"父の料亭を継いだ翌日、板長が全員連れて独立" 第8話
沼田さんの顔が張った。
「いや、あれはの空気で」
「私は、がりないので誰でも欲しいです。それでも、今のあなたには戻っていただきません」
同じ朝にていったでも、全員を同じ扱いにはしなかった。
圧力を受けて迷った若者と、積極にを見したを、「どちらも辞めただから」で括りにすれば、それもまたを見ていないことになる。
沢渡さんへ3を戻す相談をした。
彼はし考えてから言った。
「僕は黒田さんに潰された側です。だから言いますけど、あの3はまだ潰れてないです。潰れるに戻れたなら、にいます」
128の再へ向けて、板には再び音が戻り始めた。
沢渡さん。
葛さん。
柚君。
君。
洗いの今井さん。
座敷には井さん、岸本さん、さん。
以より数はない。
だから3しかけない。
それでも、誰がどこで何をするかは確だった。
再の案内を46件の客へ送った。
《当面は3のみで営業いたします》
《板は沢渡直が務めます》
それだけを正直にいた。
3で17件の予約が戻った。
戻らなかった客もいる。
休業によそのへ移り、そのまま使い続ける会社もあった。
それは受け入れるしかない。
と同じ売に気に戻そうとはわなかった。
が続くを作らなければ、また同じことになる。
父のノートを庫へ戻す、私は最のページへつだけき加えた。
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《128 再予定》
そのはまだ空けておいた。
誰の名をくことになるのか。
今度はできるだけ、辞めたの名ではなく、入ったの名をきたいとった。
128の朝、のの板へ2かぶりに本格なが入った。
沢渡さんが竈のにち、葛さんが焼きをえ、柚君と君がを汲みながら材料を運ぶ。洗いでは今井さんが器を枚ずつ確かめ、欠けのあるものを脇へ分けていた。
「これ、まだ使ってたの?」
今井さんが笑った。
「先代が捨てないって言って」
しずさんが答えた。
「私が20に洗ってた皿よ」
そんな会話が板の端から聞こえた。
以ののでは、板で私語をすると黒田さんの鳴り声がんだ。
もちろん仕事の無駄話を増やしたいわけではない。
ただ、が働いている所にの声があることを、私は久しぶりに聞いた気がした。
座敷では井さんが3部の割り振りを確認していた。
岸本さんには子どもの迎えがあるため、午8までにがれる席を担当してもらう。さんは夜まで入れるが、法事の席にはまだ慣れていないため、井さんが緒につく。
私がホテルでやってきたのは、まさにこういう仕事だった。
料理のは作れない。
でも、のと役割を組みわせ、無理がるに調することはできる。
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最初のお客様は元建設だった。
元会と部3が玄関へ入るなり、内を見回した。
「待ったよ」
「お待たせしました」
会は板の方からてきた沢渡さんを見て、を止めた。
「おい、沢渡君じゃないか」
「ご無汰しております」
「戻ったのか」
「はい」
会は緒に来た部へ向かって笑った。
「このの椀はな、5に度ったきりなんだ。今は当たりだぞ」
その晩、3つの座敷から「沢渡さんを呼んで」と声が掛かった。
沢渡さんの名を覚えていた客が、私の像よりはるかにかった。
私が以の事記録を「辞めた22」としか見ていなかった頃、そのには、ちゃんと客との関係があったのだ。
松のでは元建設の部が椀の蓋をけた瞬、匂いだけで「ああ、これだ」と言った。
のでは周忌の族が、「もここでべました」と話してくれた。
梅のには商会の々が集まり、父の話をしながら酒をんだ。
最の客を見送ったのは午10をし過ぎた頃だった。
玄関で靴を履きながら、元会が私を呼んだ。
「綾乃ちゃん」
「はい」
「町で、料理も作れん素がを継いだって言う奴がおるらしいな」
「聞いています」
会は駄へを入れた。
「その素のに、うちは40通っとるんだよ」
それだけ言い、川沿いのを帰っていった。
私は玄関の柱へを置いた。
黒田さんたちが辞めた朝、同じように広の柱へを置いていた。
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