"「子供3人は全員連れてけ」と言った夫へ" 第2話
返した鍵
翌週、私は浅井法律事務所の机に、族の名をいたを置いた。48歳の浅井千先は、子供たちの齢を確かめてから、私の方へ子を向けた。
「牧さん、ご主の言葉と、これから決める取り決めは分けましょう。おの話が終わっていないからといって、放棄したことにはなりません」
私は、婚に応じてもらうためには全部諦めなければならないのだとっていた。先は私が握り締めていたペンを見て、「今、全部を決めなくて丈夫です」と付け加えた。
そのの数週、也は婚することと、子供3の親権を私に定め、私と暮らすことには同した。財産分与と養育費は、資料を揃えて引き続き話しうことになった。
「あいつらがそうしたいって言うんだから、仕方ないだろ」
也は先との話でそう答えたという。私に直接言ったのは、「母さんの世話を途で投げるなよ」だった。
私は次の診察予定、薬局の連絡先、薬の覧を揃えた。先にも相談し、通院の連絡やの支払いを誰がいつから担当するか、面にして渡した。也は受け取った封筒をテレビ台に置き、私が説しているもを見なかった。
居は汐見駅くの4LDKに決まった。賃は管理費込みで28万円。仕事の収入資料をして審査を受け、希と結の学には、転せず通えることを確認した。
広告
契約の初期費用は152万円、引っ越しは25万円。計177万円の支払い予定を計とは別の表に記し、弁護士にす財産資料にも支の経過を残した。
振り込みを済ませた夜、確認画面を閉じても、しばらくをキーボードに置いたままでいた。誰かに部を空けろと言われても、今度はき先がある。
婚届をしたの朝、也は私より先に玄関で靴を履いていた。役所の窓では職員の確認にく答え、続きが終わると腕計を見た。
「もういいんだろ。会社に戻るから」
私は受け取った類を鞄にしまった。也はに駐へ向かった。私はし遅れて歩きしたが、追いつこうとはしなかった。
引っ越しは、その翌の曜だった。
優馬が自分の机の引きしを抜き、希は楽器のケースを業者に預けず肩に掛けた。私は押入れから計簿をろした。結婚したから1に1冊、全部で19冊ある。
「それも持ってくの?」
希に聞かれ、私は表の擦れた最初の1冊を段ボールに入れた。
「うん。これから確認することもあるから」
廊で義母とすれ違った。私が抱えている箱を見ると、義母は納戸の方へ顔を向けた。机がなくなった所には、もう自分の布団袋を置いていた。
「私のことは配しなくていいわよ。也がいるし、お父さんの保険の800万円だって、ちゃんと残してくれてるんだから」
広告
「次の通院の予定は、封筒に入れてあります」
義母は返事をせず、部へ戻った。私は玄関に置いた箱を持ち直した。あの封筒のには、血圧の記録がテレビ台のの引きしにあることもいておいた。
最の荷物を運びす頃、結の姿が見えなくなった。茶のを覗くと、テレビのにしゃがみ、ノートに鉛をらせていた。
「結、そろそろくよ」
「うん。もう終わる」
結はノートを閉じて引きしへ戻した。私はランドセルを渡し、そのさな背を玄関へ送りした。
也は靴箱にもたれていた。子供たちがへても、荷物を持とうとはしなかった。
「鍵も置いていけよ」
私の鍵と、子供たちの鍵を皿に並べた。事のに何度も探した鍵だった。結の分には、黄い魚のキーホルダーがついている。
私はそれだけして、娘のに返した。
「戻ってきたくなっても、勝に入るなよ」
「用事があれば、先に連絡します」
也は笑った。
「どうせ3ももたないだろ」
私は答えずにへた。優馬がトラックの横で待っていて、私の鞄を受け取ってくれた。扉が閉まっても、誰も振り返らなかった。
3が過ぎても、私たちは戻らなかった。
引っ越しから1週の夜、也の名が携帯の画面にた。着信が切れると、今度は義母の名が浮かんだ。
広告
おすすめ作品
-
完結第18話
結婚初夜、義母を助けた私を殴った夫の誤算
結婚初夜、夫の実家で義父が義母の首を絞める現場を目撃した公認会計士の直美。助けようとした彼女を、信じていた夫・翔太は平手打ちし、「見て見ぬふりを覚えろ」と命じた。直美は義母を病院へ運ぶが、夫一家は弁護士と金の力を使い、彼女の口を封じようと動き始める。そんな中、義母が密かに託していた記憶装置が見つかった。嫁姑|絶縁|親子関係|介護4.8万字5 331 -
完結第25話
母との同居後、妻が倒れた――医師が私だけ呼んだ理由
