"消印は失踪の3日後" 第4話
樺園は2003に運営法を変更し、現は「しらかばケアセンター」として営業していた。現の理事は、当の会計資料は残っていないと説した。
だが、25から勤務している元介護士が1いた。
井節子という女性だった。
拓と野寺が会いにくと、節子は最初、の郵便物について何もらないと答えた。しかし4枚の留受領証を見せた瞬、目を伏せた。
「この印鑑に見覚えがありますね」
野寺が尋ねると、節子はさくうなずいた。
「事務に置かれていた共用の印鑑です。名の違う留でも、これを押せと言われていました」
「誰に?」
「当の施設です。役所への続きが終わるまで預かるだけだと説されました」
元施設の岐昌はすでにくなっていた。だが彼の息子、岐孝之は当、峰町役の福祉課に勤務していた。
親子が協力すれば、入居者がくなったあとも届けを遅らせ、や付を受け取り続けることができた。
正はだけではなかった。
帳にある者のうち3は、にを売却した記録があり、2は融関から融資まで受けていた。誰かが者の戸籍と印鑑を利用し、別として続きをしていた能性があった。
真紀は、郵便物を通してその異常に気づいたのだ。
その夜、拓は父の部を調べた。
広告
本に無断で私物を見ることには抵抗があったが、信吾は母の失踪についてらかに何かを隠していた。
押し入れの奥から、若いころに使っていた具箱がてきた。には錆びた京錠の鍵と、19961118の付が入ったレシートがあった。
購入した品は、女性用の黒い靴と紺の子だった。
は旧栃バスからで20分ほどの所にあった。
さらに具箱の底から、当の峰運輸が使用していた作業報が見つかった。信吾は会社の研修に参加していたはずなのに、18の午10から翌朝1まで、社用トラックの記録が残されていた。
目の欄は空だった。
拓は父を居へ呼び、レシートと鍵を並べた。
「母さんの子と靴を、原に置いたのは父さんだね」
信吾は何も言わなかった。
「研修会のあと、会社のトラックでバイクを運んだ。違うの?」
しばらくして、信吾は震えるでレシートを取った。
「あの夜、真紀はに帰ってきた」
拓は言葉を失った。
「おが寝たあとだ。裏から入ってきた。だらけで、ひどく怯えていた。でも、けがはしていなかった」
警察と町の々が川を捜していた、真紀は自宅にいた。
信吾は妻をかくまったあと、自ら郵便バイクをバスへ運び、子と靴跡を原に残していた。
「母さんは、どこへった?」
拓が詰め寄ると、信吾は顔をげた。
広告
「俺が樺園へ連れていった」
1118の夜9すぎ、信吾が会社の研修から帰宅すると、真紀は裏のにっていた。制のに見慣れないコートを着て、郵便鞄を胸に抱えていた。
8歳の拓はすでに眠っていた。
真紀は夫に、樺園でわれていることを説した。した入居者の届けが図に遅らされ、や付が引きされていること。さらに、部の者の名が別へ渡され、座や取引に使われていること。
彼女は施設の会計係から証拠を受け取る約束をしていた。
「会計係って、誰?」
「岸絵里という若い女性だ。真紀が配達のときにりったらしい」
真紀はそのの午、絵里から類を受け取るため樺園へ向かった。しかし面会所に絵里は現れず、施設の岐昌に呼び止められた。
岐は真紀が何を調べているかっていた。
彼は、信吾が峰運輸の仕事で樺園の荷物を運んでいたことを持ちした。警察へ話せば、夫も共犯者として逮捕され、拓は両親を同に失うと脅した。
「父さんも、正をっていたの?」
「全部はらなかった」
信吾はそう言ったが、すぐに首を振った。
「いや、それは言い訳だ。んだ入居者の具や荷物を、何度もの空きへ運んだ。変だとはっていた。でも会社の命令だと言われ、確かめなかった」
峰運輸の社は岐と親しく、樺園から定期に仕事を受けていた。
広告
おすすめ作品
-
完結第23話
白線の先の女たち
