"入学式の日、愛人を選んだ夫への「お祝い」" 第11話
以に及ぶ子育てという仕事が、ようやく幕をろしたのだ。
娘がてったの夜、私はがらんとしたリビングで、きりでワイングラスを傾けた。 寂しさに押し潰されるかとっていたが、議なほどは穏やかで、澄み切っていた。
「……やりきったわ」
私の元には、自分の力で働き、護部として定まで勤めげられる確固たるキャリアと、完済したマンション、そして誰の顔を窺う必もない、完全なる「自由」が残されていた。
現、私は憧れだった「お様ライフ」をゆくまで満喫している。
ベランダにプランターをずらりと並べ、づくりからこだわった庭菜園。 初には真っ赤に実ったミニトマト、瑞々しいキュウリ、りのい葉やバジルが、毎のように収穫のを迎える。 夜になれば、お気に入りのサスペンスドラマを気見しながら、採れたてのトマトとモッツァレラチーズに自製バジルを散らしたカプレーゼを作り、えたワインを傾ける。
誰のために夕飯を作る必もない。 誰の脱ぎ散らかしたを片付ける必もない。 自分の好きなに起き、好きなものをべ、好きな本を読んで眠りにつく。 これほど贅沢で、誇らしいのが、にあるだろうか。
あの代半の嵐のような々を耐え抜き、毅然として自分の尊厳を守り抜いたからこそ、今、この輝かしい静寂が私の掌のにあるのだ。
広告
方、私を裏切り、族を捨てた元夫・健吾の「その」の便りを、私はの噂としてにすることになった。
興信所を通じて法な債権理を続けていた弁護士からの最終報告によると、健吾の末は、まさに絵に描いたような転落の極みだったという。
あの卒業式の夜に逃した、健吾は雇いの現でもトラブルを繰り返し、腰の持病を悪化させて完全に職を失った。 活保護を受しながら、都の賃万円の造アパートできりで暮らしていたが、、酒に酔って階段からを踏みし、脳挫傷で救急搬送された。命は取り留めたものの、半に麻痺が残り、現は公な養護施設で、子活を送っているという。
逃げったの瑠奈とは、戸籍は現も婚姻関係が続いたままだそうだ。 相の居所が掴めないため、婚調を起こすも気力もなく、籍を抜くことすら叶わない。 そして、瑠奈とのにまれた男の子は、乳児院から児童養護施設へと引き取られ、を卒業したに「実の父親とは輪際関わりたくない」と、親族関係の切を拒絶する類を提したという。
自分がかつて娘の美に向けた無関と酷さが、そっくりそのまま、もうの実の子から自分へ突き刺さるという、完璧な因果応報。
広告
義母の富美子も、度だけ施設へ事務な続きのためにを運んだそうだが、子に座って涎を垂らし、虚ろな目で宙を見つめる息子の姿を瞥しただけで、度と会うことはなかったという。
「あの子はね、自分の蒔いた種を、かけてで刈り取っているのよ。……憐れみをじる隙すら、あの子は自分で焼き払ってしまったのだから」
義母が話で静かに語ったその言葉に、私はただ、黙って頷くことしかできなかった。
を裏切り、者の尊厳を踏みにじってに入れたかりそめの楽など、のい軸のには、握りののように脆く崩れるのだ。
曜の午。初の柔らかな陽が、リビングの窓辺に置かれた観葉植物の緑を鮮やかに透かしていた。
「ねえ、お母さん。今のトマト、すっごく豊作ですよ!」
私がベランダから籠いっぱいに収穫した真っ赤なミニトマトを抱えて戻ると、リビングのソファで寛いでいた義母――富美子が、嬉しそうに目を細めてちがった。
歳を超えた今も、富美子は驚くほど腰が丈夫で、週末になるとこうして私のマンションへ遊びに来ては、緒に料理をしたり、所のおしゃれなカフェへお茶をみにったりしている。
「あら、見事ねえ! ツヤツヤしてて、まるで宝みたいじゃない。
……トマトといえば、先週カナさんが作ってくれたあのハーブマリネ、本当に美しかったわよ」
広告
おすすめ作品
-
完結第15話
車椅子の姑を1年間介護したのに、遺産は1円もいらない嫁が家を出た日
