を使った承諾について、兄と恵理は面で事実を認め、今私の氏名、経歴、肖像、レシピノートを広報や申請に使わないと約束した。
広告
おすすめ作品
-
完結第20話
息子が遺した証拠
長野県松本市に暮らす70歳の元宮大工・柏木源一郎は、一人息子の健太を交通事故で亡くした。しかし、慎重だった息子が居眠り運転をしたという警察の説明に、どうしても納得できない。 そんな中、同居を始めた嫁の美咲が、毎週木曜の夜に化粧をして外出し、若い男の車に乗っているという噂を耳にする。さらに息子の勤務先から、500万円の見舞金と引き換えに不可解な合意書への署名を求められる。 嫁を信じたい源一郎は、ある夜、密かに後を追う。そこで目にしたのは、息子の死につながる恐ろしい事実だった――。夫婦|親不孝|金銭問題|修羅場2.3万字5 23 -
完結第15話
三十八年目の帰る場所
六十二歳の美津子は、三十八年間、夫と娘を支え、義母の介護も一人で担ってきた。ところが海辺の実家へ二泊すると告げた朝、夫は「戻ってこなくていいぞ」と笑い、娘まで同調する。 その言葉をきっかけに、美津子は本当に帰らないことを決意する。しかし夫は「この家は俺のものだ」と激怒し、離婚まで口にした。 そんな夫の前に、美津子が差し出したのは、亡き父が残した土地の登記と三十八冊の家計簿だった。 誰にも認められなかった三十八年間の人生を取り戻す、一人の女性の静かな決断と再出発の物語。夫婦|ATM扱い|絶縁|金銭問題|熟年離婚2.0万字5 22 -
完結第20話
葬儀3日後、姑に追放された私に亡き夫からの連絡
物流センターの事故で夫・直人を突然失った41歳の美和。しかし義母の数枝は、妻である美和に夫の顔を見ることすら許さず、葬儀を強引に取り仕切る。さらに葬儀の三日後、香典三百万円以上を独占し、13歳の娘・咲と美和を雨の夜に家から追い出してしまう。 絶望の中、親友に助けを求めた美和のスマートフォンに、午前四時、信じられないメッセージが届く。 「生きてる。母には言うな」 送信者は、火葬されたはずの夫だった。 閉ざされた棺の中にいたのは誰なのか。義母が隠そうとしたものとは――。夫の事故をめぐる疑惑と家族の裏切りを描く、衝撃の逆転サスペンス。因果応報|嫁姑|夫婦|親子関係|金銭問題2.3万字5 0 -
完結第13話
三千円の温泉旅行
町内会の会計を務める68歳の森川静子は、秋の日帰り旅行を一人三千円の温泉宿に決めた。ところが、副会長の妻・矢野夫人は「貧乏くさい」と不満を漏らし、勝手に高級旅館へ行き先を変更。会長の了承を得たと嘘をつき、参加者まで誘い出してしまう。 旅行当日、矢野夫人から突然「積立金三十万円を出しなさい」と電話が。拒否した静子は、今度は会費の使い込みを疑われ、町内中に帳簿の写真を広められる。 しかし、その写真と案内状には、矢野夫人が見落とした決定的な事実が残されていた――。人生逆転|第二の人生|ATM扱い|金銭問題1.5万字5 146 -
完結第20話
貧乏と俺を捨てた元カノ、次期社長との婚約に隠された誤算
「月収四十万円で、私と結婚できると思ってたの?」七年間付き合った恋人・美香に、収入を理由に婚約を破棄された中島涼。失意の帰り道、公園で出会った風変わりな兄弟との交流が、彼の人生を大きく変えていく。物流の経験を生かして建設会社の経営改革に携わり、少しずつ信頼を築いていく涼。二年後、居酒屋で偶然再会した美香は「次期社長と結婚する」と勝ち誇っていた。しかし、彼女も婚約者も、会社で進んでいた重大な決定を知らなかった。金と肩書きで人を見下した二人を待つ、思いがけない逆転劇。人生逆転|裡切られた|真実|第二の人生|金銭問題2.9万字5 223 -
