"20年の仕送りを止めたら、義母の嘘が暴けた" 第5話
「正さんも納得のです。それでは失礼いたします」
千鶴はキミ子の号を遮るように、通話終ボタンを押した。
スマートフォンの画面が暗転し、部に再び静寂が戻った。
千鶴の臓は激しく脈打っていたが、悔のは片も湧いてこなかった。むしろ、言えなかった言葉をすべて言い切ったことによる、徹なまでの爽が胸を支配していた。
そのの夜、仕事から帰宅した正のスマートフォンが、けたたましく鳴り響いた。
画面にはやはりキミ子の名。
正が困惑した表でスピーカーフォンにして通話にると、受話器からり狂ったキミ子の切り声が部に響き渡った。
『正!! あんた、千鶴さんに何を吹き込まれたのよ! 仕送りを止めるなんて、親孝にもほどがあるでしょうが! 今すぐ千鶴さんにをげさせて、おを振り込ませなさい!』
正は顔を顰め、隣に座る千鶴の顔をチラリと見た、を決したように腹から声をした。
『母さん、もうやめろよ』
『……は?』
『親戚みんなので、千鶴に向かって「たった万よこして偉そうに」って言い放ったのは母さんだろ。俺はあのにいたんだ。母さんがどれだけ酷いことを言ったか、全部で聞いてたんだよ』
正の声は、普段の温な夫のものとはえないほどく、厳しかった。
『千鶴が、度も文句を言わずに毎万、計千百万以も母さんに仕送りしてきたんだぞ。
広告
それを「たった万」呼ばわりして、謝どころかで侮辱するようなに、これ以円も渡せるわけがないだろ』
『ま、正……あんた、母親よりも嫁の肩向く気かい!?』
『肩向くとかの問題じゃない! として違ってるって言ってるんだ! ……母さんは自分で「困らない」って言ったんだ。自分の言葉に責任を持てよ!』
正がそう言い放つと、話の向こうでキミ子が絶句した。
以、母親の言うことには決して逆らわなかった従順な男からの、初めての完全な反乱。
『あ、あんたたち……悔してもらないからね!!』
捨て台とともに、プツリと通話が切れた。
正はく、い溜息をつき、を抱えてソファに倒れ込んだ。
「……悪かったな、千鶴。俺がもっとく、母さんに釘を刺しておくべきだった」
千鶴は夫の肩にそっとを置いた。
「いいのよ、正さん。あなたが私の方をしてくれただけで、胸のつかえが取れたわ」
だが、はまだらなかった。
キミ子というが、これだけで引きがるはずがないということを。そして、この仕送り止が、やがて親族全体を巻き込む巨な修羅へと発展していくことを。
仕送りを止してからかが経過した旬。
事態は、予もしなかった方向からき始めた。
そのの夜、夕を終えて寛いでいた正のスマートフォンが、ピロン、ピロンと連続して通音を鳴らした。
広告
正が画面をき、眉をひそめた。
「……千鶴、ちょっとこれ見てくれ」
千鶴が覗き込むと、そこには正の親族数が参加している『宅親族グループ』のLINE画面がかれていた。
発信者は、義妹の久美だった。
そこには、文のメッセージが投稿されていた。
『皆さん、聞いてください。実はお母さんが最、精神にも経済にもひどく追い詰められていて、体調を崩して寝込んでいます。原因は、兄貴夫婦からの突然の経済制裁です。続いていた仕送りを、何の説もなく方に止められたそうです。お母さんは齢の暮らしです。実の息子夫婦からこんな酷な仕打ちを受けるなんて、あまりにも酷すぎませんか? 親の恩を仇で返すような真似は、として絶対に許されないといます』
千鶴の背筋を、たいりが駆け抜けた。
メッセージのには、事をらない叔父や叔母たちからの同調のコメントが次々と連なっていた。
『それは本当かい? 正さん夫婦がそんなことをするなんて信じられん』 『正さん、母親を経済に兵糧攻めにするなんて、男として恥ずかしくないのか』 『千鶴さんも、嫁としてもうし寛容になれないものかね。齢者をいじめるのは気ないよ』
実を何つらない親族たちが、久美の歪曲された告発に踊らされ、正と千鶴を「極悪非な親孝夫婦」
広告
おすすめ作品
-
完結第12話
継母が私に遺した「価値ゼロ」の古民家
