"「貧乏男」の通帳に5億円" 第8話
15、空だった名
入居申込の端は擦り切れ、透なテープで補修されていた。氏名とのには、当の勤務先がかれている。その先の連帯保証の欄だけが、いまま残っていた。
「健太は、同じ園で育った友達なんだ。俺と同いだった」
蓮さんはを押さえた。15、2が19歳だったの申込だという。
園をたあと、蓮さんは産会社で働き、健太さんはの寮に入った。しばらくして健太さんの仕事がなくなり、寮もることになった。次の仕事は見つけたものの、む部の契約がまなかった。
「この物件は、保証がいないと難しいと言われた。俺がなれるか聞いたけど、勤め始めたばかりで、収入もなくてさ」
ほかの部を探そうと言うと、健太さんは頷いた。先に相談することも、蓮さんは勧めたという。それでも、次に会ったにはもう友達のところに泊まれると笑っていた。
「丈夫だから、仕事を休むなよって。俺、それを信じたかったんだとう」
お茶の湯気がくなった。夫はカップに触れず、申込の折り目を指でなぞった。
健太さんはの部を転々としていた。咳が続いていたことも、蓮さんがったのは、佐々さんから入院の連絡を受けたあとだった。肺炎がくなり、19歳でくなった。
「先と荷物を片づけた、この着をもらった。
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園にいた頃から着てたやつなんだ。申込は、そのポケットに入ってた」
私の膝のにある袖には、古い繕い目が何本もなっていた。倹約のためだけに放さなかったではない。私は針を抜き、糸の先を切ってから、着を丁寧に畳んだ。
「健太は、部を借りたら青いカーテンを買うって言ってた。遮の、昼でもちゃんと眠れるやつ」
夫がし笑った。その顔を見てから、私は空の欄へ線を戻した。
「鍵を渡す、いつもうんだ。あのも、もう1件探していればって。俺があとし、しつこく聞いていれば」
どんな言葉を返せば軽くなるのか、私には分からなかった。きっと、今ここでうまいことを言えば済む話でもない。私は机に置かれた夫のに、自分のをねた。
「健太さんのこと、話してくれてありがとう」
しばらくして、夫がようやくカップを持った。めているのに気づき、お茶を淹れ直そうとちがりかける。私は肩に触れて、今は座っていてと頼んだ。
台所から戻ると、彼はまだ申込を見ていた。
「美優さんのことが配なのは分かった。でも、蓮さんが眠れなくなるまで、1で連絡を待つのも配だよ」
「話が鳴ったら、たいんだ」
「られないにも、誰かにつながるようにしよう。私もできることは考える。でも、私と蓮さんだけの約束にはしないで」
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計簿の横からしいノートをした。夜の連絡先、社員が引き継げる用件、次のまで待てる相談。決まっていないところには線を引かず、森さんたちと相談するといた。体調の急変や危険があるは、会社の折り返しを待たずに適切な窓へつなぐ必もある。
蓮さんはノートを引き寄せ、自分の休むについてもきした。
「断ったら、見捨てたことになるような気がしてた」
「このノート、緒に埋めていこう」
夫はさく頷いた。それから初めて、自分も々つらくなるのだとにした。私は答えを急がず、彼が話すのを聞いた。
翌週、事務所で森さんにノートを見せると、担当を決められる連絡はっていたよりかった。さんも加わり、まずは今分の当番を作ってみることになった。蓮さんは携帯を握り込まず、机のへ置いて話を聞いていた。
帰り際、森さんがきな封筒を差しした。管理をしているコーポ川で予定されていた、根と排設備の修繕見積だった。
事の計額は、1800万円。
古い申込の空とは別の所で、今ある部を守るためのおが必になっていた。
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