"正月、娘に熱汁を浴びせた義兄へ110番" 第9話
「美奈さん、政治から筋は聞いています。……酷い話だ」 弁護士は類をえながら、即座に配を作成した。 「本付で、神健太氏、ならびに神清氏、幸子氏、幸夫氏の全員に対し、受任通を内容証郵便で発送します。今、美奈さんと結ちゃんへの直接の連絡、接、親族を介した接触を切禁止する旨の警告です。違反したは、即座に裁判所へ接禁止命令を申してます」
さらに弁護士は、徹な法続きの爪を研いだ。 「健太氏に対しては、別居に伴う婚姻費用の分担請求、ならびに貞・悪の遺棄に準ずるな婚姻破綻事由として、慰謝料百万円と即婚調の申てをいます。幸夫氏に対しては、刑事事件の推移を見つつ、治療費・将来の傷痕修正術費用を含む百万円の損害賠償請求訴訟を提起します」
事務所をた午。の突き抜けるような青空の、私のスマートフォンがく震えた。 弁護士からの受任通が子送達された直、健太の会社用メールアドレスから、弁護士宛てに錯乱した文のメッセージが届いたという通だった。
『美奈に弁護士をてられたら、俺のはどうなるんだ! 会社にられたら昇が取り消される! 族の問題を法廷に持ち込むな!』
画面を見つめる私の瞳には、もう片の揺らぎもなかった。
広告
の痛みを踏み躙り続けた者たちに、法のが容赦なくり注ぐは、すでに始まっていた。
輪署の取調。スチール製の机を挟み、義兄・神幸夫は、酔いの抜けた浅黒い顔を歪めてパイプ子に座っていた。 昨夜からもできず、留置のえ切った板ので過ごした男のプライドは、すでに毛羽ち始めていた。
「ですから刑事さん! 何回言わせるんですか! が滑っただけなんですよ!」 幸夫は机を叩いて声を荒らげた。 「姪が目ので派にグラスを割りやがったから、俺はびっくりして、持ってたお椀を落としちまったんです! それをあいつが勝に警察呼んで、傷害だ何だって……! 親戚を陥れるための狂言ですよ!」
担当の警部補は、を挟まないややかな線を幸夫に注ぎ、元のノートパソコンの画面をゆっくりと回転させた。 「神幸夫さん。あなたの言う『が滑った』瞬を、客観に検証しましょう」
画面に再されたのは、リビングの井に設置されていた4K対応の防犯カメラ映像だった。 画像処理により、ノイズが除され、卓周辺の景がのに晒されている。
「あ……」 幸夫の喉が、ヒュッと引きつった。
「これを見なさい。コマ送りで再します」 警部補がスペースキーを押す。
結の元からグラスが滑り落ち、畳ので割れる――その直。
広告
幸夫のが、テーブルのに置かれていたい雑煮の椀を力く掴み直した。 指の第関節がくなるほどく握り込まれている。が滑ったの脱力ではない。
さらに次のコマ。 幸夫は半をぐっとのめりに倒し、肘を引き、逃げようとする結の半へ向けて、椀を平からやや向きに勢いよく押ししていた。 汁物が放物線を描いて結の肩へ着弾した瞬、幸夫の元が形に歪み、確に笑みを浮かべている顔が、精細なレンズに克に記録されていた。
「汁物を浴びせかけた、あなたはお椀をに落としたのではなく、結ちゃんの背へ向けて投げ捨てていますね」 警部補のペン先が、画面を鋭く叩いた。 「さらに、その。泣き叫ぶ子供を瞥もせず、ビール缶をけてみ、隣の母親と談笑している。……神さん、これがあなたの言う『驚いてが滑った事故』の姿ですか?」
「う……あ……」 幸夫の顔面から、ボロボロと脂汗が吹きした。 唇がに変し、両がガタガタと震え始める。
「科学捜査研究所による沫弾解析の結果もています。椀の傾斜角度、初速、散距。すべてが『図な投擲および散布』と完全に致しました。過失傷害の余はありません」
警部補は逮捕状の請求を机のに滑らせた。 「神幸夫。
言い逃れは終わりだ。子供を標にした悪質な傷害事件として、送検続きをめる」
広告
おすすめ作品
-
完結第15話
介護で表彰される嫁――私は認知症に仕立てられた
手首を骨折し、息子夫婦の家へ身を寄せた68歳の文江。嫁・沙耶香は、物忘れが進んだ姑を献身的に介護しているように見せ、日常を動画で配信していた。 だが文江は認知症ではなかった。砂糖と塩を入れ替え、スマートフォンを隠し、同じ質問を繰り返すよう指示する――すべては再生数と広告収入を得るための演出だった。しかも息子も、その事実を知りながら黙認していた。 沙耶香が「献身的な嫁」として表彰される当日、巨大スクリーンに流れたのは感動映像ではなく、撮影前に姑へ演技を命じる未編集動画だった。そして文江は車椅子を使わず、自分の足で壇上へ向かう。 家族に病気も財産も人生も利用された女性が、自らの声と尊厳、そして「撮られない権利」を取り戻していく逆転と再生の物語。因果応報|嫁姑|認知症2.2万字5 253 -
完結第16話
妊娠8か月の私に28人分のおせちを作らせた義母
