"夫の実家は空き家だった" 第1話
私は若菜、32歳。
川を渡れば埼玉という京の端にある2DKの賃貸マンションで、3歳の夫・裕介と暮らしている。裕介は産業器メーカーのシステム管理部に勤めており、私も同じ会社の企画管理部で働いているから、いわゆる職結婚だった。
自分でこんなことを言うのは好きではないけれど、私は子どもの頃から容姿を褒められることがかった。「いね」「美だから得でしょう」と、何度言われたか分からない。けれど私にとって、それは必ずしも嬉しい言葉ばかりではなかった。
顔がっているというだけで、勝に性格まで決めつけられることがある。
「若菜は美だから私たちの気持ちなんて分からないよ」
「どうせ男のに困ったことなんてないでしょう」
「彼氏を取られそうで嫌だ」
学代、そんなことを言われた経験は度や度ではなかった。私は誰かの恋を奪ったことなどないし、らない男子が私に好を持っていたからといって、責任の取りようもなかった。
そのうち私は、とく関わることそのものが怖くなった。
どうせを見てもらえない。
どうせ見だけで判断される。
そう諦めかけていた代、私のに現れたのが川だった。
は、初対面から烈だった。原のを平気で組みわせ、髪には何ものカラーを入れ、きなピアスやっぽいアクセサリーをじゃらじゃらつけていた。
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「若菜って、せっかく顔ってるのにだね」
最初にそう言われた、また同じ種類のかとった。ところが彼女は私の反応など気にせず、自分の派なネックレスを指でつまんで笑った。
「私みたいな格好してると、変な男が寄ってこなくて楽なんだよ。若菜なんてもっと変でしょ」
それまで誰にも理解されなかった部分を、彼女はあっさり言葉にした。
私が何も答えられずにいると、はさらに続けた。
「ちなみに私は顔より、より筋肉。ラグビー選みたいな男が好き」
わず笑ってしまった。
そのから、私たちは親友になった。
には妙な嫉妬や慮がなかった。「嫉妬はするよ。私より面い脚本をくにはめちゃくちゃする」と堂々と言うだったから、かえって信用できた。
卒業、私はアパレル会社へ就職した。事務職を希望していたのに販売部へ回され、最初のうちはが好きだったこともあり、それなりに楽しく働いていた。
けれど数すると、また同じことが始まった。
「若菜さんは顔で売れてるだけ」
「美は得よね」
司から何度も事へ誘われ、断り続けたら骨に勤務シフトを減らされたこともあった。
27歳になった、私は転職を決めた。
次に選んだのは、産業器を扱うメーカーだった。接客より資料作成や調業務がで、の職よりずっと静かだった。
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そこで会ったのが裕介だった。
最初の印象は、無でし寄りがたいだった。
入社直、私のパソコンが社内ネットワークにつながらなくなった、システム管理部からやって来たのが裕介だった。彼は私の横にしゃがみ込み、専用語をほとんど使わず、つつ確認しながら設定を直してくれた。
「これで丈夫だといます。もしまた同じ症状がたら、この番号に連絡してください」
それだけ言ってちった。
私の顔を見て余計なことを言わない。必以に親切ぶらないし、無でもない。
その距が妙によかった。
からったが、裕介は会社帰りに週3回ほどジムへ通っていた。肩幅が広く、スーツのからでも分かるくらい体を鍛えていて、に写真を見せると「筋肉格」との分からない判定をされた。
けれど私が惹かれたのは、そこではない。
裕介は、の容姿についてほとんど何も言わないだった。
同僚が誰かの体型や顔を笑っていても加わらず、むしろ自然に話題を変えていた。私に対しても「美ですね」などと言ったことが度もなく、私は初めて、最初からを見てもらえているような気がした。
交際が始まったのは、入社して半ほど経った頃だった。
昼休みに廊で会えば緒にコーヒーをみ、仕事のさな愚痴を話す。
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