"破られた団地当選通知" 第3話
積もっていたものが、当選通の破片を見た瞬に噴きした。
「毎晩、子どもを連れて銭湯へくのも、のに洗濯物を部じゅうへぶらげるのも、良が卓袱台で宿題するたびにご飯だから片づけろって言うのも、全部仕方がないとってきました」
「枝」
茂がく呼んだ。
けれど枝は夫を見なかった。
「良は来6なんです。だってきくなる。で畳半つですよ。せっかく当たったのに、それをで破いて終わりにするなんて、あんまりじゃないですか」
ハルは何も言わない。
その沈黙が、枝をさらに苛たせた。
「あなたは、、私たちをこのに閉じ込めるつもりですか」
部が静まり返った。
言ってから、しすぎたとった。
それでも撤回する気にはなれなかった。
茂は眉を寄せ、
「そこまで言うことないだろ」
と妻を制した。
「でも、何も言ってくれないじゃない」
「母さんにも理由があるかもしれないだろ」
「だったら言えばいいでしょう」
その、隣の部からさな咳払いが聞こえた。
トメが襖のそばに座っていた。
いつから聞いていたのか分からない。
「もう、その辺にしときな」
かすれた声だった。
枝はを閉じた。
ハルもかなかった。
「夜に声したって、は元へ戻らんよ」
トメはそれだけ言い、自分の布団の方へ戻っていった。
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その晩、のは異様なほど静かだった。
良も何かをじ取ったらしく、
「引っ越し、なくなったの?」
とさな声で母へ尋ねた。
枝は答えられなかった。
「まだ分からないわ」
「通、破れたら駄目なの?」
「案内所で聞いてみる」
「僕の机は?」
胸を突かれた。
「まだ諦めなくていいから」
そう言って良の髪を撫でたものの、枝自の方が泣きたかった。
布団へ入っても眠れなかった。
隣では茂が何度も寝返りを打っている。
「あなた」
「うん」
「お義母さん、から反対だったの?」
「らない」
「本当に?」
「俺だって今初めてったんだよ」
それきり会話は途切れた。
い壁の向こうから、トメの咳が聞こえた。
しばらくして、ハルが起きる気配がした。をませているのか、さな声で何か話している。
枝は暗ので目を閉じた。
腹がっているはずなのに、その声を聞いていると、胸の奥に別の引っかかりがまれた。
ハルはなぜ、あれほどまで黙っているのだろう。
ただをれたくないだけなら、そう言えばいい。
嫌われるのを承で通を破り、それでも理由だけは言わない。
その沈黙には、枝がまだらない何かがあるようにえた。
翌、茂は午だけ会社を休んだ。
枝とで、公団の案内所へ向かった。破られた通は封筒へ入れ、つの片がずれないよう聞で挟んである。
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「紛失したことにする?」
すがら枝が尋ねると、茂は首を振った。
「嘘をついても仕方ない。破れたけど続きできるか聞こう」
案内所には、しい団へ入る予定の族が何組も来ていた。
若い夫婦が取り図を覗き込み、子どもが子のをっている。その景を見るだけで、枝は自分たちもここへ来るはずだったのだとい、胸がざわついた。
事を説すると、窓の男性職員は破れた通を確認し、
「本確認ができれば続きは能です」
と言った。
枝はわず茂の腕を掴んだ。
「じゃあ、入れるんですね」
「期限内であれば丈夫です」
力が抜けた。
通枚が破れていても、当選そのものまで消えるわけではなかった。
「部も見られますか?」
「今は案内できますよ」
職員が資料をめくった。
「川さんは4号棟の407号ですね。3DKです」
「階……」
茂が呟いた。
枝はそれほど気にしなかった。
今のより広い。
呂もある。
それだけで分だった。
団へ着くと、真しいコンクリートの建物がの差しのに並んでいた。砂利の向こうでは子どもたちが縄びをし、洗濯物がに揺れている。
407号へ入った瞬、枝は息を呑んだ。
るい。
それが最初のだった。
台所には窓があり、い流し台がっている。蛇をひねればそのでがて、隣にはガス台を置く所まである。
奥には畳の部がつと、もう。
「ここ、良の机を置けるわ」
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