"251840円の正月料理を持ち去った義母" 第3話
「また買わせればいい」
翌朝、私は居のテーブルに型のICレコーダーを置いた。仕事の会議で使っているもので、録音始を示す赤いランプがさく点灯する。
由は向かい側に座り、湯気のつマグカップを両で包んでいた。夜に何度も目を覚ましたらしく、目のにはいができている。
「母さんに、もう度確認する」
私はスマートフォンをスピーカーにして話をかけた。母は朝の忙しいに何なの、と苛った声でた。
「昨持っていった材だが、隆志たちは、あれが由のものだとっているのか」
「細かいことを気にするのね。私からのお祝いだと言ってあるわ」
「由が18分として用したものを、母さんからの贈り物にしたのか」
「麻子さんのご両親は会社を経営しているのよ。見栄えのするものをさなきゃ、うちまで軽く見られるでしょう」
母はためらうことなく続けた。
「由さんの煮物はだったから置いてきたけど、蟹と牛はばれたわ。あの子には今もう度買いにかせればいいのよ。どうせ自分から何とかするでしょう?」
向かいにいた由の肩がわずかに揺れた。私はを声にさないよう息をえた。
「今、由は買い物にかない。も料理はしない」
「何を言っているの。男の嫁でしょう。
広告
親戚ので私に恥をかかせる気?」
「、誰が恥をかくかは自分で考えてくれ」
話を切り、録音を止した。内に計の針がむ音だけが残った。
由はしばらく黙っていたが、やがてマグカップを置いた。陶器が受け皿に触れ、乾いた音をてた。
「私の煮物、置いてきたって……」
「の問題じゃない。母さんは麻子さんの実に見栄を張りたかっただけだ」
「でも、もう度作ればは丸く収まるかもしれない」
その言葉を聞いた瞬、私は由がどれほどく自分を責める癖を植え付けられてきたのか、ようやく理解した。
「丸く収まっていたんじゃない。君だけが角を削られてきたんだ」
由は唇を結んだ。目に涙がたまっても、こぼさないよう必に瞬きを繰り返している。
「怖いの。、親戚ので何もできない嫁だと言われるのが。直さんまで、どうしてこんな妻と結婚したんだって笑われるのが……」
私は子を寄せ、荒れた両を包んだ。指の関節には細い亀裂がり、薬を塗った跡がく残っていた。毎見ていたはずの傷だった。
「笑われるべきなのは君じゃない。君が払ったを奪い、もう度払わせようとしただ」
私は領収、玄関の録画データ、LINEの画像、今録った音声をつずつ確認し、い封筒にまとめた。由の9分のノートにはまだ触れなかった。
広告
それをにすかどうかは、彼女自が決めるべきだとったからだ。
昼過ぎ、由と2で買い物へた。正の内はおせち料理を求める客で混みい、華やかな箱がく積まれている。私たちはその売を通り過ぎ、12個入りのカップ麺を箱だけ購入した。
レジに並ぶ、由は何度もろの売を振り返った。空になった買い物籠を見つめるたび、今からでも材を入れるべきではないかと迷っているのが伝わってくる。私は箱の代を自分で払い、いレシートを由に見せた。
「これ以、君の財布はかせない」
由は返事をせず、代わりに私のコートの袖をそっとつかんだ。
帰宅、由は箱を見つめてそうに尋ねた。
「これを本当に、みんなのへすの?」
「す。母さんが用した現実だからな」
私はい封筒を箱の底へ入れ、ガムテープで蓋を閉じた。
「、恥をかくのは君じゃない」
広告
おすすめ作品
-
完結第18話
結婚初夜、義母を助けた私を殴った夫の誤算
結婚初夜、夫の実家で義父が義母の首を絞める現場を目撃した公認会計士の直美。助けようとした彼女を、信じていた夫・翔太は平手打ちし、「見て見ぬふりを覚えろ」と命じた。直美は義母を病院へ運ぶが、夫一家は弁護士と金の力を使い、彼女の口を封じようと動き始める。そんな中、義母が密かに託していた記憶装置が見つかった。嫁姑|絶縁|親子関係|介護4.8万字5 362 -
