"母親ではないと言われた日" 第2話
俊は困ったように私を見た。いつもなら、母親に謝らせる代わりに私へ理解を求める顔だった。
私は学へ、今の変更は俊本と私の双方へ確認してもらうよう依頼した。先は、迎えに来られるを事登録制にし、登録のには子どもを引き渡さないと説した。
そのの午、は鍵でへ入っていた。台所には煮物が並び、理子のランドセルはなかった。
「理子はどこですか」
「英語教よ。体験へ連れていったの」
理子は曜、友と図館へく約束をしていた。は「遊ぶより勉が事」と予定を変え、謝の申込まで持ち帰っていた。
夕方、理子は無言で帰ってきた。夕、は「英語は将来役につ。織さんもが好きだった」と話し続けた。
「私は英語教にきたいって言ってない」
理子が言うと、は微笑んだ。
「今は分からなくても、になれば謝するわ。あなたのお母さんなら、きっと同じことを言う」
理子は箸を置いた。
「おばあちゃんは、お母さんが何を言うか全部分かるの?」
の笑みが消えた。くなった織は姑の娘ではなく、俊の最初の妻だった。はの織と仲が良かったと話すが、私がる写真のでが並ぶものはない。
「織さんは理子を切にしていたもの」
「佳奈恵さんも切にしてるよ」
広告
理子が初めて私の名をした。は「子どもにはの事が分からない」と返した。
その夜、理子は図館へけなかったことを友へ謝った。私は英語教を断ると伝えたが、理子はしなかった。
「また、おばあちゃんが勝に決めたら?」
「次はかなくていい」
「でも、お父さんはおばあちゃんに逆らうとかわいそうだって言う」
夫が娘にまで同じ言葉を使っていたことを、私は初めてった。
理子の予定表を確認すると、私のらない予定は英語教だけではなかった。翌には子ども向け模擬試験、その次の週には私の説会がかれていた。俊は母親から聞いていたが、理子が嫌がるとい、私にも娘にも黙っていた。
「嫌がるなら、なおさら先に聞くべきでしょう」
「度けば気が変わるかもしれない。選択肢を増やすだけだよ」
夫はそう言った。けれど、断る会を与えず連れていくことは選択肢を増やすことではない。が用しただけを、断りにくい形で歩かせることだった。
私は理子と緒に、今参加してよい予定と断る予定を理した。模擬試験も説会も、興があればから自分で申し込める。が支払った費用は、理子の責任にしないと決めた。
俊は母へキャンセルを伝える話をかけるまで、何度もため息をついた。
広告
話の、「母さんは泣いていた」と私へ言ったが、理子には聞かせなかった。ようやく夫が、母親のを子どもへ運ぶ役目を度止めた。
との話しいは、曜に自宅でった。俊の姉・奈津子も呼ばれていた。が「佳奈恵さんに孫をざけられている」と相談したためだ。
奈津子は最初、母親をかばった。
「お母さんは暮らしで、理子だけがきがいなの。しくらい頼ってあげてもいいでしょう」
私は緊急連絡先と英語教の件を説した。鍵で入ること、理子の予定を変えること、私を実母と比べないことをやめてほしいと伝えた。
「私は比べていません。くなったを忘れないようにしているだけ」
は涙を浮かべた。
「織さんがくなった、私は理子を引き取ろうとった。それなのに俊は、すぐしい女をへ入れた」
「再婚は半だ」
俊が訂正したが、母親へ鍵を返せとは言わなかった。
理子は階にいるはずだった。ところが話しいの途、青いノートを抱えて居へりてきた。
「これを読んで」
ノートは学の宿題用ではなかった。表には《勝に決められたこと》とかれている。
最初の付はだった。《おばあちゃんが髪をく切る予約をした。私は伸ばしたかった》《佳奈恵さんに言うと喧嘩になるから黙れと言われた》。
その次には、習字、期講習、ピアノの発表会で着る、友の誕会を断ったまで記録されていた。
広告
おすすめ作品
-
完結第18話
結婚初夜、義母を助けた私を殴った夫の誤算
結婚初夜、夫の実家で義父が義母の首を絞める現場を目撃した公認会計士の直美。助けようとした彼女を、信じていた夫・翔太は平手打ちし、「見て見ぬふりを覚えろ」と命じた。直美は義母を病院へ運ぶが、夫一家は弁護士と金の力を使い、彼女の口を封じようと動き始める。そんな中、義母が密かに託していた記憶装置が見つかった。嫁姑|絶縁|親子関係|介護2.6万字5 220 -
完結第25話
母との同居後、妻が倒れた――医師が私だけ呼んだ理由
