"失踪した妻を道の駅で見つけた――「来ないで」と怯えた理由" 第9話
宗郎は私を見る。
「いくら欲しい」
私は聞き違えたとった。
「何?」
「だ」
宗郎は震えながら言う。
「1000万でりないなら、もっとす」
「まだそれですか」
「1億」
武志が父を見る。
「父さん!」
「黙れ!」
宗郎は必だった。
「2億でもいい。会社の株も渡そう」
私は笑ってしまった。
「あなたは本当に、何でもで買えるとっているんですね」
「誠君。族の話だ」
「族?」
声がくなった。
「娘を崖から突き落とし、歩けない体にして、夫と5歳の子どもを脅迫材料にして半閉じ込めた。それがあなたの族ですか?」
宗郎は何も言わない。
「杏奈まで会社の権利をまとめるために利用しようとした」
武志が言う。
「会社を守るためだったんだ!」
「結より会社が事だった?」
「おには分からない!」
「分かりたくもありません」
武志が私を睨んだ。
「調子に乗るな。たかが会社員のくせに」
宗郎が止めようとした。
「武志」
しかし。
私はその言葉を待っていた。
「そうですね」
内ポケットへを入れる。
名刺を1枚。
テーブルへ置く。
武志が拾った。
読んだ。
首を傾げた。
もう度見る。
顔が変わる。
「……何だ、これ」
宗郎が名刺を取る。
会社名。
肩き。
彼はっている。
吉兼産業へ資を入れた会社。
「嘘だ」
武志が言う。
「おが?」
私は答えた。
「吉兼産業へ3に支援した約300億円。その投資判断を最終承認したのは私です」
宗郎のから、名刺が落ちた。
広告
「ありえない」
武志は何度も言った。
「おは普通の会社員だ」
「会社員ですよ」
私は答えた。
「勤務先の規模と役職を、あなたたちに詳しく説しなかっただけです」
「じゃあなぜ……」
「結が、柄やで関係が変わるのを嫌っていたからです」
宗郎が声を絞りした。
「本当に……あのファンドの」
「確認しますか?」
話をかける。
佐々。
スピーカー。
「はい、代表」
宗郎の肩が落ちた。
「吉兼産業案件について」
私は淡々と指示する。
「刑事事件の証拠を法務へ送った。契約のリスク審査を正式に始してくれ」
「承しました」
「ただし、従業員の雇用と継続能な事業は守る。経営者個の問題と会社を切りす案を優先しろ」
宗郎が私を見る。
予していたのと違ったのだろう。
私は話を切った。
「会社を潰さないのか」
「なぜ潰すんです?」
「私たちに復讐するために……」
「従業員は何もしていない」
私は言った。
「あなたたちを罰するために、関係のない社員をに迷わせるつもりはありません」
武志がを挟む。
「なら、俺たちも――」
「それは別です」
「何?」
「あなたたち個には、刑事責任を取ってもらう」
宗郎がちがった。
「待ってくれ」
「何を」
「会社から私たちをすつもりか」
「私が決めることではありません。取締役会、融関、株主、契約条件、全部を踏まえて判断されます」
「だったら止めろ!」
広告
初めて。
宗郎が私へをげた。
「頼む」
武志が驚く。
「父さん」
「会社だけは」
宗郎の声が震える。
「私が何かけて作ったとってる」
私はその言葉を聞き。
結がの駅で見せた痩せたをいした。
「結のは?」
宗郎が顔をげた。
「何かければ戻るんですか」
答えられない。
「半失った杏奈と母親のは?」
沈黙。
「あなたが何かけて会社を作ったことはりません。でも、それを守るためなら何をしてもいいという理由にはならない」
その。
からが入ってくる音がした。
武志が窓へる。
「警察……」
宗郎が私を見る。
「誠君」
「私が呼んだというより」
私は答えた。
「結の被害申告と録音を受けて、正式にいたんです」
数分。
捜査員が敷へ入った。
宗郎は最初、威圧に抵抗した。
「私は元の経済にどれだけ貢献してきたとっている」
担当刑事は表を変えなかった。
「それと今回の件は関係ありません」
武志は逆だった。
急に父親を指さした。
「俺は父に言われただけだ!」
宗郎が振り向く。
「何を言う!」
「父さんが株をまとめろって!」
「突き落としたのはおだろう!」
「止めなかっただろ!」
私は2を見ていた。
