"元警察官の父が娘に渡した一枚の封筒" 第3話
とる自分も像できた。
矛盾していた。
あるの午、耐えきれず父へ話をかけた。
ない話をした、私は突然尋ねた。
「お父さん」
「何だ」
「私に、何も聞かないよね」
話の向こうが静かになった。
私は止まれなくなった。
「私がげさだとってる?」
「何の話だ」
「分かってるくせに」
声が震えた。
「このの頬だって、私が急に実へかなくなったことだって。お父さん、全部分かってるんでしょう。それなのに何で何も聞かないの」
数秒の沈黙。
やがて誠が言った。
「逆だ」
「え?」
「俺は、おが言っているよりずっといとってる」
のが真っになった。
父は騙されていなかった。
最初から。
「だったら……」
喉が詰まる。
「だったら、何で何もしてくれないの」
言った瞬、涙がた。
自分から何も話さず、助けてほしいとも言わず、それでも父がいてくれないことを責めている。
子どものようだった。
誠はらなかった。
「織。俺が拓也君の会社へ乗り込んで、鳴って、それでおをここへ連れて帰るのは簡単だ」
「……」
「でも、それをやったら、おは俺に連れて帰られたことになる」
私は何も言えなかった。
「おはまだ、自分ので『助けてほしい』とも『帰りたい』とも言っていない」
図だった。
私は気づいてほしかった。
でも認めたくなかった。
自分が選んだ結婚がうまくいっていないことを。
広告
父が続けた。
「俺が勝に答えを決めたら、おはで拓也君をかばう。『そこまでじゃなかった』『お父さんがげさにした』ってな」
胸が痛んだ。
実際、そうしたかもしれない。
「おのは、俺の事件じゃない。俺が解決して終わる話じゃない」
誠の声は静かだった。
「ただつだけ覚えておけ。困ったに帰れるはある」
涙が頬を伝った。
父は助けてくれないのではなかった。
私の代わりに決めないだけだった。
「……来週の曜、っていい?」
「ああ」
「で」
話の向こうで、ほんのしだけ父が息を吐いた。
「昼飯を用しておく」
その夜。
拓也が帰宅すると、私は曜に実へくと伝えた。
すると彼は笑った。
「じゃあ俺もくよ」
「仕事じゃなかった?」
「調する」
「でも、お父さんとで――」
拓也の笑顔が消えた。
ほんの瞬。
すぐにまた優しい顔へ戻った。
「最、俺も挨拶してなかったからさ」
私は断れなかった。
曜。
父とで話すはずだった昼に、拓也は品の菓子折りを持って現れた。
拓也は、完璧な夫だった。
玄関では靴を揃え、父へくをげ、卓ではビールを注いだ。私が作った煮物を褒め、「織は料理がなんですよ」と嬉しそうに笑った。
私はその横顔を見ながら、数週に壁際へ押されたの顔をいしていた。
どちらが本当の拓也なのだろう。
広告
優しい彼。
る彼。
あるいは、どちらも同じなのか。
のお茶をんでいる、拓也がさりげなく切りした。
「そういえば、お義父さん」
誠が顔をげる。
「織から聞いたんですが、僕の会社の所を気にされていたとか」
私は湯呑みを持つに力が入った。
父は表を変えなかった。
「ああ。聞いたな」
「くに何かご用事でも?」
拓也の調は柔らかい。
しかし線だけは鋭かった。
誠はし考えてから答えた。
「昔のりいが、あの辺りでを始めたと聞いてな。会社がいならってるかとっただけだ」
「そうだったんですか」
「結局、ってない」
その瞬だった。
拓也の肩から、らかに力が抜けた。
「言ってくだされば、僕が調べましたのに」
笑顔が自然になった。
本当にしたのだ。
父は何もしていない。
会社へ来ていない。
自分を調べてもいない。
そう確信した顔だった。
帰りの内で、拓也は嫌が良かった。
「お義父さん、何も気にしてなかったじゃないか」
私は窓のを見ながら「そうだね」と答えた。
「やっぱり織、し考えすぎなんだよ」
その言葉に胸がざわついた。
けれど反論できなかった。
父自が「会社にはっていない」と言ったのだから。
問題は終わった。
私はそううことにした。
それから約か。
私と父は何度か話をしたが、あのの話には触れなかった。
拓也もしたのか、しばらく穏やかだった。
ところが曜の夜。
仕事できなミスがあったらしく、拓也は苛って帰宅した。
広告
おすすめ作品
-
完結第15話
車椅子の姑を1年間介護したのに、遺産は1円もいらない嫁が家を出た日
