"1800円の御膳が1万8000円になった日――覆面社長が見つけたホテルの嘘" 第9話
2097万6000円の責任
「その制度を作ったのは、私です」
私がそう認めると、張りつめていた内にい沈黙が落ちた。藤堂は瞬だけ目を見き、すぐに元を歪めた。
「ほら見ろ。やはり元凶は本社じゃないか」
「ええ。数字だけで舗を評価し、異常を3見抜けなかった責任は私にあります」
私は榊原からタブレットを受け取り、画面を藤堂のへ向けた。請求の被害額は837万6000円。実体を確認できない青葉クリーンサービスへの支払いは1260万円。性質の違う2つの疑惑を計すると、2097万6000円になる。
その数字をにした途端、昼にべた炊き込みご飯のが蘇った。料理は1800円の御膳を丁寧に作り、料を得るために汗を流していた。その同じ建物で、藤堂は客から10倍のを奪い、実体の見えない会社へ毎を送っていた。2097万6000円は、単なる集計結果ではない。客の恐怖と、現の努力を踏み台にして積みげられた数字だった。
「私の責任は、私が取ります。役員会への報告も、被害者への謝罪も、評価制度の見直しもう。しかし、それであなたが客を脅し、現を抜き、妻の会社へを流した事実が消えるわけではありません」
藤堂の笑みが消えた。額から流れた汗が頬を伝ったが、拭おうとはしなかった。
私はそので、問題の利益率ランキングを凍結した。18舗すべてに対し、過3分のアンケート、POS履歴、注費、管理者IDの操作記録を保全するよう指示する。
広告
般従業員の与や宿泊客へのサービスは止めず、このレストランだけを臨休業とした。
同に、各の支配が単独で評価を削除できる設定も止した。これまで本社は、支配を信頼するという名目で広い権限を渡し、最終な数字だけを見てきた。藤堂はその隙を利用したが、隙を3放置したのは本社である。自分の失敗まで部へ押しつければ、私も目のの男と変わらなくなる。
午524分、厨では事をらない料理たちが翌の仕込みを続けていた。だしのりが残る方、客席では監査担当者がレジや庫へ封印票を貼っている。真面目に働いてきたまで突然職を失うような処理は避けなければならない。それもまた、社である私の責任だった。
全舗から届く保完の通を確認しながら、榊原が言った。
「同じような削除の集は、今のところこの舗だけです。503件の削除操作には、すべて藤堂支配の管理者権限が使われています」
「私が操作したとは限らない。パスワードをっているはにもいる」
藤堂が井へ鋭い線を投げた。井は肩を震わせたものの、今度は目をそらさなかった。
「支配は毎、評価がい回答を覧にして、私たちので削除していました。削除が終わるまで、事務からるなと言われたこともあります」
「証言だけでは証拠にならない!」
「だから、証言だけで処分を決めるつもりはありません」
野が、操作刻と防犯カメラの映像を照すると告げた。会社が管理するデータを保し、関係者から別々に話を聞く。藤堂が最も嫌っていたのは、声ではなく、逃げが1つずつ数字で塞がれていくことだった。
その、事務の固定話が鳴った。
表示された発信者名は、青葉クリーンサービス。野が録音することを確認し、スピーカーへ切り替える。受話器の向こうから、焦った女性の声が流れた。
「あなた、支払いが止められてる。どういうこと? 言われたとおり、帳簿は全部処分したのに」
藤堂の顔から、最の血の気が引いた。
広告
おすすめ作品
-
完結第20話
同窓会で頭取の娘に脅された俺、300億を全額解約
卒業から24年、150人が集まる同窓会に出席した堀口弘樹。質素なスーツ姿を見た銀行頭取の娘・久我エリは、高校時代と同じように彼を見下し、「パパに頼んで取引を打ち切ってもらう」と脅してきた。 しかし、弘樹の正体は年商2100億円の物流グループを率いる創業社長。東王銀行には300億円を超える預金があった。 「じゃあ、全部解約で」 翌日、銀行から100件もの電話が殺到する。だが、弘樹と頭取の間には、20年前の知られざる恩義があった。彼が最後に下す決断とは――。職場逆転|因果応報|第二の人生2.7万字5 3016 -
完結第10話
拾った財布で泥棒扱い――5万円の濡れ衣と反撃
九歳の娘を育てながら、商社の経理部で働く森田咲。ある朝、会社のロビーで財布を拾い、管理員立ち会いのもと持ち主の女性主任へ返却した。 ところが直後、主任が突然押しかけてきた。 「財布に入っていた五万円がない! あなたが盗んだんでしょう!」 同僚の前で泥棒扱いされ、母子家庭であることまで侮辱された咲。しかし彼女は取り乱さず、一枚の受領書を取り出す。 証拠によって反撃を始めた咲だったが、会社はなぜか彼女を重要業務から外してしまう。やがて、財布の紛失騒動の裏に隠された別の疑惑が浮かび上がり――。職場逆転|裡切られた|裡の顔|金銭問題1.8万字5 1079 -
完結第23話
昭和53年、満員の始発を止めた運転手――その後、坂道で起きた悲劇
