"13歳の娘だけ、保険証にいなかった" 第5話
では病気の修の母を抱えていた。
美津子はまだ幼い。
働かなければべていけない。
「そのうちにね」
子は膝ののを握った。
「美津子が私を、お母ちゃんって呼ぶようになったの」
歳を過ぎた頃だった。
「修さんをお父ちゃんって呼んで、所のも藤井の子だとうようになって、幼稚園も学もこのから通った。そうしてるうちに……」
「何?」
「が違ってても、この子は私たちの子なんだからってうようになった」
美津子は黙った。
修がい声で言った。
「するに、俺たちが逃げたんだ」
子が夫を見た。
「そんな言い方……」
「そうだろ」
修は娘から目を逸らさなかった。
「難しい話をしなくても、美津子は毎うちへ帰ってくる。父ちゃんと呼ぶ。子を母ちゃんと呼ぶ。それでして、面倒なことを先へ延ばした」
「じゃあ、忘れたっていうより……」
「見ないようにした」
修は認めた。
美津子は元の養子縁組届を見た。
それまで「13忘れられていた」とっていた。
実際には違った。
両親は最初、いていた。
けれど途で疲れ、争いを避け、常が続くことに甘えた。
その違いをどう受け止めればいいのか、美津子にはまだ分からなかった。
「は?」
突然尋ねた。
修はし驚いた。
「何?」
「にいてあると預。今どうなってるの」
子の表が曇った。
「それも、はっきりしてないの」
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「また?」
「清さんがくなったあと、部は借の理に使われたらしい。でも残ったものについて、定雄さんからちゃんと説を受けてない」
美津子はを見た。
「その、今もきてる?」
「きている。隣の郡にいる」
「会ったことある?」
「さい頃に度だけ」
「私は覚えてない」
「まだ歳になるだったから」
美津子はく息を吐いた。
族だとっていたには自分の名がない。
方、自分を「野の子」と主張したたちは、育ててもいない。
13歳の自分が、つののに置き忘れられているような気がした。
「私、そのに会いたい」
子が顔をげた。
「美津子」
「聞きたい。どうして私を自分のへ入れなかったのに、こっちのの子になるのを止めたのか」
修は止めなかった。
「分かった」
子だけがそうだった。
「でも美津子、聞いて気持ちいい話じゃないかもしれないよ」
「今だって気持ちよくないよ」
娘の返事に、子は何も言えなくなった。
そのから。
保険証の抜けは。
単なる役所の違いではなくなった。
美津子は初めて。
自分がまれてから13。
たちが何を決め。
何を決めなかったのかを。
自分で確かめようとった。
次の曜、修と美津子はで野定雄を訪ねた。子もくと言ったが、美津子は「今はお父ちゃんとく」と答えた。にしてから自分でもし驚いたが、修は何も言わず、ただ「分かった」
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と頷いた。
定雄のは同じ野県内でもをつ越えた集落にあった。古い瓦根の農で、庭には農具や薪が積まれている。美津子が像していた「別の族」はもっと特別な所だったが、実際に見ると自分の町と変わらない普通のだった。
定雄は60歳くになっていた。
修を見ると表がくなった。
「久しぶりだな」
「今は美津子を連れてきた」
その名を聞いた瞬、定雄は女の顔を見た。
い。
言葉がなかった。
「さんに似てきたな」
最初にたのは、その言だった。
「母をってるんですか」
「義理の妹だったからな」
「お父さんのことも?」
「ああ」
へがると、定雄の妻がお茶をした。奥からくらいのが度顔を見せたが、すぐに引っ込んだ。
定雄には今、息子がいる。
それをっただけで、美津子の胸に奇妙なが湧いた。
「私を藤井の養女にするの、反対したんですよね」
美津子は回しに聞かなかった。
定雄は修を見た。
「全部話したのか」
「話すのが遅すぎたくらいだ」
修が答えた。
定雄はしばらく黙っていた。
「当は、清の子を野からしたくなかった」
「だったら、どうしてここで育てなかったんですか」
13歳の女に真正面から聞かれ、定雄の顔がこわばった。
「それは……うちにも事があった」
「みんなそれ言うんですね」
美津子は自分でも驚くほどたい声をした。
「お父ちゃんたちも事があった。
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