"元警察官の父が娘に渡した一枚の封筒" 第6話
名を言うだけで緊張した。
「殴られているわけではないんですが」
最初にそう置きした。
相談員の女性は否定も肯定もしなかった。
「何があったか、順番にお話しできますか」
その言葉を聞いて、父のをいした。
順番に。
つずつ。
私は初めて、結婚してからの来事を途で「でも優しいもある」と打ち消さずに話した。
声をされる。
物を投げられる。
腕をつかまれる。
壁へ押される。
謝られる。
そしてまた元に戻る。
話を終えた、私は会社くのベンチでしばらくけなかった。
相談員から「今すぐ婚してください」とは言われなかった。
ただ、全を確保したで記録を残し、必なら医療関や法律相談も利用できると説された。
そのから私は、自分のノートを冊作った。
父の真似ではない。
自分の記憶を、自分で消さないためだった。
付。
起きたこと。
その、自分がどうじたか。
いてみると、私は驚くほどい「怖かった」とくことを避けてきたのだと分かった。
っていた。
しかった。
疲れた。
そうはけても。
怖かった、だけは認めたくなかった。
そのの最。
私は初めていた。
《拓也の帰宅が怖かった》
文字にした途端、胸の奥で何かがほどけた。
曜の夜8を過ぎた頃。
夕の皿を洗っていると、玄関のチャイムが鳴った。
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誠がちがる。
私は嫌な予がした。
玄関から聞こえてきたのは、拓也の声だった。
「こんばんは。突然すみません」
数分、父に通されて居へ入ってきた拓也はスーツ姿で、には百貨の袋を持っていた。
「織、驚かせてごめん」
笑顔だった。
「郵便物と、会社で使うカーディガン。困ってるとって持ってきた」
私は袋を見た。
確かに必なものではあった。
けれど、頼んではいない。
拓也は父へ向き直ってをげた。
「お義父さん、この度は織がお邪魔してしまって申し訳ありません」
その言い方に違があった。
私が勝に実へ逃げ込み、夫が迷惑をかけられているような言い方だった。
「僕も反省してます。仕事が忙しくて、しい言い方をしてしまいました」
誠は何も言わず、お茶をした。
拓也は私を見た。
「そろそろ帰ろう」
「帰らないよ」
瞬、拓也の笑顔が固まった。
「もう分休んだだろ」
「まだ帰らない」
「織」
「ここで考えるって言ったよね」
拓也は困ったように笑い、父へ線を送った。
「最、織は仕事も忙しくてし神経質なんです。僕ももっと気遣えばよかったとっていて」
その瞬、私は初めてで否定した。
「仕事のせいじゃない」
拓也の顔が止まった。
「私が怖かったのは、あなた」
居が静まり返る。
拓也の元から笑顔が消えた。
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「おい、親のだからって言いたい放題――」
言いかけて、自分で止めた。
誠が見ていることをいしたのだろう。
「お義父さん」
拓也は再び作った笑顔を浮かべた。
「織、今ちょっとになってまして」
誠は湯呑みを置いた。
「拓也君」
「はい」
「私は織に、帰れとも残れとも言ってない」
拓也が瞬きをする。
「ここにいたいと言うなら置く。それだけだ」
「でも夫婦ですよ」
「だから何だ」
声はかった。
鳴ってはいない。
「夫婦の話しいをするのはおたちだ。織を連れて帰るかどうかを決める権利は、私にもおにもない」
拓也の顔が張った。
「お義父さんまで、織のわがままに付きうんですか」
私はその言葉を聞いた瞬、ようやく理解した。
拓也は私が傷ついたことを問題だとっていない。
私が言うことを聞かなくなったことを問題だとっている。
「今は帰って」
私は言った。
「織」
「帰って」
拓也はしばらく私を睨んでいた。
やがて袋だけを残し、ちがった。
玄関の扉がく閉まった。
私は無識に肩をすくめた。
けれど父は「丈夫か」と抱きしめたりしなかった。
代わりにちがり、湯呑みを持った。
「茶、めたな」
その普通さに、私は救われた。
拓也が実へ来てから週ほど、連絡は途絶えた。
私は仕事へき、帰宅し、父と夕をべた。平穏な々が続くほど、自分が今までどれだけ緊張して活していたかが分かってきた。
曜の夜。
また玄関のチャイムが鳴った。
今度は拓也ではなかった。
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