教師の仕事を辞め、右半身に麻痺が残った姑・芳子を365日介護してきた田中綾。芳子の70歳の誕生日会で、36人の親族を前に「家も預金も長男へ。嫁には1円も渡さない」と宣言される。熱い汁で右手を火傷しても、夫が心配したのは200万円の着物だけだった。綾は介護引継書を置き、「遺産はいりません」と家を出る。ところが無償の嫁が消えた翌朝、家族の前には月43万8000円、年525万6000円の介護見積書が突きつけられた。3人の実子は誰が母を支えるのか。そして綾は、失った教師の人生を取り戻せるのか――。嫁姑|親子関係2.0万字5 1372 -
完結第12話
継母が私に遺した「価値ゼロ」の古民家
継母・良子の死後、養女の明日香に遺されたのは、山奥に建つ資産価値ゼロの古びた一軒家だけだった。一方、実子である高志と絵美子は、都内の高級住宅6軒を相続し、介護を続けてきた明日香を「他人」と嘲笑う。 母に愛されていなかったのか――。傷つきながらも家を片づけに向かった明日香は、不自然に敷き直された畳と、その床下に封印された巨大な金庫を発見する。母が最期に託した銀色のペンダントは、その扉を開くための鍵だった。 金庫の中に残されていたのは、莫大な財産と「愛する娘へ」と記された一通の手紙。そこには、明日香を強欲な実子たちから守るため、良子が密かに進めていた計画が明かされていた。 高級住宅を手に入れ、裕福な暮らしに浮かれる兄姉。しかし、彼らが「財産」だと信じた6軒には、決して逃れられない秘密が隠されていた――。 血のつながりを盾にする家族と、行動によって愛を遺した母。傷ついた養女が母の本心を知り、自分の人生を取り戻していく、遺産と家族をめぐる逆転の物語。人生逆転|真相|親子関係|金銭問題1.8万字5 653 -
完結第14話
夫の通帳を奪った義母が銀行で凍りついた日
「息子の通帳は、こっちで管理するわ」 夫の四十九日の翌朝、義母は仏壇の引き出しから通帳を奪った。 「三宅の金を、子供も産めなかった嫁には渡さない」 私は取り返そうともせず、静かに答えた。 「どうぞ、ご自由に」 一週間後、記帳した義母が怒鳴り込んできた。 「残高が12万3,000円しかない! 残りをどこへ隠した!」 さらに義母と義弟は、家を売って財産を分けると言い出した。 私は反論せず、銀行の応接室へ二人を呼んだ。 ところが義母は約束より早く窓口へ行き、通帳を突きつけた。 「私は母親よ。全額払い戻して!」 銀行員は戸籍を確認し、義母へ静かに尋ねた。 「お客様は、亡くなられた和幸様と養子縁組をされていますか?」嫁姑|相続|親子関係|金銭問題2.0万字5 485 -
完結第12話
夜勤明け、鍵を替えられた私の静かな反撃
30時間の夜勤を終えて帰宅した看護師・南を待っていたのは、義母によって交換された玄関の鍵だった。「反省したら土下座しに来なさい」という連絡に、南は「そうですか。では、さようなら」とだけ返信する。 だが、義母と無職の夫は知らなかった。その高級マンションは、南の勤務先が契約する借り上げ社宅であり、家賃も生活費もすべて南の収入で支えられていたのだ。 南は騒がず、締め出しを自白したSNS投稿を保存。社宅の退去手続き、電気・水道・ガスの解約、弁護士への離婚依頼を淡々と進める。月曜日の午後5時、部屋の明かりが消え、管理会社と警察が玄関に現れた。 自分を家政婦のように扱った家族との関係を断ち切り、誇りある仕事と人生を取り戻す女性の、静かで痛快な逆転物語。因果応報|人生逆転|嫁姑|親子関係1.9万字5 693 -
完結第11話
元警察官の父が娘に渡した一枚の封筒
