"孫の一言で取り戻した通帳" 第3話
信用庫からの帰り、私はすぐへ戻らなかった。
公園のベンチに腰をろし、通帳をもう度いた。
数字をただ眺めるのではなく、今度は付を見た。
7、10万円。
そういえばその頃、幸がを買い替えた。
「古いは莉央を乗せるのにだから」と言って、予定より段の種を選んでいた。
9、8万円。
族3で1泊旅へかけただった。
私はの調子が悪く、留守番をしていた。
今4、10万円。
莉央が英語教へ通い始めた。
幸は「さいうちからやった方がいい」と嬉しそうに話していた。
私は通帳を閉じた。
全部が族の活費なのだろうか。
そう考えれば、理屈はつく。
けれど1つだけ、どうしても引っかかる。
今4は、幸の会社から決算賞与がたと聞いていた。
卓で本が言っていた。
「今はったよりたから、検も気に払える」
それなのに同じ、私の座から10万円が消えている。
へ戻ったのは昼だった。
玄関をけると、恵理がすぐにキッチンからてきた。
「お帰りなさい、お義母さん」
声が自然にるい。
「、丈夫でした?」
「ええ」
私は靴を揃えた。
「し歩いたから疲れたわ」
「記帳……できました?」
その言葉だけ、瞬声がさくなった。
私は顔をげた。
「できたわよ」
恵理は私の目を見なかった。
「そうですか」
「お茶、もらえる?」
「あ、はい」
広告
恵理は逃げるようにキッチンへ戻った。
幸は昼休みに度帰宅していたらしく、リビングでスマートフォンを見ていた。
私は通帳を自分の部へしまい、何事もなかったように卓へ戻った。
「幸」
「ん?」
「最、計変なの?」
息子は画面から目をげた。
「急に何?」
「物価もがってるでしょう」
「まあ、それなりに。でも恵理がうまくやってるよ」
「そう」
私はキッチンにつ恵理の背を見た。
「やりくりなのね」
の音が止まった。
恵理は振り返らなかった。
そのの午、彼女は「夕飯の買い物へってきます」と黒いトートバッグを持ってをた。
普段なら40分ほどで帰る。
しかしそのは2く戻らなかった。
午4過ぎ。
玄関の鍵が乱暴に回った。
帰ってきた恵理の顔は青ざめていた。
にしているエコバッグには、根とねぎしか入っていない。
「随分遅かったのね」
「あ……が混んでいて」
「?」
私が聞き返すと、恵理は自分でにしたことに気づいたように目を見いた。
「いえ、その……スーパーのくのATMでし用事があって」
私は何も言わなかった。
恵理は耐えきれず、続けた。
「お義母さんのカード、なぜか使えなくなっていて。械の調子でしょうか」
「そう」
私はテレビへ線を戻した。
「、聞いてみたら?」
「はい」
恵理はほっとしたように息を吐いた。
私は確信した。
広告
彼女はまだ、私がカードを止めたことをらない。
そして私が通帳のをどこまで見たのかも分かっていない。
そのの夜、私は古い計簿を引きしからした。
同居が始まった頃、私は最初の半だけ自分が渡した活費を記録していた。
毎4万円。
そのは恵理へ任せ、くのをやめている。
私はしいノートを1冊用し、通帳にあった引きし額をいせる範囲できした。
8万円。
7万円。
10万円。
6万円。
数字だけを並べていると、議なほどがえていった。
私は恵理を鳴りつけたいのではない。
幸へ「あなたの妻は棒よ」と叫びたいのでもない。
りたいのだ。
何が起きているのか。
そして、いつから私のおが「許を取らなくても使っていい」へ変わったのか。
翌朝。
朝の、幸が聞を読みながら言った。
「そういえば恵理、今のの保険、丈夫だよな?」
恵理のお玉が鍋の縁に当たった。
カン、と乾いた音がした。
「ええ。なんとか」
私は噌汁をんだ。
「の保険、くなったの?」
「ああ。でも母さんは気にしなくていいよ」
幸は笑った。
「母さんも毎4万円入れてくれてるし、恵理がちゃんとやってるから」
私はゆっくり顔をげた。
「そう。4万円ね」
恵理のが止まった。
私はそれ以何も言わなかった。
けれど、そのの昼。
掃除をしていた私の目に、リビングのさなゴミ箱から落ちた1枚のが入った。
何気なく拾いげ、丸まったをく。
ATMの利用細だった。