教師の仕事を辞め、右半身に麻痺が残った姑・芳子を365日介護してきた田中綾。芳子の70歳の誕生日会で、36人の親族を前に「家も預金も長男へ。嫁には1円も渡さない」と宣言される。熱い汁で右手を火傷しても、夫が心配したのは200万円の着物だけだった。綾は介護引継書を置き、「遺産はいりません」と家を出る。ところが無償の嫁が消えた翌朝、家族の前には月43万8000円、年525万6000円の介護見積書が突きつけられた。3人の実子は誰が母を支えるのか。そして綾は、失った教師の人生を取り戻せるのか――。嫁姑|親子関係2.0万字5 1161 -
完結第12話
継母が私に遺した「価値ゼロ」の古民家
継母・良子の死後、養女の明日香に遺されたのは、山奥に建つ資産価値ゼロの古びた一軒家だけだった。一方、実子である高志と絵美子は、都内の高級住宅6軒を相続し、介護を続けてきた明日香を「他人」と嘲笑う。 母に愛されていなかったのか――。傷つきながらも家を片づけに向かった明日香は、不自然に敷き直された畳と、その床下に封印された巨大な金庫を発見する。母が最期に託した銀色のペンダントは、その扉を開くための鍵だった。 金庫の中に残されていたのは、莫大な財産と「愛する娘へ」と記された一通の手紙。そこには、明日香を強欲な実子たちから守るため、良子が密かに進めていた計画が明かされていた。 高級住宅を手に入れ、裕福な暮らしに浮かれる兄姉。しかし、彼らが「財産」だと信じた6軒には、決して逃れられない秘密が隠されていた――。 血のつながりを盾にする家族と、行動によって愛を遺した母。傷ついた養女が母の本心を知り、自分の人生を取り戻していく、遺産と家族をめぐる逆転の物語。人生逆転|真相|親子関係|金銭問題1.8万字5 626 -
完結第14話
夫の通帳を奪った義母が銀行で凍りついた日
「息子の通帳は、こっちで管理するわ」 夫の四十九日の翌朝、義母は仏壇の引き出しから通帳を奪った。 「三宅の金を、子供も産めなかった嫁には渡さない」 私は取り返そうともせず、静かに答えた。 「どうぞ、ご自由に」 一週間後、記帳した義母が怒鳴り込んできた。 「残高が12万3,000円しかない! 残りをどこへ隠した!」 さらに義母と義弟は、家を売って財産を分けると言い出した。 私は反論せず、銀行の応接室へ二人を呼んだ。 ところが義母は約束より早く窓口へ行き、通帳を突きつけた。 「私は母親よ。全額払い戻して!」 銀行員は戸籍を確認し、義母へ静かに尋ねた。 「お客様は、亡くなられた和幸様と養子縁組をされていますか?」嫁姑|相続|親子関係|金銭問題2.0万字5 482 -
完結第12話
夜勤明け、鍵を替えられた私の静かな反撃
30時間の夜勤を終えて帰宅した看護師・南を待っていたのは、義母によって交換された玄関の鍵だった。「反省したら土下座しに来なさい」という連絡に、南は「そうですか。では、さようなら」とだけ返信する。 だが、義母と無職の夫は知らなかった。その高級マンションは、南の勤務先が契約する借り上げ社宅であり、家賃も生活費もすべて南の収入で支えられていたのだ。 南は騒がず、締め出しを自白したSNS投稿を保存。社宅の退去手続き、電気・水道・ガスの解約、弁護士への離婚依頼を淡々と進める。月曜日の午後5時、部屋の明かりが消え、管理会社と警察が玄関に現れた。 自分を家政婦のように扱った家族との関係を断ち切り、誇りある仕事と人生を取り戻す女性の、静かで痛快な逆転物語。因果応報|人生逆転|嫁姑|親子関係1.9万字5 376 -
完結第14話
昭和40年、15歳で東京へ出た少年
昭和という時代は、遠い昔の出来事のようでいて、実はまだ私たちのすぐ隣に息づいています。ふと街角で漂う夕餉の匂い、遠くで響く電車の踏切の音、あるいは夕暮れの光が窓辺を茜色に染める瞬間、不意に胸の奥底で目覚める記憶があります。それは個人のアルバムの片隅にある色褪せた白黒写真のようでありながら、触れれば今なお温かい温度を保っています。 昭和四十年(一九六五年)春。 日本の各地にある名もなき小さな駅のホームには、同じ年頃の少年少女たちが立ち尽くしていました。十五歳。義務教育である中学校を終えたばかりの少年たちが、生まれて初めて親元を離れ、見知らぬ巨大都市・東京へと向かう朝でした。 