父を亡くした春樹は、一人暮らしの母・節子を心配し、妻の夏美と三人で暮らし始める。家事も母の通院もこなす妻を見て、同居はうまくいっていると思っていた。ところがある朝、夏美が突然倒れ、救急搬送される。医師に一人だけ呼ばれた春樹は、妻の体に起きていた異変を知らされる。変更された婦人科の予約、開かれなかった白い封筒、妻に任せきりだった家の用事。自分は家族を守っているつもりだったのに、何を見落としていたのか。人生逆転|嫁姑|夫婦|親子関係3.1万字5 285 -
完結第15話
認知症の父を選んだ私を捨てた夫、5年後の再会
「俺と、あのボケた親父。どっちを選ぶんだ?」 認知症と診断された父を支えようとした都子は、夫の一郎から離婚を突きつけられる。長年の夢だった洋食店の継承も難しくなり、介護と生活に追われる日々。それでも地域の支援を頼り、父の料理を生かした新しい仕事に挑戦する。 五年後、介護事業者の交流会で元夫と偶然再会。若く美しい社長の妻と子どもがいると自慢する一郎だったが、都子は彼が指さした女性をよく知っていた。嫁姑|夫婦|親不孝3.1万字5 48 -
完結第20話
60日間見舞いゼロの夫、退院した妻に600万円を要求
突然の心臓病で緊急手術を受け、生死の境をさまよった美桜。六十日間の入院中、夫も義母も義妹も一度として見舞いに来なかった。届くのは、義母への月六百万円の送金を催促する連絡ばかり。家族だと信じて尽くしてきた美桜は、ついに夫との決別を決意する。しかし剛田家の人々は、美桜の本当の素性も、自分たちの会社や豪邸が誰によって支えられているのかも知らなかった。兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|金銭問題2.4万字5 31 -
完結第15話
50万円で嫁がされた私、6年後に見た父の姿
昭和63年、教師になることを夢見ていた19歳の藤崎千春は、父が受け取った50万円の結納金と引き換えに、東北の山村へ嫁がされる。進学を諦め、過酷な農作業に追われる毎日。ところが、段ボールの底に隠していた受験参考書を義母に見つけられた日、千春の運命は思いがけない方向へ動き始める。夫と義父母の支えで夢を取り戻した千春は、6年後、教師となって実家へ帰る。しかし庭先で目にしたのは、かつて自分の進学を許さなかった父の、信じられない姿だった。第二の人生|親子関係|金銭問題2.4万字5 436 -
完結第20話
父の死後、姉に追い出された私が嫁いだ農家の秘密
五年間、父の介護を一人で担ってきた三十三歳の美咲。ところが父の死後、二人の姉は遺産の独占を企て、美咲に実家から出ていくよう迫った。失意の中、美咲は交際相手の米農家・宮田大輔との結婚を決意する。しかし嫁ぎ先には七千二百万円もの借金があり、姉たちからも貧乏農家の嫁だと嘲笑される。それでも夫と田んぼを守ろうと決めた美咲に、大輔は「明日、俺の仕事場を見てほしい」と告げる。翌朝、連れていかれた巨大な倉庫で、美咲は思いもよらない光景を目にする――。夫婦|相続|絶縁|親子関係2.6万字5 513 -
完結第20話
死んだ母を名乗る女
母を亡くして二年。三十歳の浅沼美咲は、空き家となった実家を片付けている最中、郵便配達員から思いがけない言葉を告げられる。「先月もお母様にお会いしましたよ」。亡くなったはずの母を名乗り、郵便物を受け取っている女がいるというのだ。家の中に残された生活の痕跡、天井裏から聞こえる不審な物音、そして母宛てに繰り返し届く現金書留。兄とともに調べ始めた美咲は、疎遠だった叔母の影と、母の遺産をめぐる不穏な思惑に気づく。死者の名を使ってまで隠そうとした秘密とは。真相|親子関係2.3万字5 1199 -
完結第10話
手取り23万円の俺、旅館で妻が「お嬢様」と呼ばれた
手取り月23万円のトラック運転手・中村和也は、妻の彩佳と娘の結衣を何よりも大切にしていた。幼い頃、亡き父と交わした温泉旅行の約束を果たすため、毎月五千円を五年間積み立て、ようやく三十万円を貯める。結婚記念日に彩佳が選んだのは、山奥に佇む名門旅館「月影楼」。質素な暮らしの自分たちには場違いに思えたが、玄関に到着した途端、従業員が彩佳に深々と頭を下げた。「お嬢様、お帰りなさいませ」。妻が長年隠してきた過去とは何なのか。家族への愛と、思いがけない運命の再会を描く物語。人生逆転|夫婦|第二の人生|親子関係2.4万字5 1748