久しぶりに会った娘・香織の頬に痣を見つけた元警察官の父・誠一。夫の話になると目をそらす娘に、父は勤務先の住所だけを尋ね、それ以上追及しなかった。 一か月後、再び夫に突き飛ばされた香織へ、父は一通の封筒を渡す。中にあったのは夫の秘密ではなく、香織が「大したことではない」と消してきた異変を、日付順に記した一枚の紙だった。 繰り返される暴力と謝罪の連鎖を認めた香織は、初めて「今日は帰らない」と自分で決断する。父は夫を裁くことも、離婚を命じることもせず、娘が自ら選べる安全な場所だけを守り続けた。 これは、父の静かな愛に支えられた女性が、自分の恐怖を否定するのをやめ、失っていた人生と平穏を取り戻していく再生の物語。夫婦|真実|真相|親子関係1.6万字5 210 -
完結第15話
「貧乏男」の通帳に5億円
姉に「貧乏男」と笑われた蓮と結婚した、経理担当の真帆。新婚の翌朝、生活費10万円を差し出すと、夫は代わりに1冊の通帳を渡してきた。残高は5億円を超え、3年間、出金の形跡がない。それなのに、夫は古い上着を繕い、わずかな報酬で働いていた。隠されていたのは、資産だけではなかった。夫の仕事を知った真帆が共に暮らす条件を伝える一方、新聞で彼の立場を知った姉は態度を変え、500万円の出資を求めてくる。夫婦が断った翌日、姉は客に「出資は決まった」と案内していた。真帆は拒否の返信と案内の時刻を並べ、夫と店へ向かう。そして、夫が手放さない上着の襟には、別の男の名字が縫いつけられていた。夫婦|金銭問題2.1万字5 2338 -
完結第12話
20年の仕送りを止めたら、義母の嘘が暴けた
20年間、毎月10万円の仕送りを一度も欠かさなかった私。 総額は2,400万円にもなるのに、義母は法事の席で親族を前に笑った。 「たった10万円よこして、偉そうにしないでよ」 その言葉を聞いた私は、翌月から仕送りをやめることを決めた。 義母は「その程度のお金、なくても困らない」と強がっていたが、わずか3か月後、その暮らしは急速に行き詰まっていく。 やがて夫は、実家で銀行と証券会社から届いた複数の封筒を発見する。 そこに記されていたのは、義母が隠し続けてきた資産の動きと、私たちの仕送りが使われていた本当の目的だった。 なぜ義母は2,400万円もの援助を「大した額ではない」と笑ったのか。 そして、仕送りを止めた途端に崩れ始めたものとは――。 20年間の善意を当然のものとして踏みにじられた妻が、家族に隠された金銭の秘密と向き合い、自分の人生を取り戻していく物語。嫁姑|相続|親不孝|親子関係|金銭問題1.8万字5 750 -
完結第13話
母の保険金3,000万円、夫は「もう諦めろ」と言った
「1か月だけ、3,000万円を貸して」 亡き母の保険金が振り込まれた直後、夫の姉が突然頼みに来た。 夫も「家族を助けると思って」と私を説得した。 私は返済期限を定め、夫を連帯保証人にして公正証書を作った。 姉は笑顔で実印を押し、翌日、3,000万円を受け取った。 しかし1か月後、入金はなかった。 やがて電話は着信拒否され、3か月が過ぎた。 夫へ相談すると、苛立った声が返ってきた。 「もう諦めろ!」 そして次の瞬間、夫は口を滑らせた。 「あいつに、そんな金あるわけないだろ!」 私は何も言わず、弁護士宛てのメールを開いた。夫婦|相続|金銭問題1.9万字5 698 -
完結第11話
3か月寝たきりの娘を、婿に黙って連れ出した日
3か月寝たきりの娘・さやかを、婿の健二は「海外の専門医に相談している」と自宅で看病していた。感染対策を理由に、面会まで禁じられた母・恵子。最後に娘の顔を見てから10日。婿が出張に出た朝、閉ざされた寝室から異臭が漂う。恵子は119に通報し、娘を病院へ連れ出した。体重は34kg。最後に診察を受けた日さえ、母は答えられなかった。娘は「あそこには戻さないで」と訴える。治療を進める病院へ、今度は健二が妻を取り戻しに現れる。一方、娘が指先を伸ばしたベッドの隙間からは、2錠の薬が見つかる。献身的な夫は、何を隠していたのか。娘が口にできなかった言葉をたどり、母は3か月の「看病」の真実に迫っていく。親子関係|介護1.8万字5 1341