昭和53年7月30日。沖縄の交通が右側通行から左側通行へ切り替わった朝、55歳のバス運転手・新垣清徳は、32人の乗客を前に始発の発車を拒んだ。用意された旧型バスは、乗降口が車道側に開く危険な車両だったのだ。しかし欠便を恐れる主任は、若い運転手にその車を出すよう命じてしまう。やがて坂下から届いたのは、一人の少年が負傷したという知らせ。なぜ危険だと分かっていたバスが走ったのか。清徳は息子や同僚たちとともに、事故の責任と、誰も気づかなかった道路の危険に向き合っていく。職場逆転|時代|歴史|昭和|裡の顔3.0万字5 491 -
完結第10話
亡霊の専属運転手
かつて海外の特殊部隊で「ファントム」と恐れられた神代美央は、戦場を離れ、平穏な人生を求めて大企業の会長専属運転手に応募した。しかし最終面接で待っていたのは、「女に会長を守れるわけがない」と嘲笑する副社長と、十一人の屈強な男たち。美央だけが、彼らのスーツの下に隠された拳銃に気づいていた。やがて現れた鷹司会長は、美央の履歴書を見た途端、激しく震え始める。職場逆転|真実|真相|第二の人生1.5万字5 877 -
完結第16話
四万円を断った朝
同僚に裏切られ、二千万円近い借金を背負った大橋拓人。再就職の面接へ向かう朝、雨の道路でパンクした車を見つけ、遅刻を覚悟でタイヤを交換する。女性から差し出された四万円を断り、代わりに面接先まで乗せてもらった拓人。しかし会社に到着すると、受付の社員たちが彼女に深々と頭を下げた。職場逆転|人生逆転|真相|修羅場2.5万字5 1389 -
完結第14話
十八年勤めた売り場を追われた日、恩返しが始まった
十八年間デパ地下を支えた契約社員・千鶴は、新店長から「高齢者の代わりはいくらでもいる」と突然解雇される。 だが、毎週安い弁当を買う老人の正体は、大手食品会社の会長。かつて倒産寸前だった彼の弁当を世に広めた恩人こそ、千鶴だった。職場逆転|退職金|金銭問題|修羅場1.9万字5 2566 -
完結第20話
路線バスで来た父を笑った婚約者一家の誤算
娘の顔合わせに路線バスで訪れた庄三は、相手の両親から「車も持てない乞食」と嘲笑される。婚約者まで黙って見ていたため、庄三はわずか五分で破談を告げた。 しかし庄三の正体は、県下一の交通グループを一台の中古バスから築いた創業者。翌日、社運を懸けた大型工事のコンペ会場で、相手親子は上座に座る庄三と再会する。職場逆転|人生逆転|第二の人生|金銭問題2.6万字5 4197 -
完結第21話
賞与0円を告げられたので、会社を辞めてイタリアへ
十七年間、海外調達を支えてきた玲奈に言い渡された年末賞与は、まさかの零円。評価は最高ランクのまま、翌年も重要なイタリア案件を任されていた。会社は住宅ローンを抱える彼女なら、どんな扱いをしても辞めないと考えていたのだ。 玲奈は怒鳴らず、記録を残して退職届を提出。家と車を手放し、亡き母の言葉に背中を押されてイタリアへ渡る。 ところが彼女の退職後、強引な一律値下げ交渉によって工房との信頼関係は崩れ、大型案件まで危機に陥る。三か月後、玲奈の携帯には人事、部長、社長から合計三百十二件もの着信が残されていた。職場逆転|第二の人生|金銭問題2.8万字5 3976 -
完結第11話
赤提灯から始まる逆転
濡れ衣を着せられ、会社を追われた天才技術者・鈴鹿行。半年かけて開発したセキュリティシステムを上司に奪われ、4500万円の損害賠償まで突きつけられた彼は、すべてを失った雨の夜、居酒屋で無銭飲食を疑われた老人の代金を肩代わりする。 翌日、上司が反社会的勢力と結び、システムを横流ししようとしていた事実が発覚。後輩まで人質に取られ、鈴鹿が追い詰められた瞬間、一本の電話が入る。 「十秒後に車が来る。迷わず乗れ」 現れた黒塗りの高級車に乗っていたのは、昨夜の老人だった。その正体は、鈴鹿の会社を傘下に持つ巨大企業グループの創業者。上司が盗んだシステムを自分の成果として披露する役員会で、二人はすべてを覆す反撃を仕掛ける。職場逆転|裡切られた|怒り|第二の人生1.6万字5 1030 -
完結第18話
ただの経理パート
「君の仕事は誰にでもできる。今日で辞めてもらう」 結婚二十八年。夫は社員全員の前で、私を“週三日の経理パート”として解雇した。 代わりに経理責任者となったのは、夫が連れてきた三十四歳の女性顧問。 私は退職届に署名せず、会社の鍵だけを置いて帰った。 ところが翌朝、売上の六割を占める主力取引先三社が、一斉に新規発注を停止した。 夫は私の報復だと騒いだが、通知に書かれていた理由は―― 《安全監査資料の重大な欠落》 新しい顧問が、都合の悪い事故記録を削除していたのだ。 さらに調べると、私は会社案内だけでなく創業者名簿からも消され、二千万円を出資した記録まで書き換えられていた。 役員を外す書類に残された私の署名。 その作成日、私は手術を受け、病院から一歩も出ていなかった。職場逆転|夫婦1.8万字5 487