完結第20話
離婚1時間でカード5枚停止、義母の豪邸宴会が一変
九年間の結婚生活を終えた神堂美緒は、離婚成立から一時間も経たないうちに、元夫・達也らに渡していたブラックカード五枚を利用停止にした。 一方、達也と義母の和江は、十億円の豪邸まで自分たちのものになったと信じ、親戚五十人を招いて豪華な宴会を開催する。 しかし、彼らは家の本当の所有者も、カードの契約者も知らなかった。さらに、美緒の署名を使った不審な不動産取引まで発覚する。 高額な料理とワインが次々と運ばれる中、祝宴の会計で明らかになる衝撃の事実とは――。因果応報|人生逆転|嫁姑|夫婦|金銭問題2.8万字5 605 -
完結第10話
銀座の384万円
巨大企業グループの総帥という身分を隠し、平凡な専業主婦として暮らす美央。夫と義母に見下されながらも、温かい家族を夢見て五年間耐え続けてきた。 義母の誕生日、55万円の高級バッグを用意して銀座のレストランへ向かうと、義家族はすでに食事を終えていた。美央の席も料理もなく、代わりに突きつけられたのは384万円もの請求書。 「会計はあなたが払って」 その言葉に、美央は静かに微笑んで店を去る。しかし義家族はまだ知らなかった。自分たちが誰を敵に回したのかを――。因果応報|人生逆転|嫁姑|夫婦|金銭問題|修羅場1.6万字5 1870 -
完結第20話
山奥の身代わり花嫁
29歳の水野美緒は、幼い頃から姉ばかりを優遇する両親のもとで、家事と仕事に追われる日々を送っていた。 ある日、姉が見合いの直前に逃げ出し、美緒はその身代わりとして山奥の男に嫁ぐよう命じられる。逆らえば家にも戻れない。古い鞄一つで送り出された美緒だったが、たどり着いた先は想像もしなかった大きな屋敷だった。 しかも門が開いた瞬間、使用人たちが深々と頭を下げ、「お帰りなさいませ、奥様」と迎えた。 まだ結婚の返事すらしていない美緒を、なぜ彼らは待っていたのか。そこには、家族が隠していた縁談の秘密があった。人生逆転|兄弟姉妹|第二の人生|親子関係2.8万字5 1146 -
完結第15話
親族会議で追放された妻――翌朝、七枚のカードが全停止
七年間、夫の翔平と宮田家を陰で支え続けてきた神崎紗良。しかし親族会議の席で、夫から突然離婚を宣告される。 「慰謝料も財産分与もなし。一円も持たずに出ていけ」 義父母や親戚からも見下された紗良は、反論することなく離婚届に署名し、屋敷を去った。 ところが翌朝、翔平の七枚のブラックカードがすべて使えなくなる。続いて二軒の豪邸に届く契約終了通知、銀行からの融資見直し。 実は宮田家の誰も、紗良の本当の正体を知らなかった。九十九件もの着信を重ねた元夫が、最後に突きつけられる真実とは――。裡切られた|嫁姑|夫婦|金銭問題1.9万字5 578 -
完結第20話
愛人が妊娠、離婚を迫る夫が私の退職に大慌て
十年間、夫・徹が経営する武田工業を営業部長として支えてきた44歳の百香。ある夜、夫から突然、29歳の女性社員を妊娠させたと告げられ、離婚を迫られる。 さらに夫は、離婚後も会社で働き続け、愛人の子供の世話までしてほしいと言い出した。 呆れ果てた百香は離婚と退職を決意するが、親友の弁護士から驚くべき証拠を渡される。そこには、愛人が会社の裏で進めていた巨額の不正が隠されていた。 十年の献身を踏みにじられた妻が仕掛ける、痛快な逆転劇。怒り|夫婦|金銭問題|不倫2.3万字5 767