"帰ってきた姉を母は拒んだ" 第6話
全部ではない。
姉が京で普通の女仕事ではない所にいたこと。
父が計のためにを送らせていたこと。
母がそれを途からっていたこと。
信夫は最初、何も言わなかった。
それから、
「俺の入院代も姉ちゃんがしたのか」
とだけ聞いた。
子が頷くと、信夫はへていった。
薪割りので、しばらくで座っていた。
玄関で、がをげた。
く。
額が膝につきそうなほどく。
「ごめんなさい」
文はかなかった。
「私に謝ったら終わる?」
の肩が震えた。
「終わらない」
「私もそうう」
文の声はたくなかった。
それが余計に痛かった。
「ずっと迎えにかなかったことを悔してた」
「8?」
「毎」
「だったら、昨何でまた追い返したの」
が顔をげた。
「怖かった」
「何が?」
「子まで失うのが」
は正直に話した。
子の縁談は、このでは珍しいほど条件が良い。
田は商売をしている。
の噂を気にする。
女が赤線から戻ったとられれば、破談になるかもしれない。
なくとも、田の親はいい顔をしない。
文をへ入れず、子の祝言が終わるまでくにいてもらえば、子だけは普通のへける。
は、そう考えた。
文はい、母を見ていた。
やがて言った。
「お母ちゃん。8も同じことしたんだね」
が固まった。
「誰かをにせば、残ったは守れるって」
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母の膝が崩れた。
「今度は子を守るために、また私をに置いた」
は泣いた。
「ごめんなさい」
「だから、それで終わらないって言ってるでしょう」
文はへがった。
けれど母を抱かなかった。
を度の抱擁で消すことはしなかった。
居へ入ると、信夫が戻ってきた。
姉のへ座った。
「俺、姉ちゃんのこと覚えてない」
文がし笑った。
「そうだろうね」
「でも、俺の病院代してくれたんだって」
「昔の話だよ」
「ありがとう」
文はその言葉に返事をしなかった。
信夫は続けた。
「それと、ごめん」
「信夫が謝ることじゃない」
「でも、俺、何もらないで暮らしてた」
文はし考えてから答えた。
「らない子どもが責任持つ必ないよ」
子はその言葉を聞きながら、自分も同じように許されているのだろうかとった。
けれど文は子を見て、
「子もね」
と言った。
子は泣きそうになった。
その夜。
文は8ぶりにで夕飯をべた。
麦飯。
根の噌汁。
菜ののおひたし。
特別な料理はなかった。
は何度も何か言いかけては黙った。
文も母へ優しくはしなかった。
けれど帰らなかった。
それだけで、は何度も涙を拭った。
翌朝、文は役へき、必な類を取った。
そので横浜へ向かうことにした。
「もうくの?」
子が聞いた。
「仕事の始まるが決まってるから」
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「また帰ってくる?」
文は答えなかった。
代わりに、
「子の祝言が終わったらね」
と言った。
子は胸が痛んだ。
姉はまだ、自分がいない方が妹のためだとっている。
その考えを植え付けたのは父であり、母であり、族だった。
駅まで送ろうとした、の郵便局の妻とすれ違った。
女は文を度見した。
そして子へ聞いた。
「あら。その方、どなた?」
子は瞬迷った。
文が僅かに目を伏せた。
子は答えた。
「姉です」
女の顔が変わった。
文は何も言わなかった。
けれど子は、そのが終わるにへ話が広がることを分かっていた。
そして。
田浩の父親が、の座敷へやってきた。
浩の父・田宗郎は、濃紺の羽織を着て現れた。普段から町の商会で挨拶すると同じ、を表へさない顔だった。は何度もをげ、子は座敷の端で正座した。
文はすでに横浜へ向かっている。
宗郎はお茶に度もをつけなかった。
「事は、おおよそ伺いました」
子の指が膝ので固くなった。
「誰からでしょうか」
が聞いた。
「誰からというほどでもありません。商売をしていますと、いろいろに入るものです」
さなだ。
昨、郵便局の妻へ姉だと言った。
そこからどこへ回ったか、考えるもなかった。
宗郎は続けた。
「まず申しげておきますが、子さん本に非があるとはっていません」
瞬、の顔に堵が浮かんだ。
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