"夫が書いた私の退職届" 第1話
「、これを会社へしてくれ」
夫の浩が卓へ置いたのは、私の名が印字された退職届だった。私は歳で、方の品卸会社に勤めている。定まで、現は受注管理の主任としての社員をまとめていた。
「どうして、あなたが私の退職届を作るの」
「母さんが退院する。しばらくでは暮らせないんだ」
姑の照子は歳で、週に自宅の階段から転落し、首を骨折した。術は成功し、医師からは回復期病院へ転院してリハビリを続ける案がている。
「介護が必かどうか、まだ調査もしていないでしょう。退院支援の話しいはよ」
「骨折した寄りを病院に置きっぱなしにする気か。うちへ連れてくる。母さんはを使えばいい」
わがのは畳で、廊とのにセンチの段差がある。浴も狭く、階に寝がある。歩器を使う齢者が暮らすには、すりや線の確認が必だった。
「専職にを見てもらってから決めよう。私は仕事を辞めない」
浩は苛ち、退職届を指で叩いた。
「君の収入がなくても活できる。俺は正社員だし、母さんのもある。これまで母さんに散々助けてもらっただろう」
助けてもらった記憶を数えるなら、私にも言いたいことはあった。結婚直から照子は鍵でへ入り、蔵庫を調べ、子どものを勝に買い替えた。
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私が残業すれば「母親失格」、仕事を休めば「会社に迷惑をかける嫁」と言った。
それでも、息子の直と娘の美咲が幼い頃、発に迎えへってくれたことはある。私は謝と傷ついた記憶を、どちらかつにしようとはわなかった。
「介護は恩返しの計算で決めるものじゃない。お義母さん本の希望を聞くべきよ」
「母さんは慮して、施設でいいと言うに決まってる。族なら本音を分かってやるものだ」
浩は、照子の本音を聞くから決めていた。私が退職し、自宅で母親を世話する。その形だけが親孝だとっている。
私は退職届をつに折り、夫へ返した。
「私の名をくのは私です」
浩は受け取らなかった。
「の族会議で、母さんのでも同じことを言えるのか」
「言うわ」
その夜、病院から私のスマートフォンへ話が来た。退院支援護師は、照子本から頼まれたと置きし、静かな声で言った。
「照子さんが、の話しいには息子さんだけでなく、必ず恵美子さんにも来てほしいとおっしゃっています。それから、ご自宅へ戻るに確認してほしい類があるそうです」
翌朝、会社へくと、私は退職届のことがかられず、受注数を桁見違えた。部の確認で荷に止められたが、庭のりを職へ持ち込んだ自分がけなかった。
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昼休み、事担当の女性へ介護職について相談した。退職を申したのではなく、族が骨折したにどんな制度が使えるかを聞いたのだ。担当者は、介護認定でも次休暇や勤務の相談はできるが、族の退職だけを提にする必はないと説した。
「退職届は、ご本が提しない限り受理しません。ご族が会社へ持ってきても同じです」
当たりの言葉を聞き、肩の力がし抜けた。浩は私の勤務先へ直接提するとは言っていない。それでも、自分が作ったに私が署名するまで追い込めるとっていた。
帰宅、私は退職届を写真に残し、原本は自分の類箱へ入れた。夫を罪に問うための決定証拠ではない。ただ、私のを確認せず仕事を終わらせようとした事実を、から「相談しただけ」に変えさせないためだった。
浩は夕、へ介護ベッドを置く寸法を測り始めた。私はメジャーを取りげず、病院の評価が終わるまで具をかさないと伝えた。
「母さんが退院できなくなってもいいのか」
「退院先を決めるのは、あなたじゃない。お義母さんと医療側と、実際に暮らす全員よ」
夫は満そうにメジャーを畳んだ。その夜、私は初めて、照子のために何ができるかではなく、自分が何を引き受けられないかをへいた。
毎の体介護、夜の見守り、薬の責任、退職。
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