"月8万円の町工場社長" 第5話
「だろうな」
「でも受けたら、もっとよくないです」
田辺さんはさく笑い、何も言わず械へ戻った。
翌、子さんが突然へ来た。黒川がここへ来たことをっているらしく、「何を言われましたか」と尋ねたが、俺は「取引先候補の確認だそうです」とだけ答えた。
子さんは俺の顔をしばらく見ていた。
「本当ですか?」
「本当です」
嘘ではない。
ただ、全部ではない。
以なら、それで分だとっただろう。
ところが今は、子さんに言われた「都のいいことだけ黙るのも正直ではない」という言葉がに残っていた。
その、材料から急ぎの話が入り、俺は30分ほどをれることになった。戻って事務所の扉をけると、子さんが目元を赤くして座っており、向かいには美代子さんがいた。
机には古い与台帳がかれていた。
「美代子さん、何を見せたんですか」
「社のお料です」
俺はち尽くした。
「3から、社の役員報酬はずっと8万円です。従業員の料は元へ戻しましたが、戻していないのは社だけです」
「もういいです」
「よくありません」
普段声を荒らげない美代子さんが、そのだけはい調になった。
「私は30以ここで帳簿を見てきました。数字を見れば、誰が何を先にして、何を回しにしたのか分かります。社は自分の活を最にしたんです」
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入に田辺さんがっていた。
「社、8万円って何だ」
どうやら初めてったらしい。
俺は説しようとしたが、田辺さんは子を握ったまま何も言わなかった。しばらくして「俺たちの料が1割がっただけで済んだのは、そういうことか」と呟き、背を丸めて械へ戻っていった。
そのの帰り、子さんへ黒川との会話をすべて話した。
子さんは驚いたが、黒川へのりより先に俺へをげた。
「申し訳ありません。私のことで、を巻き込んでしまいました」
「子さんのせいじゃありません」
「でも、数千万円の仕事を断らせました」
「違います。俺が断ったんです」
俺はそこで初めて、800万円の借について、最まで話す気になった。
どうして作ったのか。
なぜ従業員にも言わなかったのか。
そして、3のに何が起きたのか。
子さんは黙って聞く姿勢をえた。
父がんで1ほど経った、浦製作所は本当に倒れる寸まで追い込まれた。売の約3割を占めていた取引先が調達へ切り替えることになり、翌から発注を止めると連絡してきた。その翌には古い円筒研削盤まで故障し、修理には180万円かかると言われた。
さらに材料と具商、処理会社への支払いがなっていた。うちの商売は材料を先に買い、加して納品したあとに代が入るため、売が落ちたほど過の仕事の支払いがく残る。
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美代子さんが計算した結果、2か分の与を含めて必な額は約800万円だった。
へった。
父の代から付きいのある融関だったが、決算を見た担当者は丁寧に説を聞いたあと、「3期連続赤字ですので、追加融資は難しい」とをげた。その判断が違っているとはわなかった。
別の融関も回った。
結果は同じだった。
会社で借りられないなら、自分で借りるしかなかった。
俺は個名義で借りられるだけ借り、分は利のい借入先まで使った。計が約800万円になった、議と怖くはなかった。
「族がいなくて助かったとったんです」
喫茶でそう言うと、子さんが顔をげた。
「助かった?」
「俺が返せなくなって困るのは俺だけですから」
当は本気でそうった。
借りたは俺の座へ入ったあと、ほとんどそのままからていった。与、材料代、具代、械の修理費。自分のために使ったは円もなかった。
それでも従業員には事を話さなかった。
すでに度、全員へをげて料を1割げてもらっていた。借の話までれば、田辺さんたちはもっとげていいと言うに決まっている。それ以あのたちへ背負わせることだけはできなかった。
「その、田辺さんの奥さんに病気が見つかったんです」
乳がんだった。
術は無事終わったが、そのも治療が続いた。
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