"元警察官の父が娘に渡した一枚の封筒" 第2話
寝るには肩を揉みながら、「最、のことを任せきりだったよな」と、今まで度も言わなかったようなことまでにした。
私は戸惑いながらも、どこかでしていた。
あの夜のことを彼も反省している。父に気づかれそうになって初めて、自分のしたことのさを理解したのかもしれない。
そういたかった。
3、拓也は百貨の袋を持って帰ってきた。には、父が好きな老舗の羊羹が入っていた。
「これ、お義父さんに送っておいてよ」
「どうしたの、急に」
「いつも織がお世話になってるから」
結婚して7。季節の贈り物以で、拓也が自分から父へ何かを渡そうとしたことなど度もなかった。
私が黙っていると、拓也は笑いながらスマートフォンを取りした。
「話しようか」
「今?」
止める暇もなく、父へ話をかけてスピーカーにした。
「もしもし、野です。夜分にすみません」
拓也の声は、職で取引先に話すと同じ、柔らかく礼儀正しい声だった。
「先は織がお邪魔したそうで。いつも妻がお世話になっています」
話の向こうで、誠がく「ああ」と答える。
「今度、僕も緒に伺います。最仕事が忙しくて、織にも迷惑をかけているので、し休みを取ろうとっているんです」
私は横で聞きながら、妙な息苦しさをじていた。
拓也は私へ謝っているのではない。
広告
父へ向けて、説している。
自分は妻を切にしている夫だと。
自分たちには何も問題などないのだと。
「無理するなよ」
誠はそれだけ言った。
「ありがとうございます」
話を切った拓也は満そうだった。
その夜、ベッドへ入った、彼は背越しに言った。
「夫婦喧嘩って、どこのにもあるよな」
私は黙っていた。
「でも親に話すと面倒になる。親はどうしたって自分の子どもの方をするから」
言葉は穏やかだった。
けれど私は、そのを違えなかった。
「俺たちのことは、俺たちで解決しよう」
拓也のが肩に触れた。
優しい力だった。
数、その同じに腕をつかまれたことをいした。
「……うん」
私は答えた。
それから、父との約束を度断った。
度目は「拓也が急に休みになったから」。
度目は「し邪気だから」。
どちらも嘘だった。
誠は何も言わなかった。
「そうか。分かった」
それだけだった。
むしろ、その沈黙が次第に私を苛たせた。
元警察官なら分かるはずだ。
頬の痣も、私の自然な態度も、夫の名をしたに線をそらしたことも。
なのに、どうして何も聞かないのだろう。
配していないのか。
私がげさに騒いでいるだけだとっているのか。
あるの夕方、拓也が帰宅するしに父と話をしていた。
庭の柿が今はないとか、所のスーパーが改装したとか、本当にどうでもいい話ばかりしていた。
広告
計が5半を回った。
そろそろ拓也が帰ってくる。
途端に落ち着かなくなった。
「ごめん、お父さん。夕飯作るから切るね」
「織」
珍しく父が私を呼び止めた。
「何?」
「いや。何でもない」
通話を切り、私は慌てて着信履歴を削除した。
その瞬、自分が何をしているのか分からなくなった。
夫にられて困るような会話などしていない。
それなのに私は、父へ話した痕跡すら隠している。
玄関の鍵がく音がした。
私はスマートフォンを伏せ、笑顔を作った。
「お帰り」
拓也は私を見て、満そうに笑った。
その笑顔を見た瞬。
なぜか私は、父より夫に嘘をついているのではなく――
夫のために、父との繋がりを消しているような気がした。
さらに週が過ぎた。
拓也は相変わらず優しかった。
私が料理を作れば「おいしい」と言い、休には掃除までかけた。あののことなど、最初からしなかったような常が戻ってきた。
だから私は、やはり自分が神経質だったのではないかとい始めた。
誰にだって余裕をなくすはある。
夫婦なら激しく言い争うこともある。
拓也は反省している。
私はそうやってつつ理由をつけた。
けれど議なことに、父への苛ちはくなっていった。
何で何も聞かないの。
何で私に「帰ってこい」と言わないの。
そんなことを考える自分がいる方で、本当に言われたら「余計なことをしないで」
広告
おすすめ作品
-
完結第10話
腎臓をあげた私に離婚届――夫の隣には若い女
三歳の娘を育てる裕子は、重い腎臓病になった夫・英司を救うため、自分の腎臓を一つ提供した。ところが手術後、体調を崩した裕子を待っていたのは、夫からの暴言と冷たい仕打ちだった。やがて英司は、若い女との新生活を理由に離婚届を突きつけ、娘まで奪おうとする。そんな裕子の味方になったのは、意外にも義母だった。命を救ってくれた妻を平然と捨てようとする夫。すべてを失いかけた裕子は、娘と自分の人生を守るため、反撃を決意する。夫婦|真実|裏の顔|真相|第二の人生1.4万字5 162 -
完結第12話
竹林の向こうの白衣
八歳のティアラは、重い喘息を理由に山奥の療養施設へ預けられた。だが本当の理由は、両親が天才と呼ばれる兄の教育に専念するためだった。家族に忘れられた少女を支えたのは、施設の人々と小児科医の竹之内先生。やがて彼女は自分の名前を変え、医師になる道を選ぶ。努力の末に脳神経外科医となった洋子は、ある冬の深夜、救急搬送された患者と向き合うことに。かつて自分を置き去りにした家族との思いがけない再会が、彼女の人生を大きく揺さぶり始める。兄弟姉妹|真相|絶縁|親子関係1.7万字5 151 -
完結第12話
五歳の母ちゃん
両親を事故で亡くしたシンジは、五歳の妹・楓を育てながら、昼も夜も働いていた。そんなある日、楓が「母ちゃんが来た」と言って連れてきたのは、同じ保育園に通う五歳の少女・リサだった。ところが彼女は、家族しか知らない昔の出来事を次々に話し、シンジを息子のように気遣う。信じられない再会に戸惑いながらも、兄妹は少しずつ彼女に心を開いていく。しかし、リサ自身の記憶が薄れていくという異変が起こり始める。もう一度母に会いたかった兄妹が、大切なものを守るために選ぶ道とは。兄弟姉妹|真実|真相|第二の人生1.2万字5 100 -
完結第12話
結婚式に来ないと怒鳴る義母→義父「もう会場にいるぞ?」
母の美容院を継いだ誠は、医師の新と結婚して三年。夫婦仲は良好だったが、医者一家の義母からは学歴や職業を理由に見下され、嫌がらせを受け続けていた。そんな中、義弟の陸が看護師のかな子と結婚することに。義母は二人の豪華な披露宴を自慢し、誠への嫌味をますます強めていく。そして迎えた結婚式当日。朝早くから会場にいた誠のもとへ、義母から突然の怒鳴り電話がかかってきた。しかし、義父が電話を代わった瞬間、思いがけない事実が浮かび上がる。嫁姑|夫婦|真実|裏の顔1.6万字5 295 -
完結第10話
出産3日目、1億円の入金直後に夫が離婚届
娘を出産してわずか三日。病室で体を休めていた立花玲奈の口座に、父から譲り受けた株式の特別配当金、一億円が振り込まれた。その直後、見舞いに来た夫・直樹が突然離婚届を差し出す。しかも、財産分与として五千万円を要求し、自分の会社への融資継続まで求めてきた。夫の本性を知った玲奈は、追加融資と家族カードを止め、離婚に向けた準備を始める。ところが、カードの利用明細を調べると、身に覚えのない高級ホテルや宝飾店への支払いが次々と見つかり……。夫婦|真相|親子関係1.8万字5 172