昭和三十九年、女子競輪が終わりを迎えようとしていた。三十四歳の佐伯久美子は、最後の地元決勝で優勝する。しかし彼女が真っ先に求めたのは、花束でも拍手でもなく、次の出走表だった。返ってきたのは、もう走る場所はないという答え。そんな久美子の前で、十九歳の新人・夏子は「私は来年も勝ちたい」と訴える。仕事、家族、怪我、そして失われた競走の舞台。走ることを諦められない女たちは、それぞれの暮らしを背負いながら、新しい一歩を探し始める。時代|歴史|昭和|ミステリー3.0万字5 147 -
完結第15話
姉の身代わりで嫁いだら、冷酷当主の本命でした
家族に冷遇され、姉の身代わりとして“冷酷な当主”のもとへ嫁がされた澄乃。しかし初対面で、偽りの花嫁だと見抜かれてしまう。 追い返される覚悟をした澄乃に、静は「お前で構わない」と告げる。さらに帳簿を読む彼女の才能と、恐れながらも嘘をつかなかった誠実さを認めていく。歴史|昭和|ミステリー|夫婦|第二の人生2.0万字5 610 -
完結第12話
雨宮停留所の黄色い傘
私は六十二歳。幼いころから、ときどき人には見えない姿や声を感じることがある。 山梨の小さな町で叔母の家を片づけていたある雨の日、廃止された停留所の水たまりに、黄色い傘を差した少年が映った。 そこで出会った老女は、四十年近く前に失踪した息子を今も待ち続けているという。 「まだ帰れない」 少年が残した言葉を手がかりに調べ始めると、破り取られたバスの運行日誌、隠された手紙、そして家族が長年伏せてきた秘密が浮かび上がる。 あの少年は、いったい何を伝えようとしているのか。日常ホラー|ミステリー|真相|親子関係2.2万字5 148 -
完結第13話
疎開から戻った娘が、再び村へ帰りたがった理由
昭和二十年の秋。戦争で夫と家を失った文江は、集団疎開から戻った十二歳の娘・幸子と、焼け跡の東京でようやく再会した。 ところが三日後、娘は突然「あの村へ帰りたい」と言い出す。母との暮らしを喜んでくれると思っていた文江は、深く傷ついた。 やがて娘の行李から見つかった一通の手紙。そこには、長野の農家で暮らす九歳の少女・千代との、切実な約束が隠されていた。 自分たちの生活さえ苦しい母娘は、その約束にどう向き合うのか。戦後の厳しい暮らしの中で、家族の絆と本当の居場所を見つめ直す、心温まる物語。時代|歴史|昭和|ミステリー|親子関係2.8万字5 158 -
完結第10話
13年前に消えた娘が、元隣人のSNSにいた
2009年、自宅から忽然と消えた四歳の娘・くるみ。母のえみは、娘の部屋を十三年間そのまま残し、帰りを待ち続けていた。 失踪から十三年後、元隣人のSNSに十七歳の少女が写る。成長した娘に似た顔、同じ三日月形のあざ、そして少女の名前も「くるみ」だった。ミステリー|夫婦|真実|真相|親子関係1.6万字5 231 -
完結第16話
雪の空港で消えた四人と第七格納庫
1989年のクリスマスイブ、北海道の空港から四人の客室乗務員が姿を消した。車には荷物と靴だけが残され、手掛かりのないまま35年が過ぎる。 2024年、解体中の旧格納庫で隠し部屋が発見され、事件は再び動き始めた。浮かび上がったのは、空港内部を熟知し、彼女たちを密かに監視していた元整備士だった。ミステリー|真実|真相1.9万字5 1158 -
完結第14話
七年後、屋上で見つかった妻の秘密
1993年、鹿児島。自治会の帳簿を整理していた主婦・ミキは、過去の火災復旧費に不自然な水増しを見つける。調査を始めた直後、彼女は遺書とバッグだけを残して姿を消した。 投身とされた事件から七年後、マンション屋上の封鎖された旧貯水槽から、ミキと一致する人骨が発見される。ミステリー|真相|行方不明2.1万字5 380 -
完結第13話
成人式に消えた母と十三着目の振袖
2014年の成人式当日、貸衣装店から母・奈津子が消えた。店の960万円もなくなり、共に姿を消したカメラマンとの逃避行が疑われる。娘の紗季に残されたのは、「今日は署名をしないで」という謎のメモだけだった。 10年後、閉店する店の倉庫から、記録にない「13着目の振袖」が見つかる。その裾には、若い女性たちの名義で作られた高額ローン契約書と、母が隠した証拠が縫い込まれていた。ミステリー|真実|行方不明2.3万字5 350