"13歳の娘だけ、保険証にいなかった" 第8話
修は認めた。
「でもそれで、俺が13父親だったことが消えるのか?」
徳蔵は何も言えなかった。
「相続が変わるから娘じゃないと言うなら、13分の父親も返せと言うのか」
部が静まり返った。
美津子は障子の向こうで、両を握っていた。
「返せるなら返してみろ」
修の声が震えた。
「した夜も、運会も、喧嘩したも、初めて父ちゃんって呼ばれたも、全部返せるならな」
徳蔵は線を落とした。
しばらくして、「俺は現実の話をしただけだ」と言った。
「俺も現実の話をしてる」
修は答えた。
「のだけ親になるんじゃない。のだけ、今まで親じゃなかったことになってるのを直すんだ」
徳蔵はそれ以何も言わず帰った。
玄関が閉まったあと。
美津子は隣の部からた。
修は驚いた。
「聞いてたのか」
「うん」
「そうか」
気まずそうにをかいた。
美津子は父のへ座った。
「お父ちゃん」
修が顔をげた。
何週ぶりに聞く呼び方だった。
「さっきの、本気?」
「何が」
「子どもはって」
「何で嘘つくんだ」
美津子は唇を噛んだ。
「だったら、私もつ決めたい」
「何を?」
「養女にしてほしい」
子が元を押さえた。
美津子は続けた。
「でもさんと清さんのことも、なかったことにはしたくない。写真も持ってたいし、野のおじさんからも、もっと話を聞きたい」
修は頷いた。
「そうしろ」
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「藤井の娘になってもいい?」
「おが決めることだ」
美津子は初めて。
たちに決められるのではなく。
自分で。
自分の族を選んだ。
養子縁組の準備がむ、美津子は子とでの墓を訪れた。幼い頃に度連れてこられたことがあるらしいが、美津子には記憶がない。裾のさな寺の墓にある墓ので、子は持ってきたを供え、い黙ってをわせていた。
「ここが、お母さんのお墓?」
美津子が尋ねると、子はし迷ってから頷いた。
「姉さんのお墓」
「お母さんって呼んじゃ駄目?」
子の指が止まった。
美津子はその表を見て、すぐに言い直そうとした。
「ごめん」
「違うの」
子は首を振った。
「駄目じゃない。駄目じゃないんだけど……ちょっと怖かっただけ」
「何が?」
子は墓を見た。
「美津子が姉さんのことをったら、私がお母ちゃんじゃなくなる気がしてた」
それは、今まで誰にも言わなかった本音だった。
がくなった、子はしむ暇もなく赤ん坊を引き取った。夜泣きすれば抱き、をせば眠らず病し、初めて歩いたには修とでんだ。
最初は「姉さんの子を預かっている」という識だった。
けれど、と過ぎるうち、美津子は完全に自分の娘になった。
だから。
の写真を見るたび。
罪悪と同に。
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妙な嫉妬もあった。
「姉さんがきてたら、美津子は私の子じゃなかった」
子は正直に言った。
「そんなこと考える自分が嫌だった」
美津子は墓へしゃがんだ。
「私も分かんない」
「何が?」
「このがお母さんだって言われても、まだ実ない。でも写真を見ると、似てるってうし、もっとりたい」
子は頷いた。
「っていいのよ」
「でも、お母ちゃんがお母ちゃんじゃなくなるのも嫌」
子の目に涙が溜まった。
美津子はし照れながら続けた。
「いたら駄目なの?」
子は泣き笑いになった。
「欲張りだね」
「お母ちゃんに似たんじゃない?」
「そうかもしれない」
は墓で初めて、の話をゆっくりした。
は子どもの頃から気がかったこと。子が泣くと必ず守ってくれたこと。裁縫がだったのに料理だけは苦で、噌汁を何度も焦がしたこと。
清と会った。
は初めて妹へ恋の相談をした。
「清さんは数なかったけど、姉さんが言うには優しいだった」
「本当に私のこと抱いてた?」
「何度も」
「覚えてる?」
「もちろん。体が悪いのに、ずっと抱いてた」
美津子は写真の父をいした。
帰宅すると、修が役からしい類を持ってきていた。
「美津子、おの署名が必なところがある」
13歳の自分がく名。
《野美津子》
その横には。
続きが終われば使うことになる。
《藤井美津子》
という名があった。
美津子はを持ちながらしを止めた。
「お父ちゃん」
「何だ」
「野って名、なくなるの?」
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