完結第15話
認知症の父を選んだ私を捨てた夫、5年後の再会
「俺と、あのボケた親父。どっちを選ぶんだ?」 認知症と診断された父を支えようとした都子は、夫の一郎から離婚を突きつけられる。長年の夢だった洋食店の継承も難しくなり、介護と生活に追われる日々。それでも地域の支援を頼り、父の料理を生かした新しい仕事に挑戦する。 五年後、介護事業者の交流会で元夫と偶然再会。若く美しい社長の妻と子どもがいると自慢する一郎だったが、都子は彼が指さした女性をよく知っていた。嫁姑|夫婦|親不孝3.1万字5 519 -
完結第20話
60日間見舞いゼロの夫、退院した妻に600万円を要求
突然の心臓病で緊急手術を受け、生死の境をさまよった美桜。六十日間の入院中、夫も義母も義妹も一度として見舞いに来なかった。届くのは、義母への月六百万円の送金を催促する連絡ばかり。家族だと信じて尽くしてきた美桜は、ついに夫との決別を決意する。しかし剛田家の人々は、美桜の本当の素性も、自分たちの会社や豪邸が誰によって支えられているのかも知らなかった。兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|金銭問題2.4万字5 671 -
完結第13話
貧乏なふりで結婚挨拶へ――彼女の父に正体を見抜かれた
三十四歳の神谷優馬は、恋人・水希の両親へ結婚の挨拶に行く日、わざと古いスーツと傷んだ靴を選んだ。実は大企業グループ会長の息子だが、その素性を二年間隠していたのだ。相手の家族が金や家柄で人を判断しないか、確かめるつもりだった。ところが、訪ねた水希の実家は、自分の家をはるかに上回る巨大企業グループの会長宅。しかも初対面のはずの父親は、優馬を見るなり意味深に笑った。人生逆転|真実|第二の人生|金銭問題3.3万字5 283 -
完結第15話
50万円で嫁がされた私、6年後に見た父の姿
昭和63年、教師になることを夢見ていた19歳の藤崎千春は、父が受け取った50万円の結納金と引き換えに、東北の山村へ嫁がされる。進学を諦め、過酷な農作業に追われる毎日。ところが、段ボールの底に隠していた受験参考書を義母に見つけられた日、千春の運命は思いがけない方向へ動き始める。夫と義父母の支えで夢を取り戻した千春は、6年後、教師となって実家へ帰る。しかし庭先で目にしたのは、かつて自分の進学を許さなかった父の、信じられない姿だった。第二の人生|親子関係|金銭問題2.4万字5 453 -
完結第20話
父の死後、姉に追い出された私が嫁いだ農家の秘密
五年間、父の介護を一人で担ってきた三十三歳の美咲。ところが父の死後、二人の姉は遺産の独占を企て、美咲に実家から出ていくよう迫った。失意の中、美咲は交際相手の米農家・宮田大輔との結婚を決意する。しかし嫁ぎ先には七千二百万円もの借金があり、姉たちからも貧乏農家の嫁だと嘲笑される。それでも夫と田んぼを守ろうと決めた美咲に、大輔は「明日、俺の仕事場を見てほしい」と告げる。翌朝、連れていかれた巨大な倉庫で、美咲は思いもよらない光景を目にする――。夫婦|相続|絶縁|親子関係2.6万字5 545 -
完結第20話
朝八時までのヒーロー弁当
工場の門前で40年間、社員たちに弁当を作り続けてきた正夫としず子。ところが、新しい社員食堂の開設を機に、部長から突然取引を打ち切られてしまう。売れ残る弁当、痛む膝、減り続ける売上。店を閉める覚悟をした二人だったが、ある日、古くからの常連が昼食の注文にやって来る。それをきっかけに、店先には再び社員たちの姿が増え始めた。一方、工場では思いがけない問題が起ころうとしていた。感動|真実|裡の顔|金銭問題4.5万字5 410