"時給951円と捨てられた妻の正体" 第10話
収千万円などという虚構は、会社のを横領して着した汚れた泡に過ぎず、その横領の穴を埋めてくれていたのは、自分がゴミ袋と共に放りした妻の財布だったのだ。
「か……葉……! 頼む、嘘だと言ってくれ……!」 透はを掻きむしり、私の靴にしがみつこうとした。
「俺が悪かった! 俺が馬鹿だった! おがそんな凄いだったなんてらなかったんだよ! ってたら……ってたら浮気なんか絶対にしなかった! 荷物を捨てるような真似だって絶対に――」
「っていればしなかった?」 私の声は、遮るようにロビーの気に染み渡った。
「相が力を持たない者なら、踏みにじっていいの? 百円で懸命に汗を流して働くたちを見し、自分が世したと錯覚して搾取していいの? ……あなたのその浅ましい本性こそが、すべての破滅の引きを引いたのよ」
「葉! 返せないんだよ! 千百万なんて、俺が雇いで働いたって返せるわけないだろ! 自己破産するしかないんだ!」
「自己破産?」 私はややかに角をげた。
「先から、その点についてもきちんとおにいてあるはずよ。よく読みなさい」
透が震えるで、の枚目に目を落とした。 そこには、赤線で調された法文の解説が添えられていた。
【破産法第百条第項各号、ならびに第百条第項第号(悪で加えた法為に基づく損害賠償請求権の非免責条項)】
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「業務横領、ならびに婚姻期の図な悪の遺棄による損害賠償債務はね、本の法律において【非免責債権】に指定されているのよ」 私の言葉が、刑宣告のように突き刺さる。
「つまり、あなたが裁判所に破産を申しててどれだけ免責を求めようと、この千百万円の借は、あなたがぬまで円も消えない。あなたが雇いのバイトで稼いだわずかな当からも、将来受け取るはずのからも、永に差し押さえられ続けるのよ」
「し……ぬまで……? 、借返済……?」 透の瞳から、完全にが消え失せた。
逃げなど、この国の法律のどこにも用されていなかった。 甘言を弄して女を騙し、会社のにをつけ、族を踏みにじった男に待っていたのは、己の肉体をすり減らしながら、かつて見した元妻へを払い続けなければならないという、逃れることのできない無獄だった。
「そんな……そんな殺な……! 親父! 親父に会わせてくれ! 親父なら……親父なら俺を見捨てないはずだ! 俺は園田の男なんだぞ!!」
透は狂ったようにちがり、叫んだ。 しかし、その――エントランスの自ドアがき、もうつの絶望が、たいと共にロビーへ吹き込んできた。
「おい! そこにいたぞ、園田ぁ!!」
エントランスの静寂を破り、ドスの利いた号が響き渡った。
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ドアを押しけて入ってきたのは、黒いレザージャケットを着た、ガタイのいいの男たちだった。首元には派なタトゥーが覗き、らかにカタギではない威圧を放っている。
「ひっ……!?」 透が鳴をげて退りした。
先につ髪の男が、透の胸ぐらを片で軽々と掴みげ、理の柱へと叩きつけた。
ドガンッ!
「がはっ……! な、何なんだよ、あんたら……!」 「何なんだよ、じゃねえよボケが! 彩ちゃんに毎つきまとって、『返せ、俺を養え』って脅迫話かけまくってんだってなあ!?」
男のには、画面の割れたスマートフォンが握られていた。 そこには、透がこの週のに、逃げた・彩へ向けて送信し続けていた、狂気じみた脅迫メッセージがぎっしりと表示されていた。
『俺のを返せ! バッグを売ってを作れ!』 『養育費を払え! 俺をアパートに入れろ!』
「彩は……彩はどこだ!? あいつが俺のを全部持っていったんだぞ!!」 胸ぐらを掴まれたまま喚く透の顔面に、男の烈な平打ちが炸裂した。
バチンッ!!
「ぐあああっ!」 透がに転がり、から鮮血を吐き散らした。
「誰のを持ってったって? あいつがテメエから貰ったもんはなあ、全部テメエが『プレゼントする』って言って渡した贈与だろうがよ! それを今さら奪い返そうとして、女のアパートの周りをウロつきやがって!」
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