"毎月7000円を隠していた夫の20年の秘密" 第10話
だが……はいつも、受取拒絶で戻ってきた」
「受取拒絶……」
「ええ。あいつは、俺からのをくことすら自分に許さなかった。を見れば、自分がを受け取ってもらえなくなる。送を断られたら、あいつは自分の罪を償う術を完全に失ってしまうからだ。あいつは俺と向きっていたんじゃない。自分ののにある『昭の罪』とだけ、格闘し続けていたんだ」
清司の瞳に、い嘆のが差した。
「俺はね、奥さん。昭雄が精で真面目に働き、や仲から信頼されているという噂を、京の昔の職仲から聞くたびに、本当に嬉しかった。あいつの技術は本物だ。俺の脚を奪った事故の夜だって、あいつの旋盤の腕は俺よりずっとだった。……だが、あいつは自分を職としても、父親としても、夫としても、決して認めてやろうとしなかった」
文子は胸元を掻きむしりたくなった。
夫の頑なな沈黙。
子どもが学の相談を持ちかけても、「おが決めろ、俺はのことしか分からん」と背を向けた淡さ。文子がしい着物を仕てようと勧めても、「俺には作業着があれば分だ」と頑なに拒んだあの頑固さ。
すべては、自分が並みのびを享受することへの、病なまでの拒絶反応だったのだ。
「奥さん、この通帳に貯まったは、利息も含めて百万円くあります」
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清司は通帳を文子の元へと押し戻した。
「これを持って帰ってください。これは、元々あなたの庭のおです。あなたが爪にをともして、族のために守ってきた暮らしの裏で、あいつが勝に削り取ってきたおだ。受け取ってください」
「いいえ……!」
文子は激しく首を振った。涙が止まらず、畳のに粒の雫となって吸い込まれていく。
「受け取れません……そんなこと、できるはずがありません! これは……これは、あのの命の代だったんです。あのが、、自分の命を削ってあなたに差しし続けてきた、血の塊じゃないですか……!」
文子は両を畳につき、清司と子に向かってくをげた。
「教えてくださって……本当に、ありがとうございました。私、夫のことが何も分かっていませんでした。緒に暮らしてきて、あのがどんな暗ので息をしていたのか、何ひとつろうともしなかった……! 疑って、浮気じゃないかと罵って……私、妻失格です……」
「奥さん、顔をげてください」
子が文子の肩を優しく抱き起こした。老婦の節くれだった温かい掌が、文子の震える背をさすった。
「あなたは何も悪くない。悪いのは、全部あの昭のの夜よ。あのがね、、昭雄さんののにり積もり続けていただけなの。……奥さん、あの子を、昭雄さんを、あののから連れ戻してやっておくれ。
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あの子のを温めてやれるのは、世界であなたしかいないんだから」
の旧を、途の学たちのるい笑い声が通り過ぎていった。
井川の堤防の向こうに、夕が沈みかけていた。茜に染まる空を見げながら、文子は胸の奥に、かつてないほどく、揺るぎない覚悟が灯るのをじていた。
駅のホームに、りの準急の接を告げる警鐘が鳴り響いた。
改札まで見送りに来てくれた清司は、松葉杖に寄りかかりながら、文子に枚のい封筒を渡した。表には『佐々昭雄殿』とだけ、清司の角ばった跡でかれていた。
「奥さん。あいつに、これを渡してください。今度こそ、あいつ自ので封を切らせてください」
「……分かりました。必ず、夫に渡します」
「それと、もうつだけ」清司は悪戯っぽく笑った。「来の、もしあいつからまた千円が届いたら、俺は警察に突き返しますよ。もう受け取りの判は絶対に押さないと、そう伝えてやってください」
「ふふ……はい。しっかりと申し伝えます」
文子はく礼し、客のステップをがった。
ドアが閉まり、列がゆっくりときす。ホームの端で、清司が松葉杖をく掲げてを振っていた。隣で子が、い割烹着の袖で目元を拭いながら、何度も何度もをげている。
の姿が茶畑の緑の彼方に消えるまで、文子は窓から顔をさなかった。
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