"「名前を書くな」公害病の申請を止めた父と、娘の「息がしたいだけ」" 第3話
忠雄が子へ座ると、吉岡はいつになく柔らかい声で切りした。
「井君。来度、保全の班を増やす話がている」
忠雄はわず背筋を伸ばした。
18働いて、初めて具体にた昇の話だった。
班になれば当がつく。
々の料がしがる。
それだけでなく、社宅の抽選でも利になる能性がある。
芳は何もから言っていた。
「美紀のためにも、もうし空気のいいところへ引っ越せないかしら」
そのたび忠雄は、
「もうし待て」
と答えてきた。
料ががれば。
駅をつれた所に。
さくてもいいから。
部を借りられるかもしれない。
ようやく。
その「もうし」が。
終わるかもしれなかった。
「おは現がいし、若い連も話を聞く。候補のには入ってる」
「ありがとうございます」
忠雄はをげた。
吉岡は煙を皿へ押しつけた。
「ただな」
忠雄が顔をげた。
「最は公害の話で会社も神経質になってる。町内でもいろいろあるだろ」
「はい」
「君のでも、何か申請を考えてるって聞いた」
忠雄は子の背から体を起こした。
「誰からですか」
「噂だよ。会社が社員の庭を調べてるわけじゃない」
吉岡は両をげるような仕をした。
「誤解するなよ。申請するななんて言うつもりもない。そういうのは庭のことだからな」
忠雄は黙っていた。
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「ただ、班になれば会社と域のにつこともある。現のをまとめるにもなる。そこは、いろいろ考えてしてほしいということだ」
言葉は穏やかだった。
申請したら班にしないとは言っていない。
申請をやめれば昇させるとも言っていない。
それでも。
忠雄には分だった。
「分かりました」
そう答えるしかなかった。
帰宅した、芳が忠雄の顔を見て尋ねた。
「何かあったの?」
「何もない」
「会社?」
「何もないって」
忠雄は普段よりく言い、作業着を脱いだ。
その夜。
美紀はまた咳をした。
襖の向こうから聞こえる乾いた咳を、忠雄は布団ので数えていた。
度。
度。
しばらく止まる。
また続く。
芳が起きがる音がした。
忠雄も起きようとしたが。
体がかなかった。
のには。
吉岡が言った。
「班」
という言葉と。
娘が言った。
「私、病気じゃないってこと?」
という言葉が。
交互に浮かんでいた。
翌朝。
忠雄は誰よりくへた。
まだ夜勤の者しかいない保全へ入り、鍵のかかった引きしから点検記録をした。
数かのページをめくる。
614。
72。
719。
そして。
美紀が夜にひどい発作を起こした。
87。
忠雄の指が止まった。
そのの欄には。
自分の字で。
い記録が残されていた。
《第3集じん設備 送異常。応急運転にて継続》
忠雄はその文字をしばらく見ていた。
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点検記録自体は秘密の資料ではない。設備に具があれば記録し、修理し、司へ報告するのが仕事だった。ただ、全体の運転を止めるほどではないと判断されれば、応急措置をしながら稼働を続けることも珍しくなかった。
87の故障もそうだった。
集じん設備の部に異常がた。
保全班は交換を提案した。
しかし部品の配にがかかり、操業計画も詰まっていた。
「完全に止まってるわけじゃない。応急で持たせろ」
そう言われた。
忠雄は現のだった。
全体を止める権限などない。
司の判断に従った。
数。
部品は交換された。
それで終わった話だと。
っていた。
同じ夜。
美紀は午2過ぎに激しく咳き込み、忠雄が自転で診療所へ連れていった。
もちろん。
設備の具と。
娘の発作が。
直接関係している証拠などない。
向きも違ったかもしれない。
ほかにもはいくつもある。
もっている。
美紀は以からぜん息だった。
忠雄自。
「たまたまだ」
と何度も考えた。
けれど。
忘れられなかった。
だから会社の正式記録とは別に、自分のさな黒い帳へ設備異常の付をき写していた。
誰かへ告発するためではない。
何かあった。
自分が忘れないためだった。
しかし、その記録が増えるにつれて。
忠雄は。
帳をくこと自体が。
嫌になっていた。
曜。
町内会館で公害健康相談の説会がかれた。
芳はでくつもりだった。
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