ここに、ひとりの少年がいます。名を「ミノル」としておきましょう。 ミノルという名は、当時の日本中どこにでもあった平凡な名前です。そして、彼が辿った道筋もまた、特別な英雄の叙事詩ではなく、あの時代を懸命に生きた何十万人もの少年少女たちが共有した、どこにでもあった人生の縮図でした。だからこそ、この物語はミノルひとりだけのものではありません。かつて故郷の駅で見送られたあなた自身の物語かもしれず、あるいは黙々と働きづめで背中を丸めていたあなたの父や母、祖父母が歩んだ足跡そのものかもしれません。 今夜は、時計の針の音を少し遠くに押しやり、部屋の明かりを少しだけ落として、かつてこの国の土台をその小さな手で支えた少年たちの軌跡に、静かに耳を澄ませてみてください。時代|昭和|真相2.1万字5 26 -
完結第15話
「貧乏男」の通帳に5億円
姉に「貧乏男」と笑われた蓮と結婚した、経理担当の真帆。新婚の翌朝、生活費10万円を差し出すと、夫は代わりに1冊の通帳を渡してきた。残高は5億円を超え、3年間、出金の形跡がない。それなのに、夫は古い上着を繕い、わずかな報酬で働いていた。隠されていたのは、資産だけではなかった。夫の仕事を知った真帆が共に暮らす条件を伝える一方、新聞で彼の立場を知った姉は態度を変え、500万円の出資を求めてくる。夫婦が断った翌日、姉は客に「出資は決まった」と案内していた。真帆は拒否の返信と案内の時刻を並べ、夫と店へ向かう。そして、夫が手放さない上着の襟には、別の男の名字が縫いつけられていた。夫婦|金銭問題2.1万字5 2138 -
完結第12話
20年の仕送りを止めたら、義母の嘘が暴けた
20年間、毎月10万円の仕送りを一度も欠かさなかった私。 総額は2,400万円にもなるのに、義母は法事の席で親族を前に笑った。 「たった10万円よこして、偉そうにしないでよ」 その言葉を聞いた私は、翌月から仕送りをやめることを決めた。 義母は「その程度のお金、なくても困らない」と強がっていたが、わずか3か月後、その暮らしは急速に行き詰まっていく。 やがて夫は、実家で銀行と証券会社から届いた複数の封筒を発見する。 そこに記されていたのは、義母が隠し続けてきた資産の動きと、私たちの仕送りが使われていた本当の目的だった。 なぜ義母は2,400万円もの援助を「大した額ではない」と笑ったのか。 そして、仕送りを止めた途端に崩れ始めたものとは――。 20年間の善意を当然のものとして踏みにじられた妻が、家族に隠された金銭の秘密と向き合い、自分の人生を取り戻していく物語。嫁姑|相続|親不孝|親子関係|金銭問題1.8万字5 735 -
完結第13話
母の保険金3,000万円、夫は「もう諦めろ」と言った
「1か月だけ、3,000万円を貸して」 亡き母の保険金が振り込まれた直後、夫の姉が突然頼みに来た。 夫も「家族を助けると思って」と私を説得した。 私は返済期限を定め、夫を連帯保証人にして公正証書を作った。 姉は笑顔で実印を押し、翌日、3,000万円を受け取った。 しかし1か月後、入金はなかった。 やがて電話は着信拒否され、3か月が過ぎた。 夫へ相談すると、苛立った声が返ってきた。 「もう諦めろ!」 そして次の瞬間、夫は口を滑らせた。 「あいつに、そんな金あるわけないだろ!」 私は何も言わず、弁護士宛てのメールを開いた。夫婦|相続|金銭問題1.9万字5 674 -
完結第12話
昭和51年、帰宅目前で消えた25歳女性社員
「一人で静かに帰りたいので、大丈夫です」 昭和51年、25歳のみち子は飲み会のあと、一人でタクシーへ乗った。 運転手は、彼女を自宅からわずか50メートルの場所で降ろした。 「夜遅くにありがとうございました」 それが、みち子を見た最後の証言だった。 布団は朝まで誰にも使われず、通帳も着替えも部屋に残っていた。 上司と同僚には不自然な空白時間があったが、何も見つからなかった。 そして9年後。 亡くなった上司の娘が、遺品のアルバムを開いた。 失踪当夜の宴会写真の次に、見知らぬ和室を写した一枚が貼られていた。 机の上には、黒い女性用のハンドバッグ。 写真の裏には、みち子が消えた数日後の日付が押されていた。昭和|ミステリー|真相1.7万字5 3151