妊娠8か月の優奈は、義母から「家族6人分」と聞かされていたおせち作りを引き受ける。だが台所に用意されていたのは、販売用の28人分。さらに義妹の店名が入った重箱には、優奈の名前が製造責任者として無断で使われていた。 体調を崩して病院へ向かった優奈は、録音や注文表を証拠として残す。予定より早く帰宅した夫・康平は、母から合鍵を取り上げ、親戚を帰らせるが、やがて妻の署名や免許証、退職金まで利用した500万円の融資計画が発覚する。 康平は家族へ怒るだけでなく、母の越境を長年黙認してきた自分の責任とも向き合う。一方の優奈も、誰かに救われるのを待たず、自分の名前、仕事、暮らしを自ら守り始める。 28人分のおせちから始まった騒動を通して、「家族のため」という言葉に奪われていた選択権を取り戻す夫婦の再生と、境界線の大切さを描いた物語。嫁姑|第二の人生|修羅場2.4万字5 1078 -
完結第15話
車椅子の姑を1年間介護したのに、遺産は1円もいらない嫁が家を出た日
教師の仕事を辞め、右半身に麻痺が残った姑・芳子を365日介護してきた田中綾。芳子の70歳の誕生日会で、36人の親族を前に「家も預金も長男へ。嫁には1円も渡さない」と宣言される。熱い汁で右手を火傷しても、夫が心配したのは200万円の着物だけだった。綾は介護引継書を置き、「遺産はいりません」と家を出る。ところが無償の嫁が消えた翌朝、家族の前には月43万8000円、年525万6000円の介護見積書が突きつけられた。3人の実子は誰が母を支えるのか。そして綾は、失った教師の人生を取り戻せるのか――。嫁姑|親子関係2.0万字5 2374 -
完結第15話
時給951円と捨てられた妻の正体
「時給951円の役立たずが、年収2000万円の俺に寄生するな」――夫は私の荷物をゴミ袋に詰め、玄関の外へ放り出した。 しかも愛人との写真を見せつけ、「離婚だ。俺がいなきゃ明日の飯にも困るだろ」と笑った。 私は渡された離婚届を受け取り、「ありがとう。今すぐ出ていくね」とだけ答えた。 夫は最後まで、私が負け惜しみを言っていると思っていた。 翌朝、私はそのまま離婚届を提出し、一本の電話をかけた。 その数時間後、夫は会社の懲罰委員会へ呼び出され、自分を守っていた“ある人物”の正体を初めて知らされる。 さらに愛人は消え、マンションまで退去を求められ、昨日まで自慢していた年収2000万円も一日で消えた。 それから1か月後、300件を超える着信の末、夫は私の会社まで押しかけて大理石の床に額をつけた。 「頼む、もう一度俺を養ってくれ」――私がその男の前に最後の書類を落とした瞬間、本当の反撃が完成した。(続)怒り|夫婦|退職金|金銭問題2.2万字5 134 -
完結第12話
入学式の日、愛人を選んだ夫への「お祝い」
娘・美香の入学式当日、夫・健吾は姿を見せなかった。電話をかけると、「愛人と離婚届を出しに来ている」と笑いながら告げ、妻子を捨てて新生活を始めると宣言する。 泣きそうになるカナからスマートフォンを受け取った義母・富美子は、取り乱すどころか静かに微笑んだ。「本当におめでたい日ね。盛大にお祝いしなくちゃ」。その夜、帰宅した健吾を待っていたのは、白いリボンが掛けられた巨大なケーキだった。 しかしケーキの中には、健吾が大切にしていた高級時計や愛人との品々が隠されていた。自らそれらを切り刻んだ健吾へ、富美子は不倫と会社経費の私的流用を示す証拠を突きつけ、カナは離婚条件を記した書類を差し出す。 娘の晴れの日に家族を裏切った男がすべてを失う一方、血のつながらない嫁と孫を守り抜いた義母。三世代の女性が本当の家族として、新しい幸福を築いていく痛快な逆転物語。夫婦|親子関係1.8万字5 189 -
完結第12話
夜勤明け、鍵を替えられた私の静かな反撃
30時間の夜勤を終えて帰宅した看護師・南を待っていたのは、義母によって交換された玄関の鍵だった。「反省したら土下座しに来なさい」という連絡に、南は「そうですか。では、さようなら」とだけ返信する。 だが、義母と無職の夫は知らなかった。その高級マンションは、南の勤務先が契約する借り上げ社宅であり、家賃も生活費もすべて南の収入で支えられていたのだ。 南は騒がず、締め出しを自白したSNS投稿を保存。社宅の退去手続き、電気・水道・ガスの解約、弁護士への離婚依頼を淡々と進める。月曜日の午後5時、部屋の明かりが消え、管理会社と警察が玄関に現れた。 自分を家政婦のように扱った家族との関係を断ち切り、誇りある仕事と人生を取り戻す女性の、静かで痛快な逆転物語。因果応報|人生逆転|嫁姑|親子関係1.9万字5 3316 -
完結第11話
元警察官の父が娘に渡した一枚の封筒
久しぶりに会った娘・香織の頬に痣を見つけた元警察官の父・誠一。夫の話になると目をそらす娘に、父は勤務先の住所だけを尋ね、それ以上追及しなかった。 一か月後、再び夫に突き飛ばされた香織へ、父は一通の封筒を渡す。中にあったのは夫の秘密ではなく、香織が「大したことではない」と消してきた異変を、日付順に記した一枚の紙だった。 繰り返される暴力と謝罪の連鎖を認めた香織は、初めて「今日は帰らない」と自分で決断する。父は夫を裁くことも、離婚を命じることもせず、娘が自ら選べる安全な場所だけを守り続けた。 これは、父の静かな愛に支えられた女性が、自分の恐怖を否定するのをやめ、失っていた人生と平穏を取り戻していく再生の物語。夫婦|真実|真相|親子関係1.6万字5 537