"破られた団地当選通知" 第2話
《入居予定宅》
《3DK》
《入居続期限》
その文字が、ではないことを証していた。
「お呂、あるのよね」
枝が呟くと、茂は笑った。
「あるよ」
「良の机も置ける?」
「置けるだろう」
良が母を見げる。
「本当に買ってくれる?」
「机だけじゃないわよ。あなたと美代子の布団だって、毎朝全部押し込まなくても済むんだから」
族が沸きつ、ハルだけは通を見たまま、しばらく黙っていた。
「母さん?」
茂が声をかけると、ハルはようやく顔をげた。
「へえ……ほんとに当たるもんなんだねえ」
それだけだった。
んでいないわけではない。
けれど、何かを考えるように通の端を指でなぞるその姿を、枝はほんのしだけ議にった。
その晩、銭湯から戻るで、枝は良としい暮らしの話をした。
「ベランダっていうのがあるんだって」
「洗濯物干すところ?」
「そう。でもれたはも見られるでしょうね」
「僕、窓のところに机置きたい」
「いいわよ」
「本当に僕だけの机?」
「本当に」
へ戻ると、トメが表の箱へ座っていた。
「遅かったねえ」
「銭湯が混んでたんです」
枝が答えると、トメは美代子の濡れた髪を撫でた。
「邪ひくよ。く入りな」
その瞬、枝はふとった。
しい団へけば、この暗いとも、共同便所とも、銭湯帰りのたい夜とも別れられる。
今度こそ族の暮らしが変わる。
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そう信じていた。
まさか、その当選通が3、つに裂かれてゴミ箱へ捨てられるとは考えもしなかった。
通が届いてから3、枝は暇さえあれば居の話をしていた。
必な具を聞広告で見比べ、箪笥は今のものを持っていけるか、カーテンは買わなければならないのかと茂へ相談した。良も学で団へ引っ越す話をしたらしく、友達から「団には式の台所があるんだろ」と聞かれたと言って得げだった。
ところが、その方でハルは居の話へほとんど加わらなかった。
「お義母さん、向こうへったらくにがあるそうですよ」
枝が声をかけても、
「そうかい」
と答えるだけだった。
「お母さんの布団はどの部がいいかな」
茂が聞けば、
「まだ決まったわけじゃないだろ」
と言う。
枝は次第に気になってきた。
当選はもう決まっている。
期限までに続きさえすれば入れるのだ。
なのにハルだけが、まるで何かが決まるのを待っているようだった。
その3目の朝だった。
茂はいつものように勤に聞をまとめ、脇のゴミ箱をしかした。その、丸めた聞のから、のいが覗いていることに気づいた。
何気なく拾いげる。
文字が見えた。
《本宅公団》
「……何だ、これ」
茂はしゃがみ込み、ゴミ箱のを探った。
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同じがもう3枚てきた。
つを卓袱台のでわせると、枚の通へ戻った。
川茂様。
入居当選。
違いない。
3、族全員でんだあのだった。
「枝」
茂の声に、台所から妻が顔をした。
「何?」
「これ見ろ」
枝は最初、が分からなかった。
しかし片を見た瞬、に持っていた菜箸を落とした。
「どうして……」
「子どもじゃないよな」
良は学へっている。美代子にこんないを丁寧につへ裂く力はないし、は文字のあると広告の区別さえつかない。
トメは朝から表へている。
残るのはだった。
そのの夕方、茂は仕事から帰ると、母を卓袱台のへ座らせた。
枝も向かいに座った。
破られたは、つをわせた状態で央に置かれている。
「母さん」
茂がい声で言った。
「これ、どういうことだ」
ハルはを見た。
ほんの瞬だけ目を伏せたあと、さく息を吐いた。
「……見つかったのかい」
その答えで分だった。
「母さんが破いたのか?」
「そうだよ」
「何でだよ」
ハルは答えない。
枝の胸に、数からじていた違が気に形を持った。
「お義母さん」
自分でも驚くほどい声がた。
「まさか、あのへきたくないからじゃないでしょうね」
ハルは目をげた。
「そんなことは言ってないよ」
「じゃあ、どうして破くんですか?」
「……」
「ここにいたいなら、お義母さんの問題でしょう。
でも私たちは、ずっとこの部で暮らしてきたんです」
枝は止まらなかった。
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