継母・良子の死後、養女の明日香に遺されたのは、山奥に建つ資産価値ゼロの古びた一軒家だけだった。一方、実子である高志と絵美子は、都内の高級住宅6軒を相続し、介護を続けてきた明日香を「他人」と嘲笑う。 母に愛されていなかったのか――。傷つきながらも家を片づけに向かった明日香は、不自然に敷き直された畳と、その床下に封印された巨大な金庫を発見する。母が最期に託した銀色のペンダントは、その扉を開くための鍵だった。 金庫の中に残されていたのは、莫大な財産と「愛する娘へ」と記された一通の手紙。そこには、明日香を強欲な実子たちから守るため、良子が密かに進めていた計画が明かされていた。 高級住宅を手に入れ、裕福な暮らしに浮かれる兄姉。しかし、彼らが「財産」だと信じた6軒には、決して逃れられない秘密が隠されていた――。 血のつながりを盾にする家族と、行動によって愛を遺した母。傷ついた養女が母の本心を知り、自分の人生を取り戻していく、遺産と家族をめぐる逆転の物語。人生逆転|真相|親子関係|金銭問題1.8万字5 15 -
完結第14話
夫の通帳を奪った義母が銀行で凍りついた日
「息子の通帳は、こっちで管理するわ」 夫の四十九日の翌朝、義母は仏壇の引き出しから通帳を奪った。 「三宅の金を、子供も産めなかった嫁には渡さない」 私は取り返そうともせず、静かに答えた。 「どうぞ、ご自由に」 一週間後、記帳した義母が怒鳴り込んできた。 「残高が12万3,000円しかない! 残りをどこへ隠した!」 さらに義母と義弟は、家を売って財産を分けると言い出した。 私は反論せず、銀行の応接室へ二人を呼んだ。 ところが義母は約束より早く窓口へ行き、通帳を突きつけた。 「私は母親よ。全額払い戻して!」 銀行員は戸籍を確認し、義母へ静かに尋ねた。 「お客様は、亡くなられた和幸様と養子縁組をされていますか?」嫁姑|相続|親子関係|金銭問題2.0万字5 34 -
完結第13話
母の保険金3,000万円、夫は「もう諦めろ」と言った
「1か月だけ、3,000万円を貸して」 亡き母の保険金が振り込まれた直後、夫の姉が突然頼みに来た。 夫も「家族を助けると思って」と私を説得した。 私は返済期限を定め、夫を連帯保証人にして公正証書を作った。 姉は笑顔で実印を押し、翌日、3,000万円を受け取った。 しかし1か月後、入金はなかった。 やがて電話は着信拒否され、3か月が過ぎた。 夫へ相談すると、苛立った声が返ってきた。 「もう諦めろ!」 そして次の瞬間、夫は口を滑らせた。 「あいつに、そんな金あるわけないだろ!」 私は何も言わず、弁護士宛てのメールを開いた。夫婦|相続|金銭問題1.9万字5 31 -
完結第11話
3か月寝たきりの娘を、婿に黙って連れ出した日
3か月寝たきりの娘・さやかを、婿の健二は「海外の専門医に相談している」と自宅で看病していた。感染対策を理由に、面会まで禁じられた母・恵子。最後に娘の顔を見てから10日。婿が出張に出た朝、閉ざされた寝室から異臭が漂う。恵子は119に通報し、娘を病院へ連れ出した。体重は34kg。最後に診察を受けた日さえ、母は答えられなかった。娘は「あそこには戻さないで」と訴える。治療を進める病院へ、今度は健二が妻を取り戻しに現れる。一方、娘が指先を伸ばしたベッドの隙間からは、2錠の薬が見つかる。献身的な夫は、何を隠していたのか。娘が口にできなかった言葉をたどり、母は3か月の「看病」の真実に迫っていく。親子関係|介護1.8万字5 1169 -
完結第17話
毎月20万円送っていたのに、82歳の母は皿を洗っていた
毎月20万円を送っていれば、母は不自由なく暮らせる。大企業を築いた佐藤健二は、そう信じて15年を過ごしてきた。ところが、偶然入った食堂で再会した82歳の母は、膝をかばいながら皿を洗っていた。「最後にお金が届いたのは、14年も前だよ」。母の家計簿には、仕送りが減り、やがて途絶えた記録が残っていた。一方、健二の口座からは今も毎月20万円が引き落とされている。母を支えてきた弟の手元には、健二に届かなかった入院の連絡まであった。金も、家族の声も、誰かが途中で止めていたのか。記録をたどる健二の前に浮かび上がる、信じ続けた人間の影。母が守ってきた小さな家計簿が、会社を揺るがす追及の始まりになる。親子関係|金銭問題2.2万字5 502