"月8万円の町工場社長" 第7話
「実は、娘の釣で浦製作所という名を見たから気になっていました」
「うちをごじだったんですか」
「あなたのお父さんは、正さんですね」
俺は驚いて顔をげた。
22、まだ精が今ほどきくなかった頃、誠さんは試作装置に使う特殊部品を作れるを探し回っていたらしい。10社に断られ、11社目として訪ねたのが浦製作所だった。
父は図面を30分ほど眺めて、こう言ったという。
「うちに来た図面は、うちの飯だ」
胸の奥が詰まった。
父の癖だった。
「正さんは引き受けてくださり、完成した部品は度で格しました。あの試作が成功しなければ、今の精の主力製品のつはまれていません」
それなのに、その直接取引は途切れた。会社がきくなるにつれて購買体制が変わり、規模と直接契約する窓がなくなったからだという。
社はをげた。
「私はずっとの名を覚えていました。今回だけは、もう度浦製作所にお願いしたい」
俺は図面を見た。
できない理由はいくつもあった。
しかし同に、程を組めば能性があることも分かった。
荒加。
晩寝かせる。
仕げ。
測定。
15本しか材料がない以、失敗できるのは3本だけだった。
「持ち帰らせてください。俺では決められません」
「もちろんです」
広告
へ戻り、械を止めてもらって4へ図面を見せた。
田辺さんはい、寸法を追っていた。
「正さんなら、これ受けたとうか?」
俺はすぐに答えた。
「受けたといます」
田辺さんは子をかぶり直した。
「じゃあ、やろうや」
そので全員がき始めた。
材料が届いたのは、そのの夜10だった。箱のには油で包まれた15本のチタン材が並び、まず全数を測定して材料自体にがないか確認した。島が油を拭き、田辺さんがマイクロメーターを当て、俺が数字を記録し終えたのは午11半を過ぎていた。
翌朝5、俺がへ着くと田辺さんはすでにシャッターので待っていた。加対象は壁が1ミリししかないい円筒で、普通にチャックへ固定すれば、それだけで真円が崩れる。まず専用治具を作らなければ、図面通りの加など始めることすらできなかった。
田辺さんとさんが2台の旋盤で治具を削り、俺はマシニングセンターの加条件を組み、島は具と測定器をつずつ準備した。美代子さんは通常の取引先へ納期調の話を入れ、3の仕事をほぼ全面に止めることを謝って回った。
昼に治具が完成し、午から15本の荒加へ入った。
3台の械を同に回すとのには細かな状の切削液が漂い、なのに温がしがった。
広告
午9を過ぎた頃、子さんがきな袋と鍋を抱えて現れた。
「皆さんの夕です」
豚汁とおにぎりだった。
「こんなところまで来なくていいですよ」
俺が言うと、子さんはの奥を見た。
「自分の会社の製品を作っていただいているんです。結果だけ待っている方が嫌です」
械を止められないため、交代でべた。子さんは帰らず、美代子さんから借りたの作業着を着て、検査を終えた部品の記録理を伝った。
荒加がすべて終わったのは午2過ぎだった。
晩置き、翌から仕げへ入った。
最初の1本。
真円度8ミクロン。
格。
2本目は7ミクロン、3本目も7ミクロンだった。
田辺さんは具を替え、回転数を落とし、切込み量を変えた。それでも4本目から6本目まで、5ミクロンからがらなかった。
図面指定は3ミクロン。
6本を使って。
格は0。
のから会話が消えた。
支材料は15本しかない。
残りは9本。
必数は12個。
すでに算数として成していなかった。
ただし、最初の6本も最終寸法まで削り切っていなければ、もう度仕げ直せる能性はある。しかし、どれだけ取り代が残っているか確認するにもがかかり、しい加方法を見つけなければ同じ結果を繰り返すだけだった。
