"「子供3人は全員連れてけ」と言った夫へ" 第8話
最のページ
数週の夜、也から『母さんが入院した』というメッセージが届いた。私は仕事の画面を閉じ、すぐに話をかけた。
「識はあるの?」
「ある。話もできる。めまいがして、病院で診てもらったんだ。検査でしばらく入院するって」
私は子に座った。汐見央病院だと聞き、次の連絡は也が受けることも確認した。話の向こうでは、靴音と自ドアの音がなっていた。
「今までの血圧の記録はないかって聞かれたんだよ。は持ってきていたはずだって」
「引きしにあります。テレビ台の、の段です」
「母さん、自分じゃ分からないって」
「そこに結がしまっていました。渡したにもいてあります」
話の向こうが静かになった。也はしして、「結が?」と聞き返した。
「表に『おばあちゃんの血圧』っていてあるノートです」
「あいつが、いてたのか」
私は居の方を見た。結はソファで本を読み、片方の靴が脱げかけていた。あので毎朝、義母の部まで歩いていた。
「2くらいからです。病院で先に見せていたのも、そのノートです」
也は、へ戻って探すと言って話を切った。
翌朝、私の携帯に写真が届いた。最初のページには、きさの揃わない鉛の数字が並んでいた。測定値の横に、『今はあたまがいたいっていってた』といてある。
広告
写真は何枚も続いた。付のには、そのの様子や、薬をんだか確かめたい言葉が残っていた。ページがむと文字がしずつさくなり、罫線のに収まるようになっていく。
そこへ也から話がかかった。
「これ、ずっと結の字だよな」
「そうです」
「途から母さんがいてるんじゃないのか」
私は届いた写真をき直した。鉛で消してき直した跡も、字の癖も、結のものだった。
「お母さんは記録が分からないとおっしゃったんですよね」
をめくる音がした。也はしばらく黙り、それからい声で言った。
「俺、母さんが自分でつけてるんだとってた」
2、血圧計を買ってきた、結はボタンを押す役をやりたがった。最初は私と緒だった。それが毎朝の担当になり、義母は腕をして待つようになった。
『くして。朝からうるさいわね』
廊へ通る声を、私は台所で何度も聞いた。朝の支度や洗濯を優先して、で結を褒めれば済むとっていた。
「結が、毎朝やってくれてたのか」
也が言った。私はすぐに返事ができなかった。をた今なら、この子がずっと引き受けなくてもよかった仕事だと分かる。
「最のページも、送る」
届いた写真の付は、引っ越しただった。私は画面を拡した。の空いているところに、いつもより丁寧な字でがいてある。
広告
『あしたからけないかもしれません。ごめんなさい。』
私は携帯を持ち直した。あの、結はテレビのにしゃがんでいた。何かをき終えてからノートを閉じ、呼ばれるとすぐにちがった。
忘れ物をしていたのではなかった。自分をうるさいと言ったへ、もう来られないことを謝っていた。
「なんで、あいつが謝ってるんだよ」
也の声が崩れた。話の向こうで、子を引く音がした。
「2もやって、最までこんなこと」
私は写真を閉じずに答えた。
「結が謝ることではありません」
也は何か言いかけたが、声にならなかった。私は元の写真を保した。
「そのノートを病院へ持っていってください。いたのが誰かも、きちんと伝えてください」
「母さん、何て言うかな」
「お母さんにわせて、結がいたことまで消さないでください」
也はく黙ってから、「分かった」と答えた。
話を終えると、結が台所へ来た。病院のことは昨夜、私から伝えてある。結は麦茶を注ぎながら聞いた。
「おばあちゃん、お薬ちゃんとんでる?」
「今は病院のに診てもらってるよ。退院したのことは、パパが相談する」
結は頷き、コップを持って戻っていった。私はその背を見送った。あの子の優しさに頼っていたのは、義母だけではない。
美代子が退院した数、結の携帯に着信があった。
画面を見せに来た娘のを、私は止めなかった。
「おばあちゃんから。てもいい?」
「うん。話したければ、ていいよ」
広告
おすすめ作品
-
完結第18話
結婚初夜、義母を助けた私を殴った夫の誤算
結婚初夜、夫の実家で義父が義母の首を絞める現場を目撃した公認会計士の直美。助けようとした彼女を、信じていた夫・翔太は平手打ちし、「見て見ぬふりを覚えろ」と命じた。直美は義母を病院へ運ぶが、夫一家は弁護士と金の力を使い、彼女の口を封じようと動き始める。そんな中、義母が密かに託していた記憶装置が見つかった。嫁姑|絶縁|親子関係|介護4.8万字5 331 -
完結第25話
母との同居後、妻が倒れた――医師が私だけ呼んだ理由
