みかん小説
本棚

"「親呼んでみろ」新人の父を見た部長" 第9話

私は、汚れきった元司の顔を、ただややかに見据えた。

「佐藤部。……いえ、佐藤容疑者。あなたが本当に座して謝るべき相は、私ではありません」

私の線は、私の隣でち尽くす由美先輩へと向けられていた。 由美先輩は、目から涙を溢れさせながら、しかしその背筋を凛と伸ばして、錠をかけられた佐藤をまっすぐに見つめ返していた。

「……部」 由美先輩の震える、けれど芯の通った声が、静まり返った個に響いた。

「私は、あなたに押し付けられた理尽な仕事の数々を、度たりとも抜きしたことはありません。会社の板を背負い、お客様のために誠尽くしてきました。……でも、あなたは私の誇りも、私の族の活も、すべて自分の代わりのゴミとして扱った」

由美先輩は、テーブルのにあった、あの偽造報告に取った。 そして、佐藤の目ので、迷うことなく真っつに引きちぎった。

ビリッ……ビリビリッ!!

「私は、あなたを絶対に許しません。法廷でもどこでも、あなたが私にしてきたパワハラと正のすべてを、証拠を持って証言します。……度と、私たちのに現れないでください」

のように散らばる破片。 佐藤は絶望のあまり言葉を失い、喉から「ひいっ」とけない鳴を漏らした。

こう」 刑事が容赦なく佐藤の腕を引き、個へと引きずりしていく。

広告

居酒の通を通る際、のブースの客たちが斉にを乗りし、錠をかけられた夫婦の姿をスマートフォンのカメラで撮していた。

『うわ、何だあいつ?』 『横領だってよ、みっともねえな』 『あんな派な格好して、科者かよw』

好奇と嘲笑の線に晒されながら、佐藤の背は、見るもなくさく丸まっていった。 世体と虚栄だけをきがいにしてきた男が、最も恐れていた「公衆の面での完全な失脚」。 彼が自ら招いた因果応報の劇薬は、寸分の狂いもなくその全を蝕み尽くしたのだ。

に残された田先輩や林先輩は、青ざめた顔で畳に正座し、父に向かって々と額を擦り付けた。 「かい……神崎会! 本当に申し訳ありませんでした! 僕たち、部正に々気づきながら、保のために見て見ぬ振りをして……!」

父は静かにを挙げ、彼らを制した。 「顔をげなさい。……恐怖で支配された組織において、者が沈黙を選ばざるを得なかったは理解できる。君たちを即座に断罪するつもりはない」

父のが、厳しくを貫く。 「だが、これからは違う。が神崎グループにおいて、正を見て見ぬ振りをする怠は、正そのものと同罪とみなす。……から、組織を根本から作り直す。君たちも、己の仕事に対する誇りを取り戻す覚悟があるなら、現に残りなさい」

広告

「は、はい……! ありがとうございます……!」 の目から、悔悟の涙がこぼれ落ちた。

父は私に向き直り、優しく微笑んだ。 「健。よくやったな。……おの集めた証拠がなければ、この膿をこれほど完璧に切除することはできなかった」

「ありがとうございます、父さん。……でも、私の仕事はまだ終わっていません」 私は由美先輩を見つめ、力く頷いた。

嵐の夜はった。 しかし、破壊された組織を再し、傷つけられた々の未来を取り戻すための「本物の戦い」は、週けのから幕をけようとしていた。

あの嵐のようなの夜からけた、の午。 親会社である神崎ホールディングス本社の最階、全面防音仕様の会議には、異様な緊張が張り詰めていた。

子会社・マテリアルの代表取締役社をはじめとする全役員、そして法務統括部、さらにグループ最決定者である父・神崎英治会が円卓を囲んでいた。 円卓の座には、しい濃紺のスーツにを包んだ私の姿があった。

「……以が、神崎健君の単独潜入調査、ならびに昨夜の現犯逮捕によって押収された全物証の精査結果です」 法務部がプロジェクターのスイッチを切り、元の分いファイルをバチンと閉じた。

スクリーンに映しされていたのは、佐藤秀夫がにわたり妻のダミー会社『グローバルパートナーズ』へ送していた詳細な資フローだった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: