"薬を忘れて戻ると、「歩けない」夫が立っていた" 第11話
翌の曜、都内はの音を告げるたい枯らしが吹き荒れていた。
佐織は梶原弁護士の事務員とともに、管轄の庭裁判所へ向かい、婚姻費用分担請求および接禁止に関する調申を提した。そので警察署へ赴き、健太から実にかけられた脅迫話の録音データを提し、実周辺のパトロール化を受理させた。
淡々と、を挟まずに続きをめる佐織の姿に、同した事務員が「本当に肝が据わっていらっしゃいますね」と嘆の声を漏らしたほどだった。
しかし、佐織の胸の奥は、燃えるようなりではなく、い氷の底のような静寂に包まれていた。
かつてし、病気になればをにして支えたいと願った伴侶が、これほどまでに脆く、浅ましく、醜悪なであったという事実。その絶望を完全に受け入れた、は泣き叫ぶことすら忘れ、ただのための徹な計算へと変わるのだ。
午2過ぎ、佐織の携帯話に、再び見慣れない固定話の番号から着信が入った。
それは、健太の勤務先であるトーワ・ソリューションの法務部からだった。
『佐織様でしょうか。法務部調査の成瀬です』
先週、喫茶で名刺を交わしたあの調査員の声だった。
「お世話になっております、成瀬様。夫の件で何か展がございましたか」
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『はい。非常にな、そして決定なきがございました。……今朝10頃、健太氏が神田のファイナンシャルが入る雑居ビルに現れ、警察の捜査員によって任同を求められました』
佐織は駅の歩でを止めた。たいがコートの裾を激しく打ち据える。
「任同……逮捕されたのですか?」
『現点では任での事聴取ですが、事実の柄確保です。主債務者として逃していた元社員の男が昨夜、方潜伏先で逮捕されましてね。その供述から、健太氏が持ちしデータの受け渡し役として、休職期に複数回にわたり仲介数料を受け取っていたかぬ証拠が見つかりました』
成瀬の報告は、容赦なく現実の量を突きつけてきた。
『健太氏は当初、「腰の激痛で寝たきりだったのだから、そんな密会にけるはずがない」と頑なに否認していたそうです。しかし、奥様からご提供いただいた写真データ、および当社の調査チームが撮した神田駅周辺の防犯カメラの歩映像を突きつけられた瞬、完全に崩壊しました。自分のでスタスタと歩いてビルに入っていく鮮な映像が、彼自の言い逃れをすべて叩き潰したのです』
皮肉な結末だった。
もし健太が、佐織のに乗って子のまま病院と実を往復するだけの活を本当に送っていたなら、警察も件に慎にならざるを得なかったかもしれない。
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しかし彼は、妻を欺いて自由になったを使い、自らので悪事の現へと通い詰めていた。自らがついた「歩けない」という嘘の自由が、そのまま自らの首を絞める決定な縄となったのだ。
『会社としては、本付で健太氏の懲戒解雇処分を決定いたしました。また、詐欺罪および正競争防止法違反の共犯として、警察に正式な告訴状を受理させました。……奥様、ご協力により謝申しげます。奥様の迅速かつ正確な証言がなければ、当社の損害回復は極めて困難なものとなっておりました』
「いえ……私は、自分の活を守るために当たりのことをしただけです」
通話を終えた佐織は、駅の広のベンチにゆっくりと腰をろした。
空を見げると、ちぎれたのが猛スピードでへと流れていく。
終わったのだ。
健太が築きげた、嘘と甘えと虚飾にまみれたは、跡形もなく崩壊した。
その、スマートフォンの画面が激しく滅し、義母の数枝からの着信が涛のように押し寄せてきた。着信履歴はすでに件を超えている。
佐織はややかな指先で通話ボタンをスワイプした。
『あ、あああ……佐織さんッ! 佐織さんッ!!』
話から聞こえてきたのは、言葉にならない数枝の絶叫と嗚咽だった。
『健太が……健太が警察に連れてかれちゃったのよ! 会社のも来て、クビだって……損害賠償で何千万円も払えって……! どうしてこんなことになっちゃったの!? 助けて、佐織さん! あなたしかいないのよ! うちのもも、全部取られちゃうわ!!』
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