父を亡くした春樹は、一人暮らしの母・節子を心配し、妻の夏美と三人で暮らし始める。家事も母の通院もこなす妻を見て、同居はうまくいっていると思っていた。ところがある朝、夏美が突然倒れ、救急搬送される。医師に一人だけ呼ばれた春樹は、妻の体に起きていた異変を知らされる。変更された婦人科の予約、開かれなかった白い封筒、妻に任せきりだった家の用事。自分は家族を守っているつもりだったのに、何を見落としていたのか。人生逆転|嫁姑|夫婦|親子関係3.1万字5 314 -
完結第15話
認知症の父を選んだ私を捨てた夫、5年後の再会
「俺と、あのボケた親父。どっちを選ぶんだ?」 認知症と診断された父を支えようとした都子は、夫の一郎から離婚を突きつけられる。長年の夢だった洋食店の継承も難しくなり、介護と生活に追われる日々。それでも地域の支援を頼り、父の料理を生かした新しい仕事に挑戦する。 五年後、介護事業者の交流会で元夫と偶然再会。若く美しい社長の妻と子どもがいると自慢する一郎だったが、都子は彼が指さした女性をよく知っていた。嫁姑|夫婦|親不孝3.1万字5 483 -
完結第20話
60日間見舞いゼロの夫、退院した妻に600万円を要求
突然の心臓病で緊急手術を受け、生死の境をさまよった美桜。六十日間の入院中、夫も義母も義妹も一度として見舞いに来なかった。届くのは、義母への月六百万円の送金を催促する連絡ばかり。家族だと信じて尽くしてきた美桜は、ついに夫との決別を決意する。しかし剛田家の人々は、美桜の本当の素性も、自分たちの会社や豪邸が誰によって支えられているのかも知らなかった。兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|金銭問題2.4万字5 567 -
完結第15話
50万円で嫁がされた私、6年後に見た父の姿
昭和63年、教師になることを夢見ていた19歳の藤崎千春は、父が受け取った50万円の結納金と引き換えに、東北の山村へ嫁がされる。進学を諦め、過酷な農作業に追われる毎日。ところが、段ボールの底に隠していた受験参考書を義母に見つけられた日、千春の運命は思いがけない方向へ動き始める。夫と義父母の支えで夢を取り戻した千春は、6年後、教師となって実家へ帰る。しかし庭先で目にしたのは、かつて自分の進学を許さなかった父の、信じられない姿だった。第二の人生|親子関係|金銭問題2.4万字5 450 -
完結第20話
父の死後、姉に追い出された私が嫁いだ農家の秘密
五年間、父の介護を一人で担ってきた三十三歳の美咲。ところが父の死後、二人の姉は遺産の独占を企て、美咲に実家から出ていくよう迫った。失意の中、美咲は交際相手の米農家・宮田大輔との結婚を決意する。しかし嫁ぎ先には七千二百万円もの借金があり、姉たちからも貧乏農家の嫁だと嘲笑される。それでも夫と田んぼを守ろうと決めた美咲に、大輔は「明日、俺の仕事場を見てほしい」と告げる。翌朝、連れていかれた巨大な倉庫で、美咲は思いもよらない光景を目にする――。夫婦|相続|絶縁|親子関係2.6万字5 540 -
完結第17話
忘れたコートが教えてくれたこと
結婚式まであと3週間。高橋ゆいは婚約者・博人の実家に忘れたコートを取りに戻り、衝撃的な会話を耳にする。食卓に広げられていたのは、祖母から相続した自分のマンションを、博人の実家が営む会社の追加担保にする計画書だった。しかも本人への説明は「婚姻後1週間」の予定。14人の従業員を守るためだと訴える婚約者の母と、すべてを知りながら黙っていた博人。人生逆転|裡切られた|夫婦|真相|修羅場2.0万字5 436 -
完結第22話
「祖母が危篤」と10万円を求めた夫の大嘘
双子を出産してわずか3週間。看護師の雪乃は、夫の幸一から「祖母が危篤だから10万円ほしい」と頼まれる。ところが本人に電話すると、83歳の松江は畑仕事の真っ最中。「またあの子は私を死にかけにしたのかい」と呆れた声を上げた。夫の嘘をきっかけに、雪乃は生活費の口座から多額の貯金が消えていることに気づく。祖父母と孫|夫婦|第二の人生2.8万字5 666 -
完結第20話
死んだ母を名乗る女
母を亡くして二年。三十歳の浅沼美咲は、空き家となった実家を片付けている最中、郵便配達員から思いがけない言葉を告げられる。「先月もお母様にお会いしましたよ」。亡くなったはずの母を名乗り、郵便物を受け取っている女がいるというのだ。家の中に残された生活の痕跡、天井裏から聞こえる不審な物音、そして母宛てに繰り返し届く現金書留。兄とともに調べ始めた美咲は、疎遠だった叔母の影と、母の遺産をめぐる不穏な思惑に気づく。死者の名を使ってまで隠そうとした秘密とは。真相|親子関係2.3万字5 1248