"正月、娘に熱汁を浴びせた義兄へ110番" 第8話
『え……? あ、あなた……政治さん……?』
「神幸子さん。お伺いしますが、あなたの仰る『勘違い』とは、どの部分を指しているのですか?」 政治の調は、極めて丁寧で、それゆえに恐ろしいほどの威圧を孕んでいた。
「私の姪である結は、全治ヶの第度傷と診断されました。皮膚が爛れ、疱が破れれば涯にわたる瘢痕が残る能性を医師から指摘されています。そして、貴宅のリビングに設置されていた防犯カメラには、神幸夫被疑者が故に湯を浴びせかけた瞬が、秒単位で鮮に記録されていました」
『そ、それは……あの子もお酒が入っていて……!』
「酒は、刑法の免責事由にはなりません。むしろ犯を悪質化させる素です。……さらに、現に臨した警察官の報告によれば、夫である神健太氏は、犯の証拠隠滅を図るため、録画装置の源コードを切断しようと試みたそうですね?」
『ひっ……!?』 話の奥から、息を呑む音が聞こえた。健太が隣で青ざめているのがに取るように分かる。
「証拠隠滅の教唆、ならびに隠滅未遂。……によっては、健太氏に対しても刑法第百条に基づく捜査のが及ぶことになりますが、その自覚はおありですか?」
『そ、そんな……! 私たちは、族ので話しって解決しようと……!』
「族?」 政治の唇の端が、たく吊りがった。
「幼い子供が皮膚を焼かれて泣き叫んでいる横で、笑いながら酒をあおり、救護措置を妨害し、警察の介入を恐れて証拠隠滅を図る集団を、この国の法は『族』とは呼びません。
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……単なる共犯関係です」
政治は元の計を瞥した。
「美奈と結は、本をもって神との関係を完全に断ち切ります。今の連絡はすべて、美奈が選任する弁護士を通じてっていただきます。直接の話、、接触の試みは、ストーカー規制法および罪の該当事由として即座に対処しますので、そのおつもりで」
『ま、待ってください! 政治さん! 健太と美奈さんは夫婦なんですよ!? 婚だなんてそんな――』
「その資格を自ら捨てたのは、神健太氏本です。……それでは、失礼いたします」
ガチャリ。 政治は迷うことなく通話を終させ、幸子の話番号を即座に着信拒否に設定した。 続いて健太の番号も、親族同のLINEグループも、すべて括でブロックリストへと放り込んだ。
「……ふう」 政治はスマートフォンをテーブルに置き、温くなったほうじ茶を喉へ流し込んだ。
「美奈。これで壁は塞いだ。……あいつらはもう、おたちに直接指本触れることはできない」
「お兄ちゃん……ありがとう」 私の目から、今初めて、堵の涙が静かにこぼれ落ちた。
こたつので、結がすやすやと穏やかな寝息をてていた。 そのさな寝顔を見つめながら、私は確信していた。 嵐はまだっていない。だが、私はもうではない。 法と、証拠と、本物の族の絆を武器に、私はこの子を守るための「完全な戦い」
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へとを踏みそうとしていた。
けての朝。輪警察署の刑事課応接は、の乾いた作音だけがく響いていた。
「美奈さん、昨は変でしたね。結ちゃんの体調はいかがですか」 対応してくれたのは、活全課の女性捜査官と、犯係の警部補だった。元には、昨夜病院から発された『全治ヶ、肢・肩部第度傷』の診断原本が置かれている。
「痛み止めをんで、今朝は兄のでし眠れています。……これが、昨の詳細な記録です」 私は徹夜できげたノートを差しした。 元の来事だけではない。、結が歳のに幸夫から腕をく引っ張られて青あざが残った付と写真。、玩具を投げつけられた際の健太とのメッセージ履歴。そして、顔の至距で鳴りつけられた結が事を受け付けなくなった記録。
警部補はノートを枚枚めくり、唸るように息を吐いた。 「……継続な威圧と虐待傾向の証拠になります。単発の突発事故ではないという、検察への力な証材料です」
正式に被害届が受理され、告訴状に署名と拇印を押したそので、私は駅の法律事務所へと向かった。兄・政治の同期であり、親族・事件に精通したベテラン弁護士・(しらいし)が、正返で待っていてくれたのだ。
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