"父の料亭を継いだ翌日、板長が全員連れて独立" 第6話
番さんの言葉が、いつのにかのの言葉になっていたことなの」
「私は座敷を板のには置きません」
私が答えると、井さんは砂糖の袋をテーブルへ置いた。
「なら戻るわ」
そこからしずつが戻った。
今井さんは週4で洗い。
葛さんは今の勤務先の引き継ぎを終えてから焼き方。
岸本さんは子どもの学があるため遅番を減らす。
それぞれ条件は違った。
私は全員へ同じ働き方を求めるのをやめた。
板では沢渡さんが必な数を計算し、座敷は井さんが配置を組む。私はそこから件費と営業できる部数を割りした。
再は128に決めた。
6全部ではない。
3だけ。
売だけを考えれば半分以になるが、が育たないまま全館をけるよりいい。
その頃、駅では黒田さんのの準備もんでいた。
京の会社が4,500万円を資する。
からも融資がる。
しいにはのからた13全員が入る。
そんな話が町へ広がっていた。
黒田さん本も、以からの常連へ話を始めていた。
「ののは全部こちらへ移る」
「仕入れも今まで通り」
「のの客も半はこちらへ来る」
そう話していたらしい。
私は何も言わなかった。
客がどちらへくかは客が決める。
魚がどちらへ卸すかは魚が決める。
私が止める話ではない。
広告
ただしつだけ、過できない話が入った。
黒田さんがしいを、
「のの系列」
として説しているらしい。
その数。
帳へ本の話が入った。
「のフーズと申します。黒田様の舗への資を検討しておりまして、事実確認をさせていただきたいのですが」
私は子へ座り直した。
相が最初に確認したのは、黒田さんの料理の腕ではなかった。
「舗は、の様の系列で違いないでしょうか」
私は即答した。
「違います」
話の向こうが静かになった。
のフーズの担当者・神保さんは、2に直接へ来た。
「弊社が黒田様から受け取っている資料そのものはお見せできません。ただ、事実関係だけ確認させてください」
私は承した。
系列ではないこと。
簾や号の使用を許した事実がないこと。
浦商、杉野酒、器との取引契約はいずれものという会社名義であること。
予約帳や顧客記録も会社の管理物であり、誰にも渡していないこと。
聞かれたことだけを答えた。
神保さんは途でつだけ、気になる数字をにした。
「の計画では、の様の既顧客の約4割が3か以内に移る提になっています」
私はわず鉛を止めた。
「4割ですか」
「はい」
黒田さんが常連の顔を覚えていることはっている。
広告
ただしのの宴会客のくは、個ではなく会社や団体で予約する。担当者が異すれば次の担当者へ引き継がれ、名も酒の好みも座敷の配置も帳の記録に残っている。
黒田さんが板から見てっている客だけで、4割という数字はせない。
「その数字の根拠になる資料を、当から渡したことはありません」
私はそう答えた。
神保さんはそれ以追及せず帰った。
数、のフーズから話があった。
「社内で再検討し、今回の資は見送ることになりました」
理由は教えられなかった。
私も尋ねなかった。
同じ頃、浦さんからも話を聞いた。
黒田さんはの魚を、のと同じ掛け払いで入れてほしいと頼みに来たという。
「断ったよ」
「どうしてですか」
「のさんとの付きいは40だ。決算も支払いも分かってる。黒田さん個との取引は今からだろ」
浦さんは当たりのように言った。
「しいなら半は現。うちの決まりだ」
黒田さんはったらしい。
「俺と30付きってきたじゃないか」と声を荒らげたという。
浦さんは言い返した。
「わしが30付きったのはあんたで違いない。でも、取引したのはのさんだ」
杉野酒でも同じだった。
器でも同じだった。
誰も黒田さんへ悪をしているわけではない。
のが何も積んできた信用は、そのを辞めたの料理へ自についていかなかった。
それだけだった。
方で黒田さんは、のの常連にも話していた。
広告
おすすめ作品
-
完結第18話
3年ぶりの帰省、弟嫁がゴミ箱を漁っていた理由