りより。
疲れをじた。
これが結を苦しめたたちなのか。
族。
誇り。
血筋。
そんな言葉を振り回していた2が。
追い詰められた瞬。
父と息子で罪を押しつけっている。
刑事が言った。
「詳しい話は署で聞きます」
武志が私を見る。
「誠! 助けろ!」
私はかなかった。
「おなら止められるだろ!」
広告
おすすめ作品
-
完結第14話
離婚した直後、奪われていた80億円が戻った――元夫の結婚式で私が取り返したもの
「君は古い設計図を抱えた建築士に戻るだけだ」 離婚成立の日、元夫はそう笑った。 その10分後、私の口座に入ったのは――80億円。 それは慰謝料でも、遺産でもない。 父と私から奪われ、別会社へ隠されていた特許使用料だった。 同じ夕方、元夫は愛人との豪華な披露宴を開いた。 新婦の首には、私の母が遺したダイヤのネックレス。 元夫は映像の中で「過去を手放し、未来へ進む」と微笑んだ。 しかし6分後、巨大スクリーンが突然暗転する。 《泰成建設 独立監査報告》 白い文字が浮かんだ瞬間、元夫の顔から笑みが消えた。 そして一本の電話を受けた彼は、膝から崩れ落ちた――。 (続)夫婦|真相|不倫2.0万字5 7 -
完結第11話
息子に捨てられた母の逆転
「お母さん、今日は少し外へ出ませんか」 息子夫婦に誘われ、70歳のはる子は雪の降る夜、車の後部座席へ乗った。 ところが車は町を離れ、山沿いの介護ホームの前で止まった。 「数日だけ、ここで休んでください」 そう言われた時、トランクから自分のスーツケースが出てきた。 荷物はいつの間にか詰められ、携帯電話は嫁に取り上げられた。 息子は「また来るから」と言い残し、母を301号室へ置いて帰った。 翌日、嫁は面会に来るなり尋ねた。 「通帳はどこですか? 実印は?」 さらに、見覚えのない白い錠剤を「いつもの薬」として渡してきた。 はる子は黙って薬を受け取り、認知症のふりを始めた。 そして翌日の病院で、嫁が電話口で話す声を聞く。 「診断が出たら、家も通帳も動かしやすくなるでしょう」 はる子はその会話を、コートの内側に隠した一本の録音機へ残していた。因果応報|人生逆転|嫁姑|絶縁|親子関係|介護|金銭問題1.7万字5 26 -
完結第11話
母が残した最後の住所
母を亡くした14歳の俺には、頼れる人が誰もいなかった。 父は幼い頃に亡くなり、母は朝から夜まで働き続けていた。 葬儀の後、親戚にも「うちでは面倒を見られない」と断られた。 一人になった部屋で母の遺品を整理していると、古い桐の箱から一枚のメモが出てきた。 《本当に一人になった時だけ、この場所へ行きなさい》 書かれていた住所は、隣の市の山手にある大きな屋敷だった。 俺は制服のまま、片道2時間近くかけてその場所へ向かった。 石造りの門柱には、母が一度も口にしたことのない名字が刻まれていた。 帰ろうとした、その時。 重い門がゆっくり開き、黒い服の老人が現れた。 老人は俺の顔を見るなり、深く頭を下げた。 「坊っちゃま、お待ちしておりました」 母が隠していたのは、いったい何だったのか。 (続)人生逆転|相続|第二の人生|金銭問題1.7万字5 82 -
完結第10話
空っぽの弁当箱
「5万円の居候でしょ?」 そう笑われながら、58歳の私は毎朝5時に起き、息子一家4人分の弁当を3年間作り続けた。 息子の好物、嫁の職場向けの彩り、孫の部活用のおにぎりまで、全部私が考えていた。 食費や学校用品も、足りない時は自分の財布から払った。 それでも家族から返ってくるのは、「家事くらいちゃんとしてよ」という言葉だけ。 迎えた58歳の誕生日、誰も私の誕生日を覚えていなかった。 「今日で、この家の家事係を降ります」 そう告げても、息子は「またすねてる」と笑った。 その夜、私は誰にも何も言わず、自分の荷物だけをまとめた。 翌朝、台所に並んでいた4つの弁当箱は、すべて空っぽだった。 冷蔵庫には、短いメモが一枚だけ残されていた。 そして家族は初めて、私が毎月5万円以外に何をしていたのかを知ることになる。因果応報|人生逆転|嫁姑|第二の人生|親子関係|金銭問題1.4万字5 51