父を亡くした春樹は、一人暮らしの母・節子を心配し、妻の夏美と三人で暮らし始める。家事も母の通院もこなす妻を見て、同居はうまくいっていると思っていた。ところがある朝、夏美が突然倒れ、救急搬送される。医師に一人だけ呼ばれた春樹は、妻の体に起きていた異変を知らされる。変更された婦人科の予約、開かれなかった白い封筒、妻に任せきりだった家の用事。自分は家族を守っているつもりだったのに、何を見落としていたのか。人生逆転|嫁姑|夫婦|親子関係3.1万字5 314 -
完結第15話
認知症の父を選んだ私を捨てた夫、5年後の再会
「俺と、あのボケた親父。どっちを選ぶんだ?」 認知症と診断された父を支えようとした都子は、夫の一郎から離婚を突きつけられる。長年の夢だった洋食店の継承も難しくなり、介護と生活に追われる日々。それでも地域の支援を頼り、父の料理を生かした新しい仕事に挑戦する。 五年後、介護事業者の交流会で元夫と偶然再会。若く美しい社長の妻と子どもがいると自慢する一郎だったが、都子は彼が指さした女性をよく知っていた。嫁姑|夫婦|親不孝3.1万字5 483 -
完結第20話
60日間見舞いゼロの夫、退院した妻に600万円を要求
突然の心臓病で緊急手術を受け、生死の境をさまよった美桜。六十日間の入院中、夫も義母も義妹も一度として見舞いに来なかった。届くのは、義母への月六百万円の送金を催促する連絡ばかり。家族だと信じて尽くしてきた美桜は、ついに夫との決別を決意する。しかし剛田家の人々は、美桜の本当の素性も、自分たちの会社や豪邸が誰によって支えられているのかも知らなかった。兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|金銭問題2.4万字5 567 -
完結第15話
50万円で嫁がされた私、6年後に見た父の姿
昭和63年、教師になることを夢見ていた19歳の藤崎千春は、父が受け取った50万円の結納金と引き換えに、東北の山村へ嫁がされる。進学を諦め、過酷な農作業に追われる毎日。ところが、段ボールの底に隠していた受験参考書を義母に見つけられた日、千春の運命は思いがけない方向へ動き始める。夫と義父母の支えで夢を取り戻した千春は、6年後、教師となって実家へ帰る。しかし庭先で目にしたのは、かつて自分の進学を許さなかった父の、信じられない姿だった。第二の人生|親子関係|金銭問題2.4万字5 450 -
完結第20話
父の死後、姉に追い出された私が嫁いだ農家の秘密
五年間、父の介護を一人で担ってきた三十三歳の美咲。ところが父の死後、二人の姉は遺産の独占を企て、美咲に実家から出ていくよう迫った。失意の中、美咲は交際相手の米農家・宮田大輔との結婚を決意する。しかし嫁ぎ先には七千二百万円もの借金があり、姉たちからも貧乏農家の嫁だと嘲笑される。それでも夫と田んぼを守ろうと決めた美咲に、大輔は「明日、俺の仕事場を見てほしい」と告げる。翌朝、連れていかれた巨大な倉庫で、美咲は思いもよらない光景を目にする――。夫婦|相続|絶縁|親子関係2.6万字5 540 -
完結第17話
忘れたコートが教えてくれたこと
結婚式まであと3週間。高橋ゆいは婚約者・博人の実家に忘れたコートを取りに戻り、衝撃的な会話を耳にする。食卓に広げられていたのは、祖母から相続した自分のマンションを、博人の実家が営む会社の追加担保にする計画書だった。しかも本人への説明は「婚姻後1週間」の予定。14人の従業員を守るためだと訴える婚約者の母と、すべてを知りながら黙っていた博人。人生逆転|裡切られた|夫婦|真相|修羅場2.0万字5 436 -
完結第22話
「祖母が危篤」と10万円を求めた夫の大嘘
双子を出産してわずか3週間。看護師の雪乃は、夫の幸一から「祖母が危篤だから10万円ほしい」と頼まれる。ところが本人に電話すると、83歳の松江は畑仕事の真っ最中。「またあの子は私を死にかけにしたのかい」と呆れた声を上げた。夫の嘘をきっかけに、雪乃は生活費の口座から多額の貯金が消えていることに気づく。祖父母と孫|夫婦|第二の人生2.8万字5 666 -
完結第20話
死んだ母を名乗る女
母を亡くして二年。三十歳の浅沼美咲は、空き家となった実家を片付けている最中、郵便配達員から思いがけない言葉を告げられる。「先月もお母様にお会いしましたよ」。亡くなったはずの母を名乗り、郵便物を受け取っている女がいるというのだ。家の中に残された生活の痕跡、天井裏から聞こえる不審な物音、そして母宛てに繰り返し届く現金書留。兄とともに調べ始めた美咲は、疎遠だった叔母の影と、母の遺産をめぐる不穏な思惑に気づく。死者の名を使ってまで隠そうとした秘密とは。真相|親子関係2.3万字5 1248