32歳の玲奈は、3年ぶりに実家へ帰り、弟の妻・南が別人のように痩せていることに驚く。夕食の席でも南の前には料理がなく、家族は誰も気に留めない。その深夜、台所で物音を聞いた玲奈は、ゴミ箱を漁る南の姿を目撃する。「食べられるものを探していました」――その言葉をきっかけに、母と弟が南に強いていた異常な暮らしが明らかになっていく。さらに、南が隠し持っていた手帳には、翌朝に迫る恐ろしい約束が記されていた。玲奈は弟嫁を守るため、信じていた家族と向き合う決意をする。因果応報|人生逆転|兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|修羅場2.4万字5 15 -
完結第11話
新婚初夜の裏切り
結婚式を終えた夜、美香はホテルの浴室から、夫の健太が自分のバッグを探る姿を目撃する。持ち去られたのは、父から贈られた1億円の預金口座のキャッシュカードだった。翌朝、健太は「弟の用事がある」と言ってホテルを出ていく。以前から義母と義弟は、8800万円の新居を欲しがっていた。まさか、私のお金で家を買うつもりなの? 夫を問い詰めず、黙って様子を見る美香。やがて不動産会社から、思いもよらない電話がかかってくる。結婚初日に露わになる夫の本性と、美香が密かに用意していた対抗策とは。兄弟姉妹|夫婦|ATM扱い|金銭問題1.8万字5 21 -
完結第18話
夜勤明けに鍵を替えられた私
看護師長として働く千歳は、後輩に昇進で追い抜かれ、仕事を休みがちになった夫・徹を支えようとしていた。ところが徹は次第に横柄になり、家事を押しつけ、「妻なら夫に従え」と言い始める。そんなある朝、夜勤を終えて帰宅した千歳は、玄関の鍵が替えられていることに気づく。「ダメ嫁への躾だ。謝れば入れてやる」と笑う夫に、千歳は「あっそ。さようなら」とだけ告げて立ち去った。妻が本気で戻らないと知った徹は、どんな行動に出るのか。自分の人生を取り戻そうとする女性の再出発を描く物語。人生逆転|嫁姑|夫婦|金銭問題2.6万字5 48 -
完結第10話
もやしと消えた仕送り
フリーランスのデザイナーとして働く里見は、一人暮らしの母・春江に毎月10万円を仕送りしているつもりだった。ところが、久しぶりに訪ねた実家で目にしたのは、冷やご飯ともやしだけの寂しい食卓。母は仕送りなど一度も受け取っていないと言う。家計を任せていたのは、優しく頼りになる夫の久し。疑念を抱いた里見が夫のスマホを確かめると、そこには信じがたい送金記録と、妻をあざ笑うメッセージが残されていた。さらに、夫が隠していた給与明細にも不可解な数字が……。信じていた家族の裏切りを知った里見の反撃が始まる。裏切られた|嫁姑|親子関係|金銭問題1.5万字5 38 -
完結第10話
「中卒女に現場は無理」職人10人が辞めた結果
中学卒業後、十五歳で職人の世界に飛び込んだ堀江千夏。三十二歳で工務店の現場責任者に抜擢されるが、古参の職人頭・岩木は「中卒の女に現場が回せるか」と嘲笑う。やがて岩木を含む十人が一斉に退職。大型介護施設の改修工事は納期目前なのに、残された職人はわずか三人だった。しかし千夏には、十七年間積み重ねてきた技術と、二十冊を超える黒い手帳があった。仲間とともに現場の立て直しに挑む千夏。その一方で、手帳に記された資材の数字が、会社に隠された不審な事実を浮かび上がらせていく。職場逆転|因果応報|人生逆転|修羅場1.3万字5 40 -
完結第20話
夫の昇進を伝えた瞬間、父が命じた全財産の移転
夫・達也の専務昇進を喜んだ美桜。ところが父に報告すると、返ってきたのは祝福ではなく、「財産をすべて母さんの名義に移しなさい」という不可解な指示だった。昇進を境に夫は横柄になり、義母まで豪邸と通帳を自分たちのもののように扱い始める。さらに、高額な宝石の領収書や会社の不審な資金移動が見つかり、美桜は夫の裏の顔を知っていく。嫁姑|夫婦|金銭問題2.5万字5 50 -
完結第10話
こぼされた定食の代償
社員食堂で働く43歳の松尾順子は、料理を通して社員たちを支えることに誇りを持っていた。ところが、営業部の神崎と宮下は、食堂のスタッフを見下し、暴言を繰り返していた。ついには大勢の前で定食を床にぶちまけ、順子たちを笑いものにする始末。さらに職場では不審な情報漏洩も発覚する。そんなある日、専務が食堂を訪れると、二人の態度は一変。順子を知らない二人は、そこで思いもよらない事実を知ることになる。職場逆転|人生逆転|修羅場1.5万字5 470