田辺さんが械のでかなくなった。
「社、すまん」
「田辺さんのせいじゃありません」
「俺の腕が正さんに届いてねえ」
その言葉を聞いた瞬。
俺のに、事務所の引きしが浮かんだ。
広告
おすすめ作品
-
完結第20話
5000万円の新居に義両親が無断で引っ越し――夫の嘘
実家の両親から五千万円の援助を受け、念願の新居を購入した。夫の健太とは親との同居をしないと約束し、二人だけの新生活を始めるはずだった。ところが引っ越し当日、義両親のベッドやタンスを積んだトラックが突然到着する。「今日から俺の親も住む。親孝行は当然だろ」と言い放つ夫。彩佳の同意もなく進められていた同居計画には、夫が隠してきた嘘があった。人生逆転|裡切られた|嫁姑|夫婦|相続|金銭問題|修羅場2.3万字5 683 -
完結第14話
「一緒に浪人」は嘘だった――俺に届いた特待生通知
高校三年生の高瀬優馬は、恋人・彩佳の受験勉強を支えるため、自分の研究や試験対策を後回しにしてきた。「どちらかが落ちても一緒に浪人しよう」――その約束を信じていた優馬だったが、合格発表の日、受かった彩佳は彼をあっさり突き放す。しかし優馬には、彼女に隠していた特別奨学生の選考通知があった。自分の未来を取り戻す決意をした優馬は、名門工科大学で研究の才能を開花させていく。やがて大学のコンテストで再会した二人を待っていたのは、残酷なほど鮮やかな立場の逆転だった。因果応報|人生逆転|修羅場2.3万字5 657 -
完結第13話
三千円の温泉旅行
町内会の会計を務める68歳の森川静子は、秋の日帰り旅行を一人三千円の温泉宿に決めた。ところが、副会長の妻・矢野夫人は「貧乏くさい」と不満を漏らし、勝手に高級旅館へ行き先を変更。会長の了承を得たと嘘をつき、参加者まで誘い出してしまう。 旅行当日、矢野夫人から突然「積立金三十万円を出しなさい」と電話が。拒否した静子は、今度は会費の使い込みを疑われ、町内中に帳簿の写真を広められる。 しかし、その写真と案内状には、矢野夫人が見落とした決定的な事実が残されていた――。人生逆転|第二の人生|ATM扱い|金銭問題1.5万字5 1152 -
完結第20話
貧乏と俺を捨てた元カノ、次期社長との婚約に隠された誤算
「月収四十万円で、私と結婚できると思ってたの?」七年間付き合った恋人・美香に、収入を理由に婚約を破棄された中島涼。失意の帰り道、公園で出会った風変わりな兄弟との交流が、彼の人生を大きく変えていく。物流の経験を生かして建設会社の経営改革に携わり、少しずつ信頼を築いていく涼。二年後、居酒屋で偶然再会した美香は「次期社長と結婚する」と勝ち誇っていた。しかし、彼女も婚約者も、会社で進んでいた重大な決定を知らなかった。金と肩書きで人を見下した二人を待つ、思いがけない逆転劇。人生逆転|裡切られた|真実|第二の人生|金銭問題2.9万字5 796 -
完結第10話
「バカ息子」と笑う義父母、旅行中に息子夫婦が消えた
結婚五年目の立花はる子と夫の琢磨は、念願の新居を手に入れた。しかし、何の相談もなく押しかけてきた義父母が居座り、生活費も払わず、家事をすべてはる子に押しつけるようになる。 ある日、買い物から帰った二人は、義父母が自分たちを嘲笑し、子どものことまで侮辱しているのを聞いてしまう。 長年、親の暴言に耐えてきた琢磨が、初めて口にした「もう限界だ」という言葉。 正面から逆らえない夫を守るため、はる子は義父母に三泊四日の温泉旅行を贈り、その留守中に密かな計画を実行する。何も知らず帰宅する義父母を待つ、予想外の光景とは――。人生逆転|嫁姑|親子関係1.7万字5 1865 -