私はそのに印字された振込先を見た。
広告
おすすめ作品
-
完結第18話
3年ぶりの帰省、弟嫁がゴミ箱を漁っていた理由
32歳の玲奈は、3年ぶりに実家へ帰り、弟の妻・南が別人のように痩せていることに驚く。夕食の席でも南の前には料理がなく、家族は誰も気に留めない。その深夜、台所で物音を聞いた玲奈は、ゴミ箱を漁る南の姿を目撃する。「食べられるものを探していました」――その言葉をきっかけに、母と弟が南に強いていた異常な暮らしが明らかになっていく。さらに、南が隠し持っていた手帳には、翌朝に迫る恐ろしい約束が記されていた。玲奈は弟嫁を守るため、信じていた家族と向き合う決意をする。因果応報|人生逆転|兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|修羅場2.4万字5 35 -
完結第11話
新婚初夜の裏切り
結婚式を終えた夜、美香はホテルの浴室から、夫の健太が自分のバッグを探る姿を目撃する。持ち去られたのは、父から贈られた1億円の預金口座のキャッシュカードだった。翌朝、健太は「弟の用事がある」と言ってホテルを出ていく。以前から義母と義弟は、8800万円の新居を欲しがっていた。まさか、私のお金で家を買うつもりなの? 夫を問い詰めず、黙って様子を見る美香。やがて不動産会社から、思いもよらない電話がかかってくる。結婚初日に露わになる夫の本性と、美香が密かに用意していた対抗策とは。兄弟姉妹|夫婦|ATM扱い|金銭問題1.8万字5 34 -
完結第18話
夜勤明けに鍵を替えられた私
看護師長として働く千歳は、後輩に昇進で追い抜かれ、仕事を休みがちになった夫・徹を支えようとしていた。ところが徹は次第に横柄になり、家事を押しつけ、「妻なら夫に従え」と言い始める。そんなある朝、夜勤を終えて帰宅した千歳は、玄関の鍵が替えられていることに気づく。「ダメ嫁への躾だ。謝れば入れてやる」と笑う夫に、千歳は「あっそ。さようなら」とだけ告げて立ち去った。妻が本気で戻らないと知った徹は、どんな行動に出るのか。自分の人生を取り戻そうとする女性の再出発を描く物語。人生逆転|嫁姑|夫婦|金銭問題2.6万字5 97 -
完結第10話
もやしと消えた仕送り
フリーランスのデザイナーとして働く里見は、一人暮らしの母・春江に毎月10万円を仕送りしているつもりだった。ところが、久しぶりに訪ねた実家で目にしたのは、冷やご飯ともやしだけの寂しい食卓。母は仕送りなど一度も受け取っていないと言う。家計を任せていたのは、優しく頼りになる夫の久し。疑念を抱いた里見が夫のスマホを確かめると、そこには信じがたい送金記録と、妻をあざ笑うメッセージが残されていた。さらに、夫が隠していた給与明細にも不可解な数字が……。信じていた家族の裏切りを知った里見の反撃が始まる。裏切られた|嫁姑|親子関係|金銭問題1.5万字5 65 -
完結第10話
「中卒女に現場は無理」職人10人が辞めた結果
中学卒業後、十五歳で職人の世界に飛び込んだ堀江千夏。三十二歳で工務店の現場責任者に抜擢されるが、古参の職人頭・岩木は「中卒の女に現場が回せるか」と嘲笑う。やがて岩木を含む十人が一斉に退職。大型介護施設の改修工事は納期目前なのに、残された職人はわずか三人だった。しかし千夏には、十七年間積み重ねてきた技術と、二十冊を超える黒い手帳があった。仲間とともに現場の立て直しに挑む千夏。その一方で、手帳に記された資材の数字が、会社に隠された不審な事実を浮かび上がらせていく。職場逆転|因果応報|人生逆転|修羅場1.3万字5 66 -
完結第20話
夫の昇進を伝えた瞬間、父が命じた全財産の移転
夫・達也の専務昇進を喜んだ美桜。ところが父に報告すると、返ってきたのは祝福ではなく、「財産をすべて母さんの名義に移しなさい」という不可解な指示だった。昇進を境に夫は横柄になり、義母まで豪邸と通帳を自分たちのもののように扱い始める。さらに、高額な宝石の領収書や会社の不審な資金移動が見つかり、美桜は夫の裏の顔を知っていく。嫁姑|夫婦|金銭問題2.5万字5 97