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"月8万円の町工場社長" 第6話

田辺さんは休憩になると携帯話を確認するようになり、「来週の曜、半休ませてくれ」と初めて慮がちに頼んできた。

もし料が遅れていたら。

もし俺がを閉めていたら。

田辺さんの庭は、あのどうなっていただろう。

が入るって、俺には数字でした。でも田辺さんのでは、奥さんが治療を続けられるかどうかの話だったんです」

子さんは黙っていた。

「従業員の方のお料を、もっとげる選択肢はなかったんですか」

「ありました。税理士にも言われました」

「それでも1割だけ?」

「それ以げたら、田辺さんだけじゃなく、さんの子どもの学費にも、島の返済にも響します。うちが払う料って、で終わるじゃないので」

言い終えてから、自分でも妙なことを話しているとった。経営がなら、そもそも個利の借などしない。

「結局、経営がだっただけです」

そう付け加えると、子さんは首を横に振った。

浦さん、その800万円のうち、ご自分のために使ったおはいくらですか」

「ないです。たぶん円も」

「それなら、私が最初に聞きたかった答えはもうています」

子さんの目が赤くなった。

「おがあるかどうかではなく、何のために使うなのか。母が私に教えたのは、それです」

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そこで初めて、彼女自の話を聞いた。

子さんの母親は、が社員8ほどのさな会社だった代から父親を支え、経理まで伝っていたという。10に病気でくなる直、古い帳を娘へ渡し、「おがあるかないかだけでを見てはいけない。何に使ったかを見なさい」と言い残した。

だから子さんは、お見いで必ずの話をするようになった。

その額を誇るのか。

隠すのか。

誰かのために使うのか。

自分をきく見せるために使うのか。

浦さんは借を隠しませんでした。でも理由は隠しました。最初は議でした」

「断られたかっただけです」

「今は分かります。借を恥ずかしいとっていたから、理由まで説すると自分をよく見せることになるとったんですね」

だった。

子さんはし笑った。

「でも私は、その理由を聞いて、なおさら格だといました」

俺はまた返事ができなかった。

それから俺と子さんは、しずつ会うようになった。級なくことはほとんどなく、商の蕎麦だったり、仕事帰りに喫茶へ寄ったりする程度だった。子さんも会社を辞めるつもりはなく、俺もの仕事が最優先だったため、週に度会えればい方だった。

黒川の件は気になっていたが、子さんは父親へすぐ告げするようなことはしなかった。

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「仕事の問題は仕事ので確認します」と言い、俺にもかないよう頼んだ。その姿勢を見ているうちに、俺もの娘ではなく、の仕事を持つとして彼女を見るようになっていった。

そんなある晩、子さんから話が来た。

へ来ていただけませんか」

「お父さんに会うんですか」

「はい。でも、お見いの話ではありません。仕事です」

翌朝、本社へくと、会議には子さん、黒川、そして髪の男性が待っていた。、62歳。名刺交換のあと握をすると、なほどの皮がく、若い頃は現にいただとすぐに分かった。

机には枚の図面が広げられた。

肉の円筒部品だった。

材料はチタン。内径の寸法公差が極端に狭く、真円度は3ミクロン以内。数量は12個、支材料は15本しかなく、納期は3だった。

「これは厳しいですね」

俺は正直に言った。

を聞くと、が6の国際産業械展で発表する型検査装置に使う部品だった。従来のメーカーが納期直に製造能をらせてきたため、国内10社以へ問いわせたが全社に断られたという。

わなければ、製品の発表そのものを延期します。すでに決まっている商談への響まで含めれば、損失は20億円を超える能性があります」

黒川は「御社には荷がい」と言いたげな顔で黙っていた。

は俺へ向き直った。

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