完結第20話
生け垣を伐った4日後、隣人が青ざめた理由
72歳の佐野ふみ子は、亡き夫が40年かけて育てた生け垣に囲まれた家で、一人静かに暮らしていた。ところが隣人の美津江は、落ち葉や枝の張り出しに執拗に文句をつけ、ついには「違法な生け垣だ」と市役所へ通報する。 夫の思い出を守りたい気持ちを抑え、ふみ子は生け垣をすべて伐採することを決意。すると、長年隠れていた地中から古い境界杭が発見される。 そして伐採から4日後、あれほど生け垣を嫌っていた隣人が、真っ青な顔で玄関に現れた。 「お願い! 生け垣を元に戻して!」 突然の懇願の裏に、何があったのか――。因果応報|人生逆転|怒り|裡の顔|修羅場2.0万字5 1440 -
完結第20話
離婚1時間でカード5枚停止、義母の豪邸宴会が一変
九年間の結婚生活を終えた神堂美緒は、離婚成立から一時間も経たないうちに、元夫・達也らに渡していたブラックカード五枚を利用停止にした。 一方、達也と義母の和江は、十億円の豪邸まで自分たちのものになったと信じ、親戚五十人を招いて豪華な宴会を開催する。 しかし、彼らは家の本当の所有者も、カードの契約者も知らなかった。さらに、美緒の署名を使った不審な不動産取引まで発覚する。 高額な料理とワインが次々と運ばれる中、祝宴の会計で明らかになる衝撃の事実とは――。因果応報|人生逆転|嫁姑|夫婦|金銭問題2.8万字5 1305 -
完結第10話
銀座の384万円
巨大企業グループの総帥という身分を隠し、平凡な専業主婦として暮らす美央。夫と義母に見下されながらも、温かい家族を夢見て五年間耐え続けてきた。 義母の誕生日、55万円の高級バッグを用意して銀座のレストランへ向かうと、義家族はすでに食事を終えていた。美央の席も料理もなく、代わりに突きつけられたのは384万円もの請求書。 「会計はあなたが払って」 その言葉に、美央は静かに微笑んで店を去る。しかし義家族はまだ知らなかった。自分たちが誰を敵に回したのかを――。因果応報|人生逆転|嫁姑|夫婦|金銭問題|修羅場1.6万字5 2274 -
完結第20話
山奥の身代わり花嫁
29歳の水野美緒は、幼い頃から姉ばかりを優遇する両親のもとで、家事と仕事に追われる日々を送っていた。 ある日、姉が見合いの直前に逃げ出し、美緒はその身代わりとして山奥の男に嫁ぐよう命じられる。逆らえば家にも戻れない。古い鞄一つで送り出された美緒だったが、たどり着いた先は想像もしなかった大きな屋敷だった。 しかも門が開いた瞬間、使用人たちが深々と頭を下げ、「お帰りなさいませ、奥様」と迎えた。 まだ結婚の返事すらしていない美緒を、なぜ彼らは待っていたのか。そこには、家族が隠していた縁談の秘密があった。人生逆転|兄弟姉妹|第二の人生|親子関係2.8万字5 1283 -
完結第14話
同窓会でビールを浴びた私に、51人の男が最敬礼
中学卒業から十五年。貧しい母子家庭で育ち、いじめに耐えてきた梅本瑞江は、故郷の同窓会に姿を現した。上品な大島紬をまとった彼女を見て、かつてのいじめの主犯・熊切勢子は激怒。友人の借金を盾に保証人になるよう迫り、ついには瑞江の頭からビールを浴びせてしまう。 さらに勢子は、暴力団組長である夫の力を使い、瑞江を脅そうとする。しかし、連れ込まれた奥の宴会場で、誰も予想しなかった光景が待っていた。 十五年前に見下されていた少女が隠していた、驚くべき現在の姿とは――。人生逆転|真相|第二の人生|修羅場2.0万字5 1779