"夜逃げ社長に捨てられた4人" 第3話
は即座に答えた。
「黒田のところにいたより、ずっといい」
凛が目を丸くした。
「は黒田の指示通りに直しすぎて、おの良さが消えてた。板は目てばいいわけじゃない。の雰囲気とって初めて、そこにあるがる。これはちゃんと町を見て描いてる」
凛はしばらく何も言わなかった。それから、さく「ありがとうございます」と言った。
その夜の夕は、もやし炒めと噌汁だけだった。4とも採用の連絡が続いていたため、いつもなら話し続ける奈まで静かだった。
箸を置いた真希が、突然をいた。
「沢さん。つ提案があります」
「何だ?」
「この4で、板を始めませんか」
奈の箸が止まり、凛が顔をげた。
真希は冗談を言っている顔ではなかった。
「このの1階を兼事務所にすれば賃は増えません。沢さんには20の技術がある。凛にはデザインができる。奈は経理、私は営業ができます。の会社で4揃っていた、黒田がやっていたのは最の契約との管理くらいでした」
はすぐに否定しようとした。しかし言葉がなかった。
なぜなら、真希の言っていることが完全な物語ではないと分かってしまったからだ。
「板を始めるって簡単に言うけど、客がいないだろ」
翌朝、は真希に改めて言った。具も材料も分ではなく、そもそも事業を始めるための運転資がほとんどない。
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活費さえ切り詰めている状態で、仕事が取れる保証のない独に賭けるのは無謀にえた。
「保証なんてありません」
真希はあっさり答えた。
「でも、就職活を続けて全員の貯がなくなるまで待つより、今ある技術を使って度だけ試す価値はあるといます。失敗したら、そのにまた考えればいい。座って何もできなくなるよりはましです」
奈も賛成した。
「私は会社を作る続きとか税とか調べます。いきなり法じゃなくても、まず個事業として始める方法はありますよね」
凛はし迷っていたが、「私もやりたいです」と言った。
3の線を受け、はの名をいした。
商で魚を営む筒井だった。
黒田芸代、筒井のの製板をが作り直したことがある。納品に「黒田は嫌いだが、おの仕事は好きだ」と豪に笑われたのを覚えていた。
話をかけるまでに10分以かかった。
「もしもし、沢です」
「おう、か。黒田の野郎が逃げたって本当か?」
筒井は事をすでにっていた。
は余計な見栄を張らず、4でさく仕事を始めようとしていることを話した。
「テストで構いません。何かつ、仕事をもらえませんか」
話の向こうで、筒井がし黙った。
「ちょうどいいや。隣の居酒が改装して来するんだ。
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板を頼む相を探してた。おの腕はってるから、紹介してやる」
話を切った瞬、のは震えていた。
「取れた」
その言で、奈が「本当ですか」と声をげ、凛は両で元を押さえた。真希だけは腕を組んだままだったが、その顔にはらかな堵が浮かんでいた。
依頼されたのは、さな居酒の製板だった。裏にあるなので、派に目つものではなく、「初めて通りかかったでもし入りやすくなる雰囲気にしたい」というのが主の希望だった。
真希が聞き取った内容を凛が図案へ落とし込み、が素材と加方法を考えた。奈は残りない資から材料費を計算し、作業まで含めて赤字にならない額を割りした。
最初の図案を見た、は凛の才能を改めてじた。簾をわせる曲線のに名を置き、照が落ちても文字が潰れないよう余を取っている。夜のでどう見えるかまで考えられたデザインだった。
納品の、主は完成した板を数秒黙って見げた。
「これだよ」
やがて満面の笑みを浮かべた。
「俺が欲しかったの、こういうのだよ。自分じゃ説できなかったけど、のじがそのまま板になってる」
帰宅した4は、コンビニで買った番い缶ビールを本ずつけた。
売から材料費を引けばした額は残らなかったが、黒田が消えて以来初めて、自分たちの力で稼いだだった。
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