"「もう来なくていい」17歳の姉が偽名で働き続けた理由" 第3話
澄子はしばらくけなかった。
から突然された。
集団検診。
精密検査。
全部がつながった。
その夜、美代を寄宿舎裏の洗濯へ連れした。呂のを過ぎたためはなく、干し縄だけが夜に揺れている。
「これ、何」
を突きした。
美代の顔から血の気が引いた。
「どこで見つけたん」
「掛け」
「勝に見たん?」
「何で黙ってたの」
美代はを奪った。
「結核なん?」
「違う」
「じゃあ何なん」
「まだ分からん」
「精密検査っていてるやん」
美代は周囲を見回し、澄子へづいた。
「きい声さんといて」
「病院かなあかんやろ」
「精密検査せんと分からん。ただがあるって言われただけ」
「なら調べてもらえばええやん」
「かん」
澄子はを疑った。
「何で?」
美代はしばらく黙り、をさく折り畳んだ。
「もし本当に結核やったら、どうなるとう?」
「治してもらうんやろ」
「その、は?」
澄子は言葉を失った。
美代は続けた。
「今から、あんたのになるんやで。母ちゃんの薬はどうするん。正夫の学は? 郎の費は?」
「そんなの、あとで考えたらええやん」
「誰が考えるん?」
美代の声はっているようで、その実、怯えていた。
「姉ちゃんが病気なら、働いたらもっと悪なるやん」
「病気って決まってへん」
「だから検査するんやろ」
「決まったら終わりや」
美代は初めてそう言った。
「何が終わるん」
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「仕事」
「また治ったら働けるやん」
「何か? 半? ? その、はどうするん」
澄子は答えられなかった。
さらに美代は、から寄宿舎にも残れないと言われていることをかした。確定診断はまだていないが、染症の疑いがある以、勢が同じ部で暮らす寄宿舎へ置けないという会社の判断だった。
「ここもるん?」
「今週いっぱい」
澄子はそこで初めて理解した。
姉は仕事だけではない。
寝る所まで失おうとしていた。
「病院へけば、会社が何とかしてくれるんちゃうの」
「らん」
「聞こうよ」
「嫌や」
「なんで!」
美代は澄子を睨んだ。
「これ以、誰かに決められたないからや」
集団検診の翌朝。
説も分にされないまま職へ入れなくなった。
寄宿舎もるように言われた。
美代にとって「病院へけ」という言葉まで、自分の活を取りげる命令のように聞こえていた。
その3。
美代は呂敷つを持って寄宿舎をた。
「どこくの」
「りいのとこ」
「誰?」
「丈夫やから」
「所くらい教えてよ」
「決まったら言う」
美代は最まで答えなかった。
そして週。
姿を見せなかった。
美代がいなくなってから、澄子は仕事が終わるたび寄宿舎の裏を気にするようになった。が届いていないか何度も管理へ尋ね、休には姉がりいそうなや宿を歩いたが、誰も美代を見ていなかった。
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故郷へは「姉ちゃんは元気」と嘘をき、母から届く返事を読むたび胸が痛んだ。
料の曜。
洗濯物を干していた澄子のところへ、突然美代が現れた。
「澄子」
振り向いた瞬、より先に腹がった。
「どこおったん!」
美代はし痩せていた。
頬の線が細くなり、以はきつかった着の肩がわずかに余っている。
「仕事見つけた」
「検査は?」
「まだ」
「何してるん」
「森メリヤスっていうところ」
聞いたことのないだった。
きなではなく、町れの宅にある縫製所で、女が20ほど、靴や肌着を縫っているという。寄宿舎はなく、美代は所の畳の宿へ入ったらしい。
「そんなすぐ雇ってもらえたん?」
澄子が尋ねると、美代は瞬目を逸らした。
「らんかったみたい」
「のから紹介状とかるんちゃうの」
「さいところやから、そこまで見いひん」
「姉ちゃん」
澄子が詰め寄ると、美代はしばらく黙った。
「名、違うの使ってる」
澄子はが分からなかった。
「何?」
「瀬美代やなくて、別の名」
「何言うてるん」
美代は説した。
同だった久美子の姉・田幸子が、もともと森メリヤスで働く予定だった。ところが実の祖母が倒れ、阪へ来られなくなったため、元に残っていた紹介状と雇い入れの連絡類を、美代へ渡してくれたのだという。
さなで、紹介者が確かなら細かい元確認まではしない。
美代はそこで、
「田幸子、18歳」
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