"入学式の日、愛人を選んだ夫への「お祝い」" 第2話
――えば、兆候はいくらでもあったのだ。
ランドセルのを相談したの、あの底どうでもよさそうな「いいんじゃないか」という返事。 美の誕に「急な張が入った」と嘘をつき、綺麗に着飾ってかけていき、夜に酒の匂いをさせて帰宅したこと。 週末の族旅の約束をドタキャンしては、「ゴルフの接待」「会社の付きい」と言い訳を並べてていたこと。 そして、肌さず持ち歩くようになったスマートフォンと、呂に入るすら脱所に端末を持ち込む異常な警戒。
「あのから、ずっと続いていたのね……」
私がテーブルでさく呟くと、向かいの席でコーヒーをんでいた義母が、静かにカップを置いた。
「カナさん。々気づいていたんでしょう?」
「……はい。でも、まさか今というを狙って、そんな暴挙にるなんてってもみませんでした」
「あの子はね、昔からそうなのよ。自分が悪者になりたくないから、わざと相が番るタイミングで爆弾を投げつけて、相にを尽かさせようとするの。自分からをげて謝る度胸もない、ただの臆病者よ」
義母はバッグから、枚の細いメモ用を取りした。 そこには、健吾が勤める堅商社の取引先覧と、ある女性の名が几帳面にメモされていた。
【佐伯瑠奈(歳) 取引先・〇〇デザインの営業事務】
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「お母さん、これは……?」
「か、あの子が私のにを借りに来たのよ。『独するための業資として百万を用ててくれ』ってね。あまりにも胡散臭いから、くなったお父さんの代からお世話になっている興信所の所さんに調べてもらったの」
義母は眉を吊りげ、え切った声で続けた。
「業資なんて嘘。その女に貢ぐための級ブランド品や、週末の豪遊で消費者融から借りまくった借の穴埋めだったわ。しかも、会社の経費を私に使い込んでいる疑いまで浮してるのよ」
「そんな……! 美の養育費だって、ろくに貯めていなかったのに!」
「ええ。だからこそ、私は今というを待っていたのよ。あの子が完全に調子に乗り、自分の元に仕掛けられたに気づかず、自ら踏み抜くその瞬をね」
美がデザートのアイスクリームをべ終え、「ママ、おうち帰ろう!」と無邪気に私の袖を引っ張った。
計の針は、午を回っていた。 義母はちがり、着物の袂をえながら私に向き直った。
「さあ、帰りましょう。……あの子は今頃、役所の窓で赤っ恥をかいて、り狂いながらに向かっているはずよ。そのに、リビングを最の『式』に飾り付けておかなくちゃね」
「式……ですか?」
「そうよ。息子のしいを祝う、最の披宴会よ」
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義母の瞳の奥で、昏い復讐の炎が静かに揺らめいていた。
自宅マンションへ戻り、美を隣の子供部で絵本にさせると、リビングの引き戸を閉めた。
ピンポーン、ピンポーン、ガチャガチャッ!
午過ぎ。 触れもなく、玄関ドアのインターホンが狂ったように乱打され、続いてノブを力任せに回す激しい属音が響いた。内鍵をかけていたため、鍵穴に差し込まれたキーが空転している。
「おい! けろ! カナ、にいるんだろ! けろよ!!」
ドアの向こうから響いてきたのは、朝の余裕綽々な調とは似ても似つかない、苛ちとりに満ちた健吾の鳴り声だった。
私が鍵をけてチェーンをすと、健吾は肩をらせ、ドカドカと靴を脱ぎ散らかしてがり込んできた。 スーツの胸元ははだけ、ネクタイは歪み、額にはびっしりと汗が浮いている。
「おい! どういうことだカナ!! お、役所にどんな細をしやがったんだよ!」
健吾は鞄から、半分に折り曲げられた緑の用――『婚届』を引っ張りし、私の顔のに突きつけてきた。
「窓で突き返されたぞ! 『妻側の署名捺印がありませんので、受理できません』って払いだ! 瑠奈ので恥かかせやがって! お、何様のつもりだ!?」
あまりの能のさに、私はりを通り越して唖然としてしまった。
「……何様のつもりって、それはこっちのセリフよ。私がいつ婚届にサインしたっていうの? 署名も捺印もしていないの婚届が、役所で通るわけないでしょう。
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