"昨日まで正しかった教科書" 第4話
《それから先。もし僕が帰れなかった、誠には、僕が何でも正しいとってていったとは言わないでください。実は僕も、分からないことばかりです。》
のが止まった。
誰も言葉を発しなかった。
誠は兄が「分からないことばかり」といたを理解できず、しばらく便箋を見つめていた。
静子がさく言った。
「この子、そんなこと何もいてなかった……へのには」
は最の数をもう度見た。
そこには族宛ての便りにはかなかった、健の迷いが確かに残っていた。
そして、そのにもう文あった。
《先には、征のに僕が舎の裏で見たことも、覚えているうちに話しておきたかった。》
の顔が変わった。
誠がそれを見逃さなかった。
「先?」
は便箋を折りかけた。
「今は、ここまでにしよう」
「なんで?」
「坂井」
「兄ちゃん、何を見たっていてあるんですか」
は答えなかった。
静子も審そうに教師を見た。
「先。何かごじなんですか」
はい黙っていた。
やがて、便箋を机へ置いた。
「、授業が終わったら、誠君とお母さんに話します」
「今じゃ駄目なんですか」
「今は……私自が理できていません」
誠の胸に、昨までとはまったく違う疑問がまれた。
兄は征、学の裏で何を見たのか。
なぜ、それをへ伝えようとしたのか。
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そして何より。
その文を読んだ瞬。
先はなぜ、あんな顔をしたのか。
その夜、誠はほとんど眠れなかった。
翌の授業。
はいつもと違っていた。
教科をいても何度か言葉につまり、黒板へいた文字を途で消し直した。徒たちは昨の墨塗りの続きを待っていたが、は午、その話に度も触れなかった。
昼休み、誠はできず職員へった。
「先。昨の続き、教えてください」
は周囲の教師を見た。
「放課に話すと言っただろう」
「でも、兄ちゃんのことです」
「坂井」
「僕だってる権利があります」
はしばらくを見つめた。
昔の健と同じ目だとった。
疑問をみ込まない。
納得できなければ、へも尋ねる。
はさく息を吐いた。
「分かった。ただし、お母さんも緒にだ」
放課。
静子が学へ来た。
の岸も同席した。
は昨の便箋を机のへ置いた。
「健君が見たのは、私が古い教材を焼いているところだったといます」
「教材を?」
静子が尋ねた。
「戦争が始まってから、学にはいろいろな通や冊子が届きました。授業で使う資料もあれば、教師向けの指導もありました」
終戦ではない。
健が征する。
昭19。
はある、舎裏で数冊の冊子を燃やしていた。
からの指示で廃棄するよう言われたものだった。
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しかし健は、それを偶然見てしまった。
「何で燃やしてるんですか」
は驚いた。
見られてはいけないものを見られた気がした。
「古いものだからだ」
「昨まで使ってたのに?」
健は言った。
は「余計なことを気にするな」と追い返した。
そののことを、健は覚えていたのだ。
「先」
誠が言った。
「そのも、昨まで使ってたものを捨てたんですか」
「そうだ」
「じゃあ、今と同じじゃないですか」
は反論できなかった。
岸が静かにをいた。
「学では、代が変われば使う教材も変わります。珍しいことではありません」
誠はを見た。
「でも、昨まで正しいって言ったものを、どうして違ってたか説しないで消すのは同じじゃないですか」
岸は黙った。
は便箋をもう度いた。
「健君は、あのからずっと気になっていたんだとう」
にはこう続いていた。
《先が燃やしていた本のに、僕が学で読んだものがありました。どうして昨まで使ったものを急に燃やすのか聞いたけど、先は答えてくれませんでした。今度帰ったら聞こうとっています。》
さらに、
《もしこれから先、僕たちが今信じているものまで誰かが燃やすが来たら、その、先は何と言うのだろう。》
とあった。
は読むのをやめた。
静子が顔を伏せた。
「健は、そんなことを考えてたんですね」
「私も今、初めてりました」
誠は机のの教科を見た。
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