"失踪した妻を道の駅で見つけた――「来ないで」と怯えた理由" 第4話
「じゃあ何なんだ」
結は唇を震わせた。
その、杏奈が歩へた。
「ママ」
さなを伸ばす。
「杏奈、いい子にしてたよ」
結の目から、粒の涙が落ちた。
「ってる……」
わずにしたらしい。
私は息を止めた。
杏奈も気づいた。
「やっぱりママだ!」
結は顔を覆った。
「ごめんなさい」
「ママ!」
「ごめん……ごめんなさい……」
杏奈がりそうとする。
結は急に顔をげた。
「駄目!」
子の輪へをかける。
「くここから逃げて!」
「何から?」
「お願い!」
「誰かに脅されてるのか?」
結は答えない。
「俺たちまで危ないのか?」
その瞬。
彼女が私を見た。
恐怖。
絶望。
それだけで、私は確信した。
「結」
もう歩づく。
「は、自分のでいたんじゃないな」
彼女の唇が震えた。
「誠さん……」
半ぶりに、私の名を呼んだ。
杏奈が泣きながら言う。
「ママ、緒に帰ろう」
結は両で顔を覆った。
「帰れない」
「どうして」
「帰ったら……」
言葉が止まる。
くからエンジン音がした。
ただの配送だった。
しかし結は異常なほど怯えた。
「来た」
「何が?」
「逃げて!」
子を急にかした。
「結!」
「あなたたちまで消される!」
私はその言葉にけなくなった。
消される。
誰に?
何をっている?
結は必に輪を回した。
古い子。
片方の輪が軋んでいる。
「待て!」
「来ないで!」
彼女はろを気にしながらんだ。
駐の端に、排溝の段差がある。
「結、!」
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気づかない。
輪が段差へぶつかった。
子がきく傾いた。
結の体が投げされる。
「ママ!」
私はった。
が面へ落ちる寸。
両腕で受け止めた。
膝がアスファルトへくぶつかる。
痛み。
だが、それより。
腕のの体の軽さに愕然とした。
半。
最に抱きしめた結とは違う。
背は骨ばっている。
肩も腕も細い。
なのに、皮膚がたい。
「結」
彼女は目を閉じていた。
「丈夫か?」
ゆっくり目をける。
距で目がう。
もう逃げられない。
結の目が崩れた。
「……誠さん」
「俺だ」
「ごめんなさい」
「何で謝る」
「私……」
声が震える。
「あなたたちを捨てたんじゃない」
「分かってる」
「本当は、ずっと会いたかった」
私は彼女を抱きしめた。
結はしばらく抵抗した。
「駄目」
「もうさない」
「危ないの」
「誰が」
「緒にいたら……」
震える声。
「あなたと杏奈まで殺される」
私は体の芯がえるのをじた。
杏奈がそばへ来た。
「ママ」
結が顔を向ける。
娘を見る。
半保っていた何かが、完全に崩れた。
「杏奈……」
を伸ばす。
杏奈はその腕のへび込んだ。
「ママ!」
「ごめんね」
「どこってたの」
「ごめんね……」
母と娘が抱きう。
私は言葉を挟まなかった。
結の肩が刻みに震えている。
しばらくして。
彼女は杏奈の髪を撫でながら、私を見た。
「誠さん」
「うん」
「私……」
喉が詰まる。
「父と兄に、殺されかけたの」
蝉の声だけが、やけにきく響いていた。
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私は結をへ戻した。
売でたいを買い、タオルを濡らす。
杏奈は母のを握ったままれようとしない。
「まず病院へこう」
私は言った。
「話はあとでいい」
結は首を振った。
「このくは駄目」
「どうして」
「父の会社と付きいがあるところがいの。私が見つかったって伝わるかもしれない」
「誰が監してるんだ」
「分からない」
結は駐を見た。
「分からないから怖いの」
その言葉がかった。
半。
誰が方か。
誰が父に通じているか。
分からないままきてきたのだ。
「話せるところだけでいい」
私は結のへしゃがんだ。
「何があった」
しばらく沈黙したあと。
結はをいた。
失踪したの午。
父・宗郎から話が来た。
《会社のことでな話がある。お1で来い》
珍しいことだった。
結は業へ関わっていない。
ただ、くなった祖父から定数の株を相続していた。
「おじいちゃんはね、女だからって理由で私を何も持たないにしたくなかったみたい」
結が言う。
「会社を継ぐ気はなかった。でも株を持っていれば、父や兄が何かしたに止められるかもしれないって」
私は初めて聞いた。
結自も、普段はの話をしたがらなかった。
「その株が邪魔だった?」
結が頷く。
吉兼産業は数から資繰りが厳しかった。
会社をて直す過程で、宗郎と武志は資本政策をめていた。
結の持つ株式と将来の相続権が、武志へ経営権